なぜアルファベットには大文字と小文字があるのか?

どっちかだけで良くない?

» 2019年04月10日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 英語の表記に使われる文字といえば? もちろんアルファベット。英語のアルファベットには大文字と小文字の2種類がある、というのも誰でも知っていますよね。



 英語で文章を書くとき、私たちは「文頭は大文字で始める」「固有名詞は大文字」というように、無意識/意識的に2つの文字を使い分けています。

 そこで浮かんでくる疑問が、「なぜ2通りの表記方法が生まれたのか」。どちらか片方だけでも意味は通じるはずですし、倍の量の字を覚えるのは面倒です。

 大文字と小文字、最初に登場したのはどちらなのでしょうか? あるいは同時期に発生したものなのか……?


そもそも、アルファベットって?

 本題に入る前に、そもそも「アルファベット」とは何ぞや? というところを軽く説明しておきます。

 大学でフランス語やドイツ語を習った方ならご存じかと思いますが、アルファベットを使う言語は英語のほかにも数多く存在します。ヨーロッパのメジャーな諸言語は言わずもがな。ロシア語やブルガリア語の表記に用いるキリル文字も、33のアルファベットから構成されています。意外なところでは、ベトナム語の表記法であるクオック・グーもアルファベットを利用したものです。

 そもそも「アルファベット」という名称はα(アルファ)とβ(ベータ)、すなわちギリシャ語の最初の2文字に由来するものです。では、アルファベットはギリシャで生まれたものなのか? というとそういうわけでもなく、フェニキア文字が起源だとされています。

※フェニキア人は紀元前1500年頃から現在のシリア周辺で活動した民族

 ギリシャ人がフェニキア文字を借用し、それがローマをはじめ各地に伝わったことで今日のアルファベットが生まれた、という経緯があったのです。


先に大文字、その後に小文字が生まれた

 最初に答えを言うと、先に生まれたのは大文字。古代ローマの碑文を見れば分かるように、当初アルファベットには大文字しかありませんでした。

 小文字が登場するのは8世紀後半のこと。カール大帝(シャルルマーニュ)統治下のカロリング朝が西ヨーロッパ全土をほぼ支配し、カロリング=ルネサンスと呼ばれる文芸復興の時代が現出されていました。

 文芸運動が盛り上がるということは、本が多く出回ることを意味します。本を作るには、当然書くものが要ります。なら紙をたくさん刷れば解決では? と思ってしまいますが、それは現代人の感覚。当時のヨーロッパには、まだ製紙法が伝えられていません

※751年のタラス河畔の戦いを機に中国からイスラム世界に伝わったが、ヨーロッパで普及するのは12世紀以降。

 当時紙の代わりに利用されていたのが、動物の皮をなめした羊皮紙でした。羊皮紙は高価であり、節約のために文字を詰めて書く必要が出てきました。そこで、文字を縮めて書くために考案されたのが小文字というわけです。

 文芸の担い手の中核は、聖書や古典を書き写す修道僧たち。一口に「小文字」といっても、その様式は修道院ごとにまちまちであり、字体の統一が急務になりました。

 活躍したのはイギリス生まれの神学者・アルクイン。カール大帝に招かれた彼は小文字の統一事業に尽力し、「カロリング小字体」と呼ばれる字体を確立しました。これが基礎となり、現在知られているアルファベットの小文字表記へと発展していくことになります。


アルクイン(画像中央の人物)

おわりに

 簡略化されて新たな文字が生まれたのは、何もアルファベットに限ったことではありません。ひらがなやカタカナも、元はといえば中国から伝わった漢字をくずして生まれたものです。

 文字が時代に合わせて使いやすいように変容していくのも、ある意味必然なのかもしれませんね。数百年後の日本人は今と全く違う文字を使っていて、この文章を読んでも何と書いてあるのかさっぱり分からない……十分、あり得そうな話だと思いませんか?

制作協力

QuizKnock


参考文献

若林俊輔(2018)『英語の素朴な疑問に答える36章』研究社

世界史の窓「カロリング小字体」


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/27/news009.jpg しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  2. /nl/articles/2404/27/news020.jpg パパに笑顔を見せる4カ月の赤ちゃん、ママの顔を見ると…… あるあるな反応に「なんで?!」「ママをすごく信頼してる証拠」とさまざまな声集まる
  3. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  4. /nl/articles/2404/27/news003.jpg 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/27/news008.jpg 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  7. /nl/articles/2404/27/news010.jpg 巨大ウサギのデカさを伝えるため、2Lペットボトルを横に置いてみたら…… 衝撃の比較結果に「えっ、500mlじゃないんですか」「マジで大きい」
  8. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  9. /nl/articles/2404/26/news187.jpg 実写「シティーハンター」、最後まで見るとあるはずの仕様がない配慮「わかってる」「粋なはからい」「いい判断」
  10. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」