レビュー
» 2019年05月13日 10時51分 公開

賛否両論「ラジエーションハウス」死亡時画像診断Ai回 「なぜ犯人探しの場に幼い弟を同席させたのか」議論巻き起こる

「一度でいいから“お父さん”と呼んでもらいたかった」悔やむ父が見た「お父さん」の着信表示。

[寺西ジャジューカ, イラスト:まつもとりえこ,ねとらぼ]

 「ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜」(フジテレビ系)の第5話が5月6日に放送された。デンスブレストを啓発した3話に続き、今回のエピソードには「Ai」を周知させる意義があったと思う。


ラジエーションハウス サスペンスドラマ要素も加わって盛り上がって来た! イラスト/まつもとりえこ

第5話あらすじ、着信履歴に「お父さん」の表示が

 広瀬裕乃(広瀬アリス)は、威能圭(丸山智己)が焼死体画像を見ていたことに驚く。実は威能は、CTやMRIを使って遺体の死因を究明する死亡時画像診断「Ai」のスペシャリストだった。

 そんな折、公園で倒れているところを発見され、その後、死亡が確認された少年・藤本直樹(南出凌嘉)のAi依頼が届く。第一発見者は直樹とキャッチボールするために公園に来た弟の雄太(斎藤汰鷹)。救急通報をしたのは、藤本家の近所に住む少年・山村肇(小林喜日)だった。

 医師の辻村駿太郎(鈴木伸之)は、心臓付近に擦過傷が見られたことから心臓震盪の可能性に言及した。だが、直樹の父母、勝彦(三浦誠己)と歩美(森脇英理子)はかたくなにAiを拒否。勝彦と歩美は連れ子同士の再婚で、直樹は歩美の子だった。親による児童虐待が行われていた場合、解剖を承諾しないケースが多く「勝彦が直樹を虐待したのでは?」と疑いの空気が漂う。しかし、歩美は直樹のAiを承諾。結果、直樹の死因は肝臓破裂による出血性ショックだと判明する。

 五十嵐唯織(窪田正孝)は会議室に藤本一家と山村を集め、格闘技経験者が直樹の肝臓に致命傷を与えた可能性があると告げた。右側の肝臓を損傷したのは左手で殴ったからではないか、というのが彼の読みだ。この中で左利きの格闘技経験者は山村のみ。酒を飲んでは暴力を振るう父親とうまくいっていなかった山村は直樹が同じような境遇にいると思い、シンパシーを抱いていた。しかし、直樹は勝彦と向き合うようになり、裏切られた気持ちになった山村は直樹を殴り、死なせてしまった。

 「一度でいいから“お父さん”と呼んでもらいたかった」とつぶやく勝彦。唯織は勝彦に直樹のスマホの着信履歴を見せた。そこには「お父さん」の表示があった。


ラジエーションハウス 恋愛模様より「医療の現実、そこと医師たちはどう向き合う?」そんな真摯なドラマに見えてきた イラスト/まつもとりえこ

原作が今回のエピソードを描いたのは「アンナチュラル」よりも前

 今回の放送終了後、「いつから医療ドラマからサスペンスドラマになったんだ?」「放射線技師の枠を超え過ぎ」「アンナチュラルっぽい」という視聴者の声がネット上で飛び交った。しかし、原作での唯織はドラマ以上の探偵っぷりを見せていたので、かなりマイルドにまとめたなというのが筆者の印象である。ちなみに、原作が今回のエピソードを描いたのは「アンナチュラル」(TBS系)が放送されるよりも前のタイミングだ。

 ただ、ドラマ版にも気になるところはあった。第5話には「絶世の美少年が死亡 犯人は誰!?」なるサブタイトルが付けられていたのだ。今回、ストーリーの流れに直樹の美少年設定は全く出て来ておらず、このサブタイは完全にノイズでしかない。なぜ、このようなことをしたのだろう? 視聴者からの信頼を損ねかねない悪手だったと思う。

犯人探しの場に弟を同席させた理由

 正直、粗はあった。例えば、唯織が投げたボールを山村がとっさに左手でキャッチした場面。このときの反応で唯織は山村を左利きと推測したが、ネットでは「ボールを左手で捕ったら右利きなのでは?」と多くの人が指摘している。確かにそうだ。また、“左利きの格闘技経験者”という材料のみで山村が犯人と言い切る唯織に「違っていたらどうする」というツッコミも入っていた。もっともだと思う。

 一方で、遺族の心情に寄り添う唯織の優しさを窺わせる描写もあった。藤本一家と山村を1つの部屋に集め、「犯人は山村」と唯織が追い詰めるシーン。このくだりについて、ネットでは「弟の前でこんなことをするな」「幼い子どものトラウマになる」といった声が散見された。果たしてそうだろうか? 兄の死の原因を作ったのは自分と思い込む弟の誤解を解くため、あえて唯織は雄太を同席させたのではないか。その捉え方のほうを筆者は取りたい。


ラジエーションハウス たしかに弟、かわいそうではあった……(イラストまつもとはそう思った)。どっちが正しいとかじゃない、議論の生まれる意義 イラスト/まつもとりえこ

Aiは死因と共に加害者の不幸な境遇を明らかにしていた

 3話のデンスブレストに続き、5話にはAiを周知させる意義があったと思う。Aiは死因を特定するための有効な手段である。

 直樹が自分と同じ境遇だと思っていた山村。しかし、直樹は義父と向き合おうとした。置いていかれそうな寂しさから、思わず山村は手を出してしまった。あまりにも動機が浅はかである。山村はいつも父親から暴行されていた。だから、深く考えず自分も直樹を殴ってしまった。格闘技経験者が無防備の人間に手をあげるとどうなるか想像できず、力の加減ができないところが幼い。これら全て、「彼が父親に虐待されていなければ……」という後悔に行き着いてしまうのだ。警察に連行される際、山村は一人ぼっちだった。そばに家族は誰もいない。この姿から、不幸な彼の境遇が見えてくる。

 直樹は勝彦とキャッチボールしたがっていた。「直樹は俺のことなんて見向きもしなかった」と勝彦はうなだれた。しかし、勝彦からの着信表示には「お父さん」の文字があった。照れる直樹が頑なに隠していた日々を知ることで、親子になろうとする息子の気持ちが見えてきた。

 Aiは直樹の死因だけでなく、山村の不幸な境遇と、家族になるはずだった山村家の未来を可視化した。Aiによって知り得た真実には残酷さが伴っていた。しかし、真実を知らぬままでいたら、藤本一家に救いは訪れなかった。真実を知る意味と切なさを伝える5話だったと思う。

 ネットを見ると、唯織のあまりの探偵っぷりが目に付く今回には賛否両論あるようだ。しかし、医師が見落とした事実を唯織が見つけ、むやみに医師vs技師の溝を深めるいつもの流れからようやく外れた今回の新機軸のほうを私は支持したい。

1話見どころ

2話見どころ

3話見どころ

4話見どころ

寺西ジャジューカ

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まつもとりえこ

イラストレーター&ライター。結婚式スタッフや結婚雑誌編集の経歴あり。

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