五月病は恋の病、きみが寂しさを埋める千の方法、目を閉じてもどこにも逃げ場所なんてないんだって気づく痛みを感じる光だけが君を救う光になる

私を見てほしい。

» 2019年05月25日 19時00分 公開
[ふせでぃ, 鏡征爾ねとらぼ]
ふせでぃ 鏡征爾 痛みを感じる光だけが、君を救う光になる (illustration by ふせでぃ

 「痛みを感じる光だけが君を救う光になる」

 イラストレーター・ふせでぃと小説家・鏡征爾による現代を生きる女の子を描くイラスト小説。ふせでぃが描く“現代の等身大の女の子”と鏡征爾の少女的な感性かつ繊細な文体が誰かの心に寄り添いますように。




 しなければならないことが多すぎて苦しい。

 気にしなければならないことが多すぎて息苦しい。

 それでも私をみてほしい。

 この世界は承認欲求と息苦しさの爆裂的な幻だ。

 Twitter、Instagram、YouTube。

 みんなが気にするのは閲覧数。フォロワー数。

 あらゆるものが数値化される。
 数値がのびないものはばかにされる。

 それでも、どれだけいいねの数が増えても心は増えない。

 それどころか、数が増えれば増えるほど目減りしていく。

 私たちは幻にとらわれた消耗品だ。

 (もっと。もっと。もっと。もっと。のびろ)

 そうやって、数が増えることに苦心しているうちに、
 自分が本当は何をやりたかったのかわからなくなる。

 いや、本当にやりたいことが何かさえわからないのだ。

 本当にやりたいことなんて最初からないのだ。

 私はからっぽな人間だ。大人たちは言う。

 「やりたいことをみつけなさい」

 そうやって、やりたい夢が大学に行けばあるかのように誘導する。
 そうやって、大学にいくために塾や予備校で高額商品を勧誘する。

 「一流大学にいけばやりたいことが叶いますよ」

 やりたいことをやっているようにみえない大人たちがそう呟く。

 夢を謳って、金をとる。

「そのままじゃヤバいですよ」

 不安をあおって、煽動する。

 そして簡単に、私たちはだまされる。入塾する。入学する。
 そして後になって、後悔する。

 五月病は、そんな葛藤の生みだす現象だ。

  @itakimi_shoujyojigoku

  私たちは、年長世代の生み出す、奴隷じみた存在だ。

  0:33 - 2019年5月20日

  4件のいいね


 なんてことを、ツイートする。

  @itakimi_shoujyojigoku

  ところで奴隷は英語でslaveというらしい。
  私たちは、人類最初の、自由を謳われたホモ・スレイヴだ。

  0:34 - 2019年5月20日

  6件のいいね


 そんなコメント付きの自撮り画像を、
 奴隷じみた首輪のチョーカーをつけて、
 制服を着て、煌びやかな洋服を着て(1980円)、
 Instagramに投稿する。

 幻に、虚しさをフルベットする。

  @itakimi_shoujyojigoku

  私たちは無力で無意味で無価値で、幻にとらわれた存在だ。

  0:38 - 2019年5月20日

  2件のいいね


 SNSは幻だ。

 触れられない。近くにいない。
 いつでも。どこでも。会いにいけない。

 もちろん幻にも利点がある。

 あらゆるものが数値化されるかわりに、
 目にみえない誰かとつながる。

 利害もなければ被害もない。
 実益もなければ損失もない。

 からっぽのいれものだ。
 徹底的に周囲の視線にがんじがらめにされたいれものだ。

 監視された牢獄のような世界だ。
 私はそんな牢獄のような水族館で泳ぐお魚だ。

 そうなのだ。

 私はからっぽで最低で最悪で牢獄につながれた醜いアヒルで、
 未来に希望さえもてない後ろ向きな人間で、
 何一つ、誰かに誇れるものがなかった。
 やりたいことも、なかった。

 140文字のツイート。
 1000ピクセル四方のインスタ画像。

 その画面ごしの幻だけが、世界のすべてだった。

ふせでぃ 鏡征爾 痛みを感じる光だけが、君を救う光になる

 それでも私はその幻の世界で、

 君に出会った。



(Illustration by ふせでぃ/Novel by 鏡征爾


痛みを感じる光だけが君を救う光になる

ふせでぃ

イラストレーター・漫画家。

武蔵野美術大学テキスタイルデザイン専攻を卒業。

現代の女の子たちの日常や葛藤を描いた恋愛短編集『君の腕の中は世界一あたたかい場所』(KADOKAWA)は発売即重版が決定。

最新作――『今日が地獄になるかは君次第だけど救ってくれるのも君だから』(KADOKAWA)

SNS:TwitterInstagram



鏡征爾

小説家。

白の断章』が講談社BOX新人賞で初の大賞を受賞。イラストも務める。

ほか『群像』や『ユリイカ』など。東京大学大学院博士課程在籍中。魚座の左利き。

最近の好きはまふまふスタンプと独歩。

SNS:TwitterInstagram



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  7. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  8. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  9. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  10. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた