YouTubeの差別に関するポリシー更新、歴史教育コンテンツなどが巻き込みで誤BANされる事態に

システムの完成には数カ月かかる様子。

» 2019年06月14日 13時10分 公開
[関口雄太ねとらぼ]

 YouTubeは6月5日にヘイトスピーチポリシーの更新を発表し、人種や性別などに基づく差別を主張する動画を削除対象としました。対象となるYouTubeチャンネルに対処が施される一方で、歴史教育や報道を目的として差別について説明するチャンネルも巻き込みで処分を受けてしまったようです。


YouTube、差別に関するポリシー更新 歴史教育コンテンツまで巻き込みでバン ヘイトスピーチ動画への対応を発表(画像はYouTube Official Blogより)

 YouTubeは「ヘイトスピーチに関する私たちの継続的な取り組み」と題してブログ記事を投稿。YouTubeではこれまでに、ヘイトスピーチを行う動画に対する一定の規制を実施しており、コメントや動画共有機能を停止するといった制限をかけてきました。その結果、ヘイトスピーチに関連した動画の視聴回数は減少し、平均で80%ほど視聴を減らすことができたという実績を紹介しています。そして今回のポリシー更新では、ヘイトスピーチなど、差別的な内容を含む動画を削除するという方針を発表しました。

 YouTubeは具体的な削除対象として、年齢、性別、人種、社会的地位、宗教、性的嗜好や退役軍人といったことに基づくヘイトスピーチを挙げています。例えばホロコーストやサンディフック小学校銃乱射事件などの実在する暴力事件をなかったことにしようとする動画、ナチスの思想を賞賛するような動画などが対象です。また、これらの動画が単純に一掃されない理由として「ヘイトと戦うためにヘイトスピーチに関する理解を深めようとする研究者やNGO団体にとっては価値があるコンテンツ」と主張しており、すべてのヘイトスピーチを無条件で削除することができないという内情について言及しました。


 しかしながら、「ポリシーを反映したシステムが完成するまでには数ヵ月はかかりそうだ」とYouTube自身が述べているように、現時点での規制は万能とは言えないようです。歴史教師として活動するスコット・オールサップ氏のYouTubeチャンネル「Mr Allsop History」は、ポリシー更新後、「ヘイトスピーチであるとして」アカウントが停止されてしまいました。チャンネル内で扱っている主なコンテンツは、GCSE(General Certificate of Secondary Education)というイングランドやウェールズなどで行われる義務教育修了時に受験する統一試験に準備するためのもの。「イラン革命」や「湾岸戦争」など、近現代の歴史を扱っています。そのうちのいくつかには、ナチス・ドイツの当時の映像とともに時代背景を説明するものが含まれており、「ナチ党リーダーによるプロパガンダスピーチなどを扱ったことが原因かもしれない」と「Mr Allsop History」の公式Twitterアカウントは推測を述べています。同アカウントは突然のチャンネル停止に「15年間の教材が消え去った」といらだちをツイートしましたが、数時間後に復旧したと報告しました。



復活した「Mr Allsop History

 過激主義などについて報じているジャーナリスト、フォード・フィッシャー氏も、チャンネルの収益化を停止されたと訴えています。他にも、人種差別に対抗する非営利団体Southern Poverty Law Centerの、ホロコースト否定派を取材した動画が削除されたことも報じられています

 また、差別的なコンテンツについての議論として、保守派のコメンテーターとして知られるスティーヴン・クラウダー氏のYouTubeチャンネルが停止措置の対象になっていないことが注目されています。クラウダー氏は、海外メディア「Vox」のカルロス・マーサ氏に対して、人種や性的嗜好について差別的な発言をしてきたとされており、YouTubeチームもコンテンツの内容を詳しく調査したと発言したものの、「クリエイター、ジャーナリスト、深夜番組のコメンテーターなど皆が意見を自由に表明することを許容するのは重要」や「ポリシー違反でなければ削除しない」として、対策を見送っていました。新ポリシー更新の影響があってか、その後、クラウダー氏のチャンネルは収益化が停止されています。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」