YouTubeの差別に関するポリシー更新、歴史教育コンテンツなどが巻き込みで誤BANされる事態に
システムの完成には数カ月かかる様子。
YouTubeは6月5日にヘイトスピーチポリシーの更新を発表し、人種や性別などに基づく差別を主張する動画を削除対象としました。対象となるYouTubeチャンネルに対処が施される一方で、歴史教育や報道を目的として差別について説明するチャンネルも巻き込みで処分を受けてしまったようです。
YouTubeは「ヘイトスピーチに関する私たちの継続的な取り組み」と題してブログ記事を投稿。YouTubeではこれまでに、ヘイトスピーチを行う動画に対する一定の規制を実施しており、コメントや動画共有機能を停止するといった制限をかけてきました。その結果、ヘイトスピーチに関連した動画の視聴回数は減少し、平均で80%ほど視聴を減らすことができたという実績を紹介しています。そして今回のポリシー更新では、ヘイトスピーチなど、差別的な内容を含む動画を削除するという方針を発表しました。
YouTubeは具体的な削除対象として、年齢、性別、人種、社会的地位、宗教、性的嗜好や退役軍人といったことに基づくヘイトスピーチを挙げています。例えばホロコーストやサンディフック小学校銃乱射事件などの実在する暴力事件をなかったことにしようとする動画、ナチスの思想を賞賛するような動画などが対象です。また、これらの動画が単純に一掃されない理由として「ヘイトと戦うためにヘイトスピーチに関する理解を深めようとする研究者やNGO団体にとっては価値があるコンテンツ」と主張しており、すべてのヘイトスピーチを無条件で削除することができないという内情について言及しました。
しかしながら、「ポリシーを反映したシステムが完成するまでには数ヵ月はかかりそうだ」とYouTube自身が述べているように、現時点での規制は万能とは言えないようです。歴史教師として活動するスコット・オールサップ氏のYouTubeチャンネル「Mr Allsop History」は、ポリシー更新後、「ヘイトスピーチであるとして」アカウントが停止されてしまいました。チャンネル内で扱っている主なコンテンツは、GCSE(General Certificate of Secondary Education)というイングランドやウェールズなどで行われる義務教育修了時に受験する統一試験に準備するためのもの。「イラン革命」や「湾岸戦争」など、近現代の歴史を扱っています。そのうちのいくつかには、ナチス・ドイツの当時の映像とともに時代背景を説明するものが含まれており、「ナチ党リーダーによるプロパガンダスピーチなどを扱ったことが原因かもしれない」と「Mr Allsop History」の公式Twitterアカウントは推測を述べています。同アカウントは突然のチャンネル停止に「15年間の教材が消え去った」といらだちをツイートしましたが、数時間後に復旧したと報告しました。
過激主義などについて報じているジャーナリスト、フォード・フィッシャー氏も、チャンネルの収益化を停止されたと訴えています。他にも、人種差別に対抗する非営利団体Southern Poverty Law Centerの、ホロコースト否定派を取材した動画が削除されたことも報じられています。
また、差別的なコンテンツについての議論として、保守派のコメンテーターとして知られるスティーヴン・クラウダー氏のYouTubeチャンネルが停止措置の対象になっていないことが注目されています。クラウダー氏は、海外メディア「Vox」のカルロス・マーサ氏に対して、人種や性的嗜好について差別的な発言をしてきたとされており、YouTubeチームもコンテンツの内容を詳しく調査したと発言したものの、「クリエイター、ジャーナリスト、深夜番組のコメンテーターなど皆が意見を自由に表明することを許容するのは重要」や「ポリシー違反でなければ削除しない」として、対策を見送っていました。新ポリシー更新の影響があってか、その後、クラウダー氏のチャンネルは収益化が停止されています。
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