「誰もが知っているこわい話」の共通点とは? “こわい話”を解剖する(2/2 ページ)

» 2019年08月11日 20時00分 公開
[白樺香澄ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

世論が「こわい話」を後押しする

 「口裂け女」のウワサが最初に流行したのは、いわゆる「受験戦争」が過熱し学習塾・予備校が一種のブームになる一方で、社会問題化していた1979年のことでした。当時は「子供を勉強漬けにすること」「塾に行っているか否かで決まる学力格差=学歴格差」に批判的な世論が巻き起こっていたといいます。

 そんな世間が、「子供を夜遅くまで塾に通わせるべきでない」という教訓譚を求めた。結果として「夜、塾帰りの子供が襲われる」物語が生まれたのではないか――というと、考えすぎでしょうか?

 実際、中部地方での「口裂け女」譚の流行には、経済的な理由等で塾に通わせられない保護者が、子供に塾通いを諦めさせるために流した、あるいは流布を放置したという説まであるそうです。

「信じたい」から「信じてしまう」

 先ほどのブルンヴァンの3要素に話を戻しましょう。

 (3)「有意義なメッセージが含まれること」で求められるメッセージ性は、同時に(2)「実際にあったことだと信じられること」を強化することにもつながります。

 人は往々にして、「そうなんじゃないかと思っていること」「そうだと良いなと思っていること」を肯定するメッセージを含む「ニュース」の真偽を疑わないからです。

 「罵倒したりんご」「江戸しぐさ」「反ワクチン」……ポスト・トゥルースなんて言葉を使うまでもなく、カエサルの昔から「人は信じたいものを信じる fere libenter homines id, quod volunt, credunt.」ものです。

 特にSNSにおいては、匿名を前提としていたネット掲示板と異なり、多くの人が固有名を背負っているため、「道徳的な」「正しい」メッセージを持った物語の方が拡散されやすいのは間違いないでしょう。

 もう勘のいい読者の方ならおわかりでしょうが、冒頭の大ウソも、ブルンヴァンの3要素にのっとって作ったものです。

 「女性が顔に硫酸をかけられ、失明する」というセンセーショナルなイメージに加え、「ヘイトスピーチを含むブログの炎上」という、何度も繰り返され誰もろくに覚えていないタイプの「ありふれた事件」を題材に取り、「ネットの情報をうのみにして拡散するのはやめよう」という分かりやすい教訓を与えました。

 いかがでしょうか? 普段はネットのデマに踊らされる人をバカにして、「俺はフェイクニュースにはだまされないぞ」と思っている人こそ飛びついてくれるような「広めたくなるこわい話」になっていたら良いのですが。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/08/news015.jpg パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  2. /nl/articles/2502/09/news024.jpg 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
  3. /nl/articles/2502/06/news012.jpg 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  4. /nl/articles/2502/08/news091.jpg 北海道の“雪のヤバさ”が伝わる写真に460万表示の反響 衝撃的な光景に「何かの冗談でしょ?」「見たことない景色」
  5. /nl/articles/2502/09/news006.jpg 1歳赤ちゃん、大好きなおばあちゃんがサプライズ登場すると…… 涙が出そうになる反応に「ひいいい!ヤバい」「最後しゃべってない?」
  6. /nl/articles/2502/09/news052.jpg 理容師に「53歳?」と聞かれた30代男性、思い切ってイメチェンしたら…… 「おじいちゃんからパパに」「めっちゃハンサム」と大好評の16万いいね
  7. /nl/articles/2502/09/news026.jpg スーパーで売れ残った瀕死のケガニを水槽に入れたら……翌日、まさかの展開 胸を打つ光景に「鳥肌立った」「泣きそう」
  8. /nl/articles/2502/09/news037.jpg 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2502/08/news018.jpg 92歳じいちゃんに、生後3カ月の赤ちゃん柴犬を会わせたら…… 家族みんな涙を流して大爆笑の展開に「どっちも可愛い」「いいなーww」
  10. /nl/articles/2502/09/news025.jpg 92歳おばあちゃん、朝食とその後をのぞくと…… 「すごすぎる」「度肝を抜かれました」日課に驚きの声
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議