「とにかくうたい文句と違う」 給与未払いの白鳥エステ、エステスクールでも問題が起きていた(3/3 ページ)

» 2019年08月16日 14時48分 公開
[不義浦ねとらぼ]
前のページへ 1|2|3       

井上弁護士の見解

――事前に提示したカリキュラムと授業内容が大きく違った場合、受講料の返金などを求めることができますか。

 一定の要件を満たした場合、契約を取り消したり解除したりすることで、受講料の返金を受けることができると考えられます。

 事前に提示したカリキュラムと授業内容が大きく違ったとき、消費者契約法4条1項1号に該当すると認められれば、契約の申し込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができます。消費者契約法4条1項1号とは、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、「重要事項」について事実と異なることを告げ、それにより消費者が告げられた内容が事実であると誤認した場合、消費者は消費者契約の申し込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができると規定した法律です。今回のエステに関する施術方法についてのカリキュラムは、この法律における「重要事項」に該当するものと考えられます。

 そのため、実際に行う授業が事前に提示したカリキュラムとは違うにもかかわらず、それを知っていてカリキュラムを提示していたような場合には「重要事項について事実と異なることを告げる」に該当すると考えられます。

 また、エステスクールの受講説明の際、「本スクールのカリキュラムです」と言ってカリキュラムを提示された場合、消費者はそのカリキュラムに沿って講義が行われるものと考えられるのが通常であり、「当該告げられた内容が事実であるとの誤認」をしたと考えられます。

 このような場合、消費者は消費者契約法4条1項1号を根拠に受講契約の取り消しを主張することができます。この場合、受講契約は初めからなかったこととなるため、受講料については全額返還してもらうべきと考えられます。なお、受講した部分についての受講料については支払うべきとする考え方もあり、考え方が諸説分かれているところです。

――先方の都合で受講できなかった場合はどうでしょうか?

 先方の都合で受講ができなかった場合は、エステスクールには授業を提供するという債務についての不履行が認められ、債務不履行責任(民法415条)を負うこととなります。

 この場合、受講者はエステスクールに対し、契約の解除(ないし一部解除)、損害が生じていた場合、損害賠償請求(民法415条)をすることが考えられます。

 提供することができなかった授業の当該カリキュラムの中で占める割合、重要性など個々の事情にもよりますが、通常は受けられなかった部分の授業料相当額についての返還を求めることが考えられます。

 なお、受講契約の性質上、カリキュラムや授業内容についてはエステスクール側に一定の裁量があるため、一部の授業が提供されない場合であっても、補講などの代替手段やその後のカリキュラム変更での対応等がなされた場合、上記債務不履行があったとは認められない場合もあります。

――今回のエステスクールはクーリングオフの対象になるのでしょうか。

 今回のケースでは、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」といいます)48条が関連しそうです。

 同条では、特定継続的役務提供に関してクーリングオフを規定しています。ただ、同条によりクーリングオフが可能な役務は7種類に限定されています。エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスです。本件のエステスクールは、上記7種類のいずれにも該当しないものと考えられ、同条によるクーリングオフはできないと考えられます。

 また、エステスクールがその後エステティシャンとして働いて稼げるというところまで含めた契約とは考え難く、業務提供誘引販売契約の解除(特定商取引法58条)による解除もできないと考えられます。

――サポートセンターの回答は妥当なものなのでしょうか。

 サポートセンターからの回答を拝見する限りでは、スクール側の主張に沿った回答としては不当なところはないと考えます。ただ、あくまでエステスクール側の見解に沿って回答されたものであるため、この回答が法的な主張として認められるかについてはさまざまな事情により変わってきます。

 終わりに、今回の問題を考えるにあたっては、エステスクールとその受講生との間の受講契約という法律関係と、エステ会社とその従業員との間の労働契約という法律関係とは、基本的に別個の法律関係であり、相互に法的な影響を及ぼすものではないという点に留意する必要があります。また、具体的な事情がさらに明らかになることにより、それぞれの法律関係において主張できる内容も変わる可能性があります。

いつ問題は解決するのか

 以上のように、法律上は受講料の返金を請求することができる可能性があります。また、事情によっては、クーリングオフの対象になると判断されることもあるようです。

 しかし、「繰り返しメールをしたり問い合わせをしていますが、8月から電話での受付を終了しており、消費者センターから電話などができない状態になっています。ほかの弁護士などからも問い合わせの電話があったようなので、そちらを避けるために電話を廃止したのではと思っています」(Aさん)という証言もあり、対応を求めることが困難な状態です。白鳥社長のTwitterも、8月1日以降更新が止まっています。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/22/news047.jpg 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. /nl/articles/2412/18/news207.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. /nl/articles/2412/22/news034.jpg 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  4. /nl/articles/2412/21/news040.jpg 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  5. /nl/articles/2412/21/news019.jpg 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. /nl/articles/2412/22/news036.jpg 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. /nl/articles/2412/21/news023.jpg 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news042.jpg 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. /nl/articles/2412/22/news039.jpg 13歳少年「明日彼女に会うから……」 パパを説得してヘアカットへ→大変身した姿に「生まれ変わった」「全く別人みたい」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」