ニュース
» 2019年12月16日 14時25分 公開

「違法な労働横行するアニメ業界の是正第一歩」 アニメ制作会社「STUDIO 4℃」の未払い残業代訴訟、東京地裁で始まる

Aさん自ら意見陳述を行い、アニメ業界の窮状を裁判官に直接訴えかけました。

[Kikka,ねとらぼ]

 アニメ制作会社「STUDIO 4℃(スタジオよんどしい)」で制作進行を務めるAさんが、同社に対して未払い残業の支払いを求める訴訟が12月16日、東京地方裁判所で始まりました。第1回では原告のAさんが意見陳述を行い、「この裁判は違法な働かせ方が横行するアニメ業界を是正するための大きな一歩になると思っています」と訴えました。


STUDIO 4℃ アニメーター 制作進行 アニメ制作会社「STUDIO 4℃」を提訴したAさん(ご本人の希望でお名前は匿名としています)

 今回の訴訟で求めているのは、未払いとなっている残業代286万7375円(2017年4月1日〜2019年7月31日)と付加金。Aさんは専門業務型裁量労働制を適用されて勤務していましたが、この裁量労働制の適用が違法であったことが今回の訴訟の主張な論点の一つとなることが提訴時の会見で語られていました(関連記事)。


STUDIO 4℃ アニメーター 制作進行 提訴時に行われた記者会見

 第1回の裁判では、原告Aさんの意見陳述を裁判所が許可。大学卒業後の2016年4月から「STUDIO 4℃」で劇場版アニメ「海獣の子供」の制作に携わってきたAさんは、「制作進行は各工程部門の全スタッフと関わって作品を作り上げるための折衝を行うのが主な仕事」「アニメ作品の制作は大量のスタッフによる膨大な作業の積み重ねで行われている」と自身の仕事に触れながら、「長時間労働」の原因は「アニメ作品の制作進行という仕事の性質から発生するもの」と語ります。


STUDIO 4℃ アニメーター 制作進行 裁判が行われた東京地方裁判所

 同時進行でさまざまなシーンの作画をアニメーターに発注したり、完成した原画をアニメーターから回収したりするのがAさんの主要業務でしたが、「海獣の子供」では社外のアニメーターに作画を依頼していたため「STUDIO 4℃」の勤務時間とは関係なく作業が進むことに加え、納品物は「制作進行がチェックしてから次に作業をするスタッフに事前に約束した日時に遅滞なく届けなくてはならない」という状況だったことから、「制作進行は必然的にアニメーターに合わせたリズムで仕事をしなければならず、夜遅くまで職場に張り付いていなくてはなりませんでした」とAさん。また「海獣の子供」では300人を超えるスタッフが制作に関わっていたものの、制作進行はAさんを含む3人で担当していたと話しました。

 制作進行以外の業務についてもAさんは、「私が担当した動画工程のアニメーターは、決して数分で作れるような作画ではない工程を1枚数百円という安い価格で請け負っています」「私の上司にあたるアニメーションプロデューサーは『激務と睡眠不足で疲れが取れない』『激しい頭痛と吐き気がする』といつも訴え、何度も『吐きそうだ』とトイレに駆け込んでいるのを見ています。長い時間トイレから出てこなくて、『トイレの中で倒れているのではないのか、死んでしまっているのではないか』と不安になることも何度もありました」と告白。

 「海獣の子供」という作品については、「通常の効率化されたアニメ制作のスタイルではなく、1枚1枚の作画、1本1本の線にこだわって本当にていねいに作った作品でした。映像を実際に見ていただければ描写のきめ細やかさや美しさには驚くことと思いますが、ここまで作りこんだアニメ作品にかかわることができたことは誇らしく思っています」と語る一方で、「アニメ作品の作画を担当する人、それを取りまとめる人、その両方がひどい長時間労働に悩まされながらアニメ作品を世に出しています」と現場の窮状を吐露し、「この状況を変えるには、アニメーターや労働基準法が守られて、残業代が適切に払われるようにならなければならないと思います」と話しました。

 Aさんは最後に「サービス残業はどこでもやっているから、うちでも残業させればいいや。法律の抜け穴を見つければ残業代を支払わずに残業させてもいいんだ。という安易な考えがある限り長時間労働の問題は解決しないと思います」と語り、裁判の意義について「私はこの裁判は違法な働かせ方横行するアニメ業界を是正するための大きな一歩になると思っています。裁判所においても適切に判断をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」と締めくくりました

 閉廷後、Aさんの弁護を担当する旬報法律事務所の大久保修一弁護士と蟹江鬼太郎弁護士にお話を伺ったところ、「本日はスケジュールの都合で欠席されましたが被告側(STUDIO 4℃)には弁護人がつき、Aさんの訴えに反論する主旨の答弁書が提出されています。一方『和解に応じる用意もある』という内容も記されていましたが、具体的な内容が不明であること、またAさんのお気持ちとして『判決で決着したい』という意向であることから、今のところは和解についての考えはありません」とのこと。次回の裁判では争点の整理等が中心に行われる見込みだと話しました。


STUDIO 4℃ アニメーター 制作進行 判決が出るまでには1年数か月以上かかるのではないかと蟹江弁護士

 またAさんにもお話を伺ったところ、「裁判では緊張して早口になってしまったところはあった」と振り返りつつ、自分の胸の内を裁判官に直接伝えられたことについては手ごたえを感じている様子。残業代の支払いを求めて以来、社内での働きにくい雰囲気は相変わらずで、「業務も雑務が中心」だと言いますが、「社内で改善が進んでいる」という部分も。Aさんは残業代請求後に基本給が6万円減額されたことでも悩まされていましたが、訴訟後は「労働条件が変更となり、以前の基本給と同額の22万円に戻してもらえたほか、裁量労働制でもなくなりました」と進展について話してくれました。

 また今回の訴訟費用についてはクラウドファンディング「アニメ・クリエイティヴ業界の違法な裁量労働制に、訴訟でルールをつくりたい!」でまかなわれており、151人もの人がAさんを支援してくれていることについては、「本当にありがたいことです」と話しました。次回の裁判は1月30日に予定されています。

Aさんがアニメ業界の窮状を訴える動画

(Kikka)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2108/03/news132.jpg 海外記者「最高のコンビニアイスを発見した」 森永チョコモナカジャンボ、ついに世界に見つかってしまう
  2. /nl/articles/2108/03/news016.jpg 柴犬「ぬれるのイヤ〜!!」→その後の行動に爆笑 飼い主のズボンでゴシゴシ顔をふくワンコが面白かわいい
  3. /nl/articles/2108/03/news073.jpg 「四千頭身」石橋、体操銅メダルの村上茉愛とは“かなり仲良い友達” 「結構前の写真」投稿も別箇所に注目集まる
  4. /nl/articles/2108/02/news119.jpg タクシー相手に「あおり運転」繰り広げたミニバン 巻き込まれて急停止したトラックから泥化した土砂がドシャアと降り注いで破壊される
  5. /nl/articles/2108/03/news029.jpg もしや女として見られていない? 突然の別れ話に「勝負メイク」で抵抗する漫画 彼氏の言葉がじんと響く
  6. /nl/articles/2107/09/news134.jpg 「全ての支出を一度見直してみました」 小倉優子、“食費15万円”の反響を受けて節約生活スタート
  7. /nl/articles/2108/03/news007.jpg 暑い日、ミツバチご一行が手水舎に訪れ…… 専用水飲み処を作った神社の対応に「素敵」「優しいお宮さん」の声
  8. /nl/articles/2108/02/news111.jpg 「うちの子に着せたい」の声殺到 五輪会場で編み物をしていた英金メダリスト、作っていたのは「ワンちゃんの服」
  9. /nl/articles/2108/02/news038.jpg 「実は私…人の心が読めるの」クラスメイトから突然の告白、その真意は? 全部バレちゃう漫画がキュンとなる
  10. /nl/articles/2108/03/news102.jpg 小倉優子、週刊誌報道に「当たり前ですが、私の働いたお金で生活しています」 7月に月の食費「15万円」と公表

先週の総合アクセスTOP10

  1. 「くたばれ」「消えろ」 卓球・水谷隼、SNSに届いた中傷DM公開&警告「然るべき措置を取ります」
  2. 「貴さん憲さんごめん。いや、ありがとう」 渡辺満里奈、とんねるずとの“仮面ノリダー”思い出ショットが大反響
  3. 怖い話を持ち寄って涼もう→「オタバレ」「リボ払い」 何かがズレてる怪談漫画がそれはそれで恐ろしい
  4. おにぎりパッケージに四苦八苦していた五輪レポーター「日本の素晴らしい人々に感謝」 大量アドバイスで見事攻略
  5. 「助けてください」 来日五輪レポーター、おにぎりパッケージに四苦八苦 海外メディアにコンビニが大人気
  6. 「うちの子に着せたい」の声殺到 五輪会場で編み物をしていた英金メダリスト、作っていたのは「ワンちゃんの服」
  7. 五輪飛び込み金メダリスト、“手作りメダルポーチ”披露 英国と日本にちなんだデザインが「これまた金メダル級」と反響
  8. 武井壮、行方不明だった闘病中の父親を発見 「電気ついてるのに鍵閉まってて……」本人は自宅外で休憩
  9. 「涙が止まらない」「やっと一区切り」 東原亜希、夫・井上康生の監督退任で“17年分の思い”あふれる
  10. 水谷隼スタッフが一部マスコミの“行き過ぎた取材”に警告 住民を脅かすアポなし行為に「しかるべき措置を検討」

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「竜とそばかすの姫」レビュー 危険すぎるメッセージと脚本の致命的な欠陥
  2. 笠井アナ、日比谷公園で「信じられないことが…」 サンドイッチを狙う集団に「何? えーっ! まさか、それはないでしょ!」
  3. 62歳の宮崎美子、マクドナルドCMで初々しい中学生少女を見事に演じる 「暖かい目でぜひ見てください」
  4. 瀕死のスズメのヒナを助けたのに…… 「助けたヒナたちに完全にナメられた」動画がほほえましくて面白い
  5. ハート打ち抜かれました! コロンビアのアーチェリー女子選手が「かわいい」「エルフ」と注目の的に
  6. 散歩中のラブラドール、助けを求める子猫を発見→保護 親子のような仲むつまじいふたりに涙が出る
  7. 宮迫博之、美容整形から2週間のビフォーアフター公開 手術直後の腫れ&炎症だらけな顔に「暴漢に遭ったんかって」
  8. 上野樹里、“娘”の誕生日に愛情たっぷり手作りオムライス公開 「がんばろうね ママより」と祝福メッセージ
  9. 出勤時、妻にいつになく強く抱きしめられた夫→妻が家に帰ってくると…… 何気ない日常を描いた漫画にツッコミつつもジーンとする
  10. 「本人にしか見えない」「めっちゃ似てる」 霜降り明星せいや、オリンピック開会式に“ガチのそっくりさん”を発見する