アウェーすぎるおしゃれ女子空間で、オタクよ耐えろ!「推しが武道館いってくれたら死ぬ」2話 アイドルとファンの距離ってどのくらいだろう(1/2 ページ)

推しアイドルまで何マイル?

» 2020年01月23日 10時00分 公開
[たまごまごねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

推しが武道館いってくれたら死ぬ (C)平尾アウリ/徳間書店

 大好きなアイドルがいる。彼女は生きているだけでファンサ。だから人生を賭けて推します! 「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(原作アニメは地下アイドルChamJamの市井舞菜と、彼女を命がけで推すドルオタえりぴよを描いた、情熱的でコミカルな物語。

 2話は、アウェー経験のあるオタクには見ていて背筋が凍るようなシーンの連続。同時に救われた瞬間の多幸感に「あるある」を感じてつい目元が潤んでしまいかねない。アイドルとファン、どういう距離が適切なのかにも踏み込み始める回です。


推しが武道館いってくれたら死ぬ (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

ホームとアウェー

 えりぴよらが推しているアイドルグループ「ChamJam」が、岡山ガールズフェスタにゲスト出演決定! 狭い界隈(かいわい)で頑張っている彼女たちがついに大舞台に。

 「岡山の女子が全員観客席に集うという!?」とえりぴよが言うのは大げさ。要は「女子」という言葉がイメージする枠=今どきの女子力高い子、キラキラおしゃれ世界の住人、といった(オタク側視点だと腰が引けるような)ニュアンス。雑誌モデルが集まるため、自分の衣装を売っぱらってジャージでアイドル追っかけているえりぴよとは真逆の存在が集結する空間になることは間違いなし。

 とはいえ普段見ている層と別の層にアプローチするのはとても大事。だからChamJam的には大チャンス。喜ぶべきこと。のはず。

 ファンはそれを分かっているものの、やっぱり幾多の不安に襲われるってものです。


推しが武道館いってくれたら死ぬ 人気の差はどうやっても出ます(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 まず選抜メンバー=人気順になってしまうこと。ユニットになるとこればっかりはどうやってもぶつかる問題。数値化された順番に沿う以外の方法がほぼないのは、誰もが理解しているはず。でも納得と心は別。「推しが人気の問題で出ない」というのは、やはりやりきれないものがあります。ChamJamで人気なのは、センターのれお、左の空音(そらね)、右の眞妃(まき)。改めて見ると、3人はそれぞれの個性をどうだすか熟知している様子。人気が高い理由が分かる映え方しています。

 えりぴよの推しの舞菜は、握手会を見た感じおそらく人気はドンケツ。出る雰囲気は感じられない。

 じゃあ行かない? いいえ。1%でも舞菜が出るなら、それを見届けなかったら後悔してしまう。モヤモヤしつつも当然のようにチケットは買います。


推しが武道館いってくれたら死ぬ オタクが溶けそうな拷問タイム(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 ふたつめの悩みは、アウェーでの戦いになること。ChamJamが新たな世界に旅立つ瞬間ゆえの試練。オタクは自分たちと違う文化圏の人間の中で縮こまらねばならない。オタク三人衆のうち基(もとい)は妹がいたため勝ち組入場。えりぴよとくまさは、最前列で針のむしろの上に座るかのような時間と戦うことに。


推しが武道館いってくれたら死ぬ オタクの誇り(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 「ドルオタは推しが出ていない場面でも盛り上がるべし」は名言だと思います。あらゆるアイドルが心地よくステージを楽しみ、イベントそのものを成功させるには、ファンもまた空間の作り手たるべし。一方的な享受に甘えるなかれ。このへんが「いいオタク」くまさ氏の魅力あふれる生き方です。1話の反応を見ると、くまさへの「かっこいい」の声がちらほら見られました。とても紳士的かつ情熱的な愛すべきキャラクターです。


推しが武道館いってくれたら死ぬ つらい(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 ただし、自分たちの頑張りが場のルールにそぐうかは別問題。えりぴよ、くまさ、生き地獄。

 オタクには余りにもつらい異文化世界。それでもアイドルたちはもっと不安にかられているはず。アウェーの地で見てくれる人がいるか分からない恐怖との戦いの中舞台に出ることを考えたら、ファン側は弱音なんてはいていられない。

 新しい世界に羽ばたくことは、本人もファンも痛みを伴います。


アイドルとファンの目が合う時


推しが武道館いってくれたら死ぬ ありがとうのメッセージ(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 不安さを隠せぬままランウェイを歩いていた、ChamJamセンターの五十嵐れお。彼女が自分の大ファンであるくまさを観客の中に見つけた時、はっとした笑顔と共に送ったのが、固定レス(特定のファンを見つけた時にするポーズ)でした。くま耳ポーズは認知されているくまささんへの特別なお返し。


推しが武道館いってくれたら死ぬ コミカルに見えるけどこのシーン泣かないの無理(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 くまさ「僕れおのこと好きでよかったです」ファンがいることがアイドルの支えになり、アイドルがまたファンに感謝を返してくれる。アイドル側が心から喜んでいるのが伝わる、名シーンです。


推しが武道館いってくれたら死ぬ 演出がまるで天使(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 歴戦のセンターれおですら緊張したステージの中、ほぼシークレット枠のような登場をした舞菜。彼女のアウェーでの不安たるや想像に難くない。舞台後、れおに「わたしのことなんて誰も待ってないと思ってたから」「わたしは仕方なく選ばれただけだし…」とこぼしてしまいましたが、それでも彼女は……。


推しが武道館いってくれたら死ぬ 立ち位置は違うけど(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 えりぴよがいたことで、やり遂げました。一人心の中で感謝の言葉をこぼします。「わたしを選んでくれて ありがとうえりぴよさん」

 アイドルとファンの関係は一概に言える距離感ではないと思います。れおはトップオタであるくまさがその場にいることで心奮い立たされ、頑張る力をもらいました。愛を受け取り、感謝を返すループに寄ってエネルギーが生まれます。

 一方で舞菜とえりぴよの関係は特殊中の特殊。舞菜ファンが極端に少ない(単推しはえりぴよだけ)ため、ともすれば一対一になることも多々です。どうやってもお互いを強く意識している状態の中、目の前にいてくれることの心強さは、双方絶大なものがあるはずです。なのに舞菜がえりぴよ一人に対して意識しすぎて言葉を出せないため、えりぴよへの感謝が届かずループしない。今は舞菜に洪水のようなえりぴよの一方的な愛が注がれているだけの状態。えりぴよは無私の愛の人だし、舞菜もうれしくはあるので、この二人の間のみで成立している、ちょっとゆがんだ関係です。少なくとも舞菜はこれが最善とは思っていない様子。

 舞菜はれおのようにスマートに思いを返せる状態では、今はないです。もしえりぴよにちゃんと舞菜の気持ちが通じてしまったら、どうなっちゃうんだろう。


ファンとの手紙


推しが武道館いってくれたら死ぬ アイドルからの最高の贈り物(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 アイドルとファンの間で一番何が欲しいかっていったら、手紙という人は多いのではないか。プレゼントもいいけれど、やはり特別な言葉はうれしい。れおからのガールズフェスタでの特別な感謝の言葉を見ていると、絶対推し変なんてできなくなりそう。

 彼女はプロのアイドルとしての距離感をしっかり分かっています。個人への大切な気持ちの後に、誰にでもしていそうなマイブームの話題にずらして締めることで「アイドルとファン」の一線を守っています。一人のファンを好きになると、ファン全体の人たちを裏切ることになるから絶対にしない、というのがれおの信念。

 一方、意外にもえりぴよから手紙をもらったことがない舞菜。「どうせ返信こないし…接触で会えるしさあ…」というのがえりぴよの考え方だったようですが、やっぱりファンから手紙は欲しい。ここで「ファンの方から」と言いつつも「えりぴよさんから手紙が欲しい」と願ってしまうのが舞菜の本心。では実際の振る舞いと距離感は、というと……そこは多分次回。


推しが武道館いってくれたら死ぬ 重すぎるんだよなあ(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 短冊という形で解禁されたことで、いざ送るとなると重すぎるえりぴよの思い。そして届かないオチ。果たして届かなかったのが良かったのかどうなのかは…深く考えない方がこの作品をより楽しめる気がします(そもそもあれで手紙届かないの大問題だしね!)。れおとくまさの関係が今回とてもバランスがいいだけに、どうしても舞菜えりぴよのしょんぼり感が引き立ちます。ただしお互いそういう抜けたところがあるからこそ、引かれ合うのかも。


推しが武道館いってくれたら死ぬ ChamJamメンバー視点も増えます(2話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 今回から舞菜以外のChamJamメンバーの視点も少しずつ描かれはじめます。ChamJamの群像劇としても魅力のある作品なので、今後どう描かれるのか期待!



       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた