コラム
» 2020年03月01日 12時00分 公開

「“聞いた風”なことを言うな」→正しくは「利いた風」……ってホント? 近年現れたとみられる「聞いた風誤用説」 (1/2)

辞書によって誤用説が採用されていたり、そうじゃなかったり。

[ながさわ,ねとらぼ]

 「利いた風」ということばがあります。「利いた風なことを言うな」というように使い、いかにも物を知っているような感じで生意気なさまをいいます。これを「聞いた風」と書くのは誤りだという説があります

 この場合の「きいた風」とは、「利いた風」。「気が利く」というときの「利く」で、「利いた風」で、いかにも気が利いているように見せるという意味になる。

 誰かから聞いて、いかにも知っているふりをするという意味で「聞いた風」と書く人がたまにいるが、これは間違い。

『日本人が間違えている日本語 あなたも平気で使っていませんか?』P.20 日本語倶楽部編(2010)/河出書房新社

ライター:ながさわ(Twitter:@kaichosanEX/ブログ:四次元ことばブログ

数百冊の辞書を保有する辞書コレクター。暇さえあれば辞書を引いている。「四次元ことばブログ」(http://fngsw.hatenablog.com/)で辞書や日本語について発信中。


辞書によって違う“「聞いた風」は誤用か否か”

 国語辞書をひもといても、「きいたふう」には「利いた風」の表記しか示さないものが多数派です。『明鏡国語辞典』(以下、『明鏡』)と『学研現代新国語辞典』(以下、『学研現代』)の2冊に至っては、「聞いた風」は誤りだと明記しています。

 その一方で、「聞いた風」を認める辞書もあります。いったいどちらを信じればよいのでしょうか。

 まず、「聞いた風」を誤りだとしている『明鏡』『学研現代』から見てみます。

『明鏡国語辞典』第2版(2010)

きいた-ふう【利いた風】

〔名・形動〕わかってもいないのに、知ったかぶりをして生意気な態度をとること。「―な事をぬかす」

[注意]「聞いた風」と書くのは誤り。

『学研現代新国語辞典』改訂第6版(2017)

きいた-ふう【利いた風】

《名・形動》何もわからないのに、いかにも物のわかったような生意気な態度をとること。知ったかぶり。「―なことを言う」「―な口をきく」

[注意]「聞いた風」は誤り。

 この2冊が誤用説を取り上げたのはかなり最近で、『明鏡』は最新の第2版(2010年)から、『学研現代』は1つ前の版である第5版(2012年)からのことです。時期的に、『学研現代』の記述は『明鏡』をうけたものかもしれません。

 自分の知る限りでは、ことばに関する一般向けの本で最も早く「聞いた風」が誤りだと述べているのは、1987年に出た『知ってるようで知らない日本語』という本です。

「きいた風」の“きいた”は、“聞いた”ではなく“利いた”が正しい。

引用:『知ってるようで知らない日本語 たとえば「小春びより」って,いつのこと?』P.157 柴田武(1987年)/ごま書房

 対して、「聞いた風」を誤用“としない”辞書はどうでしょうか。

『広辞苑』第7版(2018)

きいた-ふう【利いた風・聞いた風】

『現代国語例解辞典』第5版(2016)

[きいた-ふう 利いた風]

〔名・形動〕いかにもその道に通じているように見せること。また、そのさま。知ったかぶり。「利いた風なことを言う」

▼耳にして事情を知っている意で、「聞いた風」と書くこともある。

 『広辞苑』は1969年の第2版から、『現代国語例解辞典』は1985年の初版から「聞いた風」の用字にも触れています。もう少し早いものでは、『新潮国語辞典 現代語・古語』(1965年)も表記欄で「聞いた風」と「利いた風」を併記しています。

 「聞いた風」誤用説は、「聞いた風」を載せる辞書がある中で言われ始めたものらしく、どうも疑わしく感じられます。





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