「急にクリ○ンが出てくる」「男塾名物油風呂」「機動兵器に乗る」 読者考案のアイデアを全て受け止め実現した漫画が神がかり(1/2 ページ)

膨大なアイデアをゴッタ煮しながら大筋を束ねる力量に脱帽。

» 2020年05月25日 20時00分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 老婆が魔法少女になったり連載を1年で1ページだけ進めたり、Twitterで挑戦的な作品に取り組んでいる漫画家のキドジロウ(@timberdoor)さんが、またもやトリッキーな企画の漫画を公開しました(関連記事12)。今度はなんと、読者からリプライで寄せられた91ものアイデアを、全部採用して漫画化。ムチャしやがって……。


アイキャッチ ナレーションが「おそらく最も読者の意見を尊重し描かれた漫画」と語る通り、ほとんどのページに読者のアイデアを投入。枠外掲載の読者案と照らし合わせながら読むと、より楽しめます

 事の起こりは作者が4月26日の10時15分に投稿したツイート。主人公のキャラクターデザインを見せつつ、「今日の正午までにこのツイートへリプライされたアイデアを、『全部』採用して漫画を描きます」と宣言する内容でした。


主人公 作者が決めていたのは主人公のデザインのみ

 すると、2時間に満たないわずかな受付時間中に、膨大な量のアイデアがリプライ。その数は重複分を除いても91に及ぶ結果となりました。しかも、ざっと拾い読みしただけでも「食パンくわえながら運転して『アーン遅刻遅刻』」「曲がり角でトラックとガシャン」「異世界転生しない」「男塾名物油風呂」「すしが握れる」「ハッピーエンド」など、当然ながら脈絡も何もない物事ばかり。これ本当に全部破綻することなく1つの話に落とし込めるのか……?


アイデア一覧 寄せられたアイデアの一覧。これ全部と真剣に向き合ったのか……

 多くの不安感をはらみながらも、漫画本編はスタート。アイデアの1つ「機械仕掛けの神〈デウス・エクス・マキナ〉が出てくる」にちなみ、タイトルは「魔法少女デウス・エクス・マキナ」、主人公の名は「牧野真紀奈(まきのまきな)」に決まりました。


P1

 最初のページに盛り込まれた読者案は、「チャリンコにヒジから乗る」「アンパン食べる」「食パンくわえながら運転して『アーン遅刻遅刻』」。真紀奈はそれらへ忠実にさっそうと登場し、アンパンと食パンを同時にくわえながら急いで自転車を漕ぎ出しました。ナレーションも前述の要望「ハッピーエンド」を宣言しています。


P2

 真紀奈は「アーン遅刻遅刻」と慌てるあまり、トラックと衝突寸前に。すんでのところで、身をていして助けてくれたラーメン屋店主の田中謙介(51歳)に救われます。この一連の流れで、読者案「曲がり角でトラックとガシャン」「関係ないおっさんが事故る」「ラーメン屋の田中謙介(51)が登場」が消化。加えて、前述の「異世界転生しない」までクリアーしてしまいました。相反する「トラックがガシャン」と、うまいこと両立したものですね。


P5

 しかし、読者の要望通りに登場した「ビニール袋の覆面」に拳銃で撃たれ、真紀奈の日常は終焉。「猫ランジェリーを着る」「エジプトに行く」「得体の知れない化け物と会う」「唐突にドラゴンの紋章が浮き出てあいまいな使命を課される」「親戚が漬物にされる」など、リプライが定めた過酷な運命を次々と刻み込まれた結果、エジプトで得体の知れない化け物に、なんとなく怪獣と戦う使命を課されてしまいました。


P10

 化け物が想定した以上の力を秘めていた真紀奈は、自力で脱出して無事帰国。しかし、自分の運命から目をそらそうと非行に走り、同級生にクマさんパンツを見せてお金を稼いだり、マスクを転売したり、すしを握ったり、気ままな日々を送ります。皮肉なことに、それらの行動も全てリプライが定めた運命なのですが……。


P12

 どうせ死ぬんだと絶望した彼女は、その前にせめて、気に掛けていた難病の少年「クリ○ン」くんに会おうと病院へ。治すにはマリアナ海溝にいる怪獣の血が必要と聞いて、己の使命を思い出し、戦いを決意します。……すごいぞ! カオスなようでいて、だいぶ話つながってる!!


P16

 かくして、真紀奈は汎用人型決戦兵器「デウス(対K型装備)」の適合者として決戦の地へ。「わけあって機動兵器に乗る」「マリアナ海溝でパシフィック・リムごっこ」「主人公が『クリ○ンのことかーっ』と叫ぶ」など、リプライに従って激しい戦いを繰り広げます。急に「クリ○ン」出てきた理由、それかよ!


P20

 しかし奮戦もむなしく真紀奈は敗北。怪獣の最終形態「EX(エクス)」により、男塾名物油風呂へ放り込まれてしまいます。「油風呂なんてどこに出てくるんだ?」って思ってたみなさん、ここですよ。

 煮えたぎる油の中で意識を失った真紀奈は、謎の空間で目を覚まします。そこで彼女を迎えたのは、1億もの並行世界に存在する1億人の「マキノマキナ」でした。


P19

 彼女たちは真紀奈に似ているようで何かが違う、いわば「真紀奈にあったかもしれない可能性」。「逆立ちしたら戻れなくなった真紀奈」「中身が実はおっさんだった真紀奈」「男物のパンツに変身する真紀奈」など、読者のリプライから生まれた者の姿もみられます。

 これらの並行世界が「ある者たちの願い」、すなわちリプライによって作られている――世界の構造を知らされた真紀奈は、秩序を取り戻してほしいと“自分たち”に請われて再起。このように、物語は「メタネタどんどん入れる」案に従って急展開し、全読者の提案を吸収しながら予告通りにハッピーエンドを迎えます。

 ダイジェストでお伝えしてきましたが、「魔法少女デウス・エクス・マキナ」にはほかにも、読者の案を実現するための細やかな工夫がふんだんに盛り込まれています。漫画全編は以下に掲載するので、ぜひご覧ください。ムチャ振りめいた膨大なアイデアを受け止めて1本の流れに束ねる、作者の機敏なレシーブに感心させられること必至です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2403/17/news022.jpg 【追記あり】夫に「油買ってきて」と頼んだのに、手ぶらで帰宅した理由はまさかの…… とんでもないオチに「やめてww」「久しぶりに大爆笑」
  2. /nl/articles/2403/18/news022.jpg 1歳息子の“はじめての寝落ち”が140万再生 10歳兄のやさしい行動に「なにこの平和でかわいい世界」「最高に癒やされる」と絶賛の声
  3. /nl/articles/2403/17/news063.jpg 「予言者いた」「先見の明」 大谷翔平選手&真美子さんの結婚を2021年時点で予言(?)している投稿が発掘され話題に
  4. /nl/articles/2403/17/news047.jpg 北海道内の移動距離を本州と比較したら…… 感覚がバグるマップ画像に「これが北海道」「大きすぎる」
  5. /nl/articles/2403/18/news042.jpg 生後1カ月の赤ちゃん「ぼく泣かないもんねっ」 うるうるおめめとへの字口が「はぁ〜たまらん!」「ぐぁぁああああっっ」取り乱すほどかわいい
  6. /nl/articles/2403/15/news126.jpg 「一番イチャイチャしているように見える」 大谷選手が公開した写真でドジャース山本由伸選手の“手つなぎ”?が話題に 「そっちに目が行く」
  7. /nl/articles/2312/29/news019.jpg 「妻の服を勝手に着て脱げなくなったムキムキ夫とデカワンコ」に爆笑の嵐 シュールすぎる状況が500万表示突破
  8. /nl/articles/2403/18/news025.jpg “おしりが5日で変わる”トレーニング! 「明日からやるか」「1日1回だけなら続けられる」と累計3000万再生突破
  9. /nl/articles/2403/18/news056.jpg 大好きなボールを100個プレゼントされたときのワンコの表情に「放心ww」「引いてない?」 直視できない姿がSNSで話題
  10. /nl/articles/2403/18/news064.jpg 赤ちゃんが妙に静かだと思ったら…… 思わぬものへの“真剣モード”に笑顔になる人続出「たれたもちもちほっぺたまらん!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  2. 昭和時代に“無かった物”が写っている……? 細かすぎて伝わらない「未来から来たことがバレた写真」に6万いいね
  3. 「マジで汚い」「こんなもんです」 辻希美、“大散乱”のリビングと“新”キッチンの差を公開し共感の声集まる
  4. 双子の赤ちゃん、姉が全力でくしゃみして…… 被害にあった妹の反応に「生後3ヶ月でドリフのコントw」「めちゃどっちもカワイイ」と絶賛の声
  5. 「よくも病院に連れてきたな……」とにらむ猫、先生が来た瞬間 驚きの変貌に爆笑の声「これがほんとの猫かぶり」
  6. 急に片耳がたれたワンコ、慌てて病院にいった結果…… 「こんな可愛い診断結果初めて見たよw」「笑っちゃった」と反響
  7. 「何羽いる?」一見普通の“草むら”、よく見ると……? 思わず絶叫まちがいなしの1枚に「どっさりいるw」「まさに迷彩!」
  8. 店員に「この子は懐きませんよ」と言われたチンチラ、家に来て3日後…… 人を信じる姿に「愛が伝わったんですね」
  9. 元SDN48光上せあら、目を離した隙に……子どもが商品を触り“全買取” 「子連れママに厳しすぎないか?」
  10. 柴犬を子どものように育てた結果、人間みたいな行動をするようになった 何気ない幸せな日常に「完全に家族の一員」「全部が愛くるしい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」