「JR各社が時間帯別運賃を検討」つまりどういうこと?(1/3 ページ)

「ラッシュ時間帯は割高に、終電時間も繰り上げ」の導入を検討していますが、それはなぜ……?

» 2020年07月24日 19時00分 公開
[少年Bねとらぼ]

 東日本旅客鉄道(JR東日本)が、2020年7月7日に行った深沢祐二社長の定例会見で「時間帯別の新たな運賃体系を検討」していることを明らかにしました。併せて、西日本旅客鉄道(JR西日本)も7月22日、長谷川一明社長が同様に時間帯別運賃や終電繰り上げを検討していると述べました。

JR東日本 E235系 JR山手線(E235系)

 「ラッシュ時間帯は運賃を高くする」「終電も早める」──。「乗客分散効果、満員電車解決策の一つになると思う」「実際どうやるんだろう?」「安い時間帯がピークタイムになるだけのオチが見える」……など、ネットでも大きく話題になりました。その背景と課題、ポイントをサクッと解説します。

なぜ時間帯別の運賃体系を検討しているの?

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で、移動需要が大きく減退しました。これまで安定した運賃収益の礎であった通勤客の生活様式が変わりました。

 JR東日本の2020年第1四半期鉄道営業収入は前年同期比34.1%、特に緊急事態宣言が発令された2020年4月、5月の利用客減が著しく、前年同月比30%と大きく落ち込みました。

JR東日本の2020年4月〜6月鉄道営業収入 2020年4月〜6月鉄道営業収入は感染症流行の影響で、前年同期/同月比で著しい減収となった(JR東日本「鉄道営業収入資料」より)

 日本労働組合総連合会が2020年4月以降にテレワークを始めた労働者の意識をまとめた調査「テレワークに関する調査2020」によると、これまでの通勤からテレワークになった人は、26%が「毎日」、72.7%が「勤務日の5割以上」と回答(関連記事)。これまで定期を買い、固定ルートで通勤していた人が、やはりかなりの率で働き方を変えたことも数字として表れてきています。

 毎日固定ルートで通勤する必要がなくなることから、企業においても定期代の支給ではなく、従業員の柔軟な働き方に対応できる別の支給方法を取り入れる動きが進んでいます。

 テレワークの浸透など客の生活様式が大きく変化する中、鉄道会社も安全に安定したサービスを提供する公共交通機関としてのとても重要な役目を維持しながら、長期的に経営が成り立つように収益体制を変えていかなければ生き残れません。

 機会と理由は、新型コロナウイルスの影響による利用客の減少と生活様式の変化に対応し、安全運行のための保守人員確保なども含めたコスト面対策のため。時間帯別運賃の導入はその案の1つです。併せて「定期券の位置付けも考えないといけない」とJR東日本の深沢社長は会見の中で述べています。

「満員電車」の課題解決にも時間帯別運賃が有効

 その一方で、都市圏の通勤時間はいまだに混雑が激しい現状もあります。例えばJR東海道線の川崎駅〜品川駅間は、平日朝6時30分〜7時30分に乗客が集中しています。

満員電車 感染症対策と生活様式の変化を前提にした「満員電車を解消」する機会としても想定
首都圏の列車混雑状況 首都圏通勤電車の列車混雑状況を見ると、2020年6月末〜7月初旬も朝のラッシュアワーで「かなり混み合っています」のマークがある(JR東日本「列車混雑状況」より)

 鉄道車両は「換気のために、通勤電車の窓を開ける、ドアを開放するといった施策を行っている。鉄道車両は密閉空間ではなく、空調装置で常時空気循環・入れ替えを行っている(ので安全です)」(関連記事)とうたいます。しかし心配する声があるのも事実です。

 働き方が柔軟になる大きな変化を前提に、「ラッシュ時間帯は高くなるというより、ラッシュ時間帯を避ければ明確に安い」となればどうでしょう。満員電車の解消で「3密(密閉、密集、密接)を避ける」の緩和と、働き方の変化にも対応できる柔軟な体系としたい考えです。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  2. /nl/articles/2411/20/news049.jpg 高校生の時に出会った2人→つらい闘病生活を経て、10年後…… 山あり谷ありを乗り越えた“現在の姿”が話題
  3. /nl/articles/2411/20/news222.jpg ディズニーシーのお菓子が「異様に美味しい」→実は……“驚愕の事実”に9.6万いいね 「納得した」「これはガチ」
  4. /nl/articles/2411/20/news050.jpg プロが教える「PCをオフにする時はシャットダウンとスリープ、どっちがいいの?」 理想の選択肢は意外にも…… 「有益な情報ありがとう」「感動しました
  5. /nl/articles/2411/20/news054.jpg 「防音室を買ったVTuberの末路」 本格的な防音室を導入したら居住空間がとんでもないことになった新人VTuberにその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  7. /nl/articles/2411/21/news083.jpg 間寛平、33年間乗り続ける“希少な国産愛車”を披露 大の車好きで「スカイラインGT-R R34」も所有
  8. /nl/articles/2411/21/news085.jpg 「もしかしてネタバレ?」 “timeleszオーディション”候補者がテレビ局を退社 ディズニーの“船長”としても話題
  9. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
  10. /nl/articles/2411/21/news018.jpg グルーミングが出来ない生まれたての子猫、とんでもない体勢になり…… 想像以上のへたくそっぷりに「どこにも届いてないww」「反則級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた