狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け(1/2 ページ)

公開中の映画「がんばれいわ!!ロボコン」には狂気がギッチギチに詰まっていた

» 2020年08月04日 18時00分 公開
[ヒナタカねとらぼ]

 現在公開中の映画「がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻」がすごいことになっている。


狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか。コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け (C)石森プロ・東映

 パッと見では夏休みの子ども向けの劇場用映画という印象を持つだろうが、公開されるやいなや、Twitterでは目を疑う感想がたくさん投稿されたのだ。

  • 「1秒たりとも正気ではない映像災害みたいな作品」
  • 「映像を使った人間の脳への人体実験」
  • 「ずっと具合悪いときに見る夢みたい」
  • 「人間の理性や良識への宣戦布告」
  • 「ぜひ一時停止も早送りも逃げ場もない劇場で観てほしい」

 これはなんだ、何が起こっているんだ。あの映画「キャッツ」のような衝撃の映画体験、もしくは「時計じかけのオレンジ」のルドヴィコ療法的なものを覚悟しつつも、極端な感想に惑わされることなくフラットな気持ちで見ようと思っていた。

 結論を申し上げれば、映画「がんばれいわ!!ロボコン」はすさまじかった。みんな嘘は言っていなかった。上映時間はごく短いのだが、その中身は狂気でギッチギチだった。どういう気持ちになればいいかわからず、感情が迷子どころか島流しにあったんじゃないかと思った。なんなんだこれは。

 以下からは、中盤以降の衝撃の展開を伏せつつ、映画「がんばれいわ!!ロボコン」がすさまじい理由を記していこう。


映画「人体のサバイバル!/がんばれいわ!!ロボコン」予告

1:まっとうな経緯で復活したはずの「ロボコン」

 もともと「ロボコン」は石ノ森章太郎が原作を手掛けた特撮番組であり、1974年から1977年まで「がんばれ!!ロボコン」が、1999年から2000年には2作目となる「燃えろ!!ロボコン」も放送されていた。今回の映画は2作目からは20年、初代から数えればなんと43年という時を経ての復活になる。


狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか。コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け (C)石森プロ・東映

 プロデューサーの白倉伸一郎氏によると、このたび「ロボコン」が復活したのは、カップリング上映の「人体のサバイバル!」と併映する実写作品の企画としてふさわしく、同じくアジア圏での認知があり、かつに今に至るまでの人気もあったことが理由なのだとか。すでに「ロボコン」のリメイク企画案はあったそうなのだが、今回は「人体のサバイバル!」とのバランスを考えたキッズムービーとして、一から作り直しているのだという。

 とてもまっとうな経緯で復活したはずの「ロボコン」だが……実際に出来上がったのは、前述した通り狂気という言葉が先に思い浮かぶ、とんでもない映画だった。


2:開始5秒からおかしかった

 開始5秒でこの映画がヤバいことが分かる。ヘヴィメタルな音楽がガンガン鳴り響き、急激なスピードでズームインとズームアウトを繰り返して中華料理屋の店内を映し、女性が激しくヘッドバンギングをしながら料理を作っている。そこに天井を突き破ってやってきたロボコンは岡持ちに店主の頭をぶち込み、その子どもは「パパを出前してどうするんだよ〜」とツッコむ。正気の沙汰ではない。


狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか。コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け (C)石森プロ・東映

 そもそも、サブタイトル通りに「汁なしタンタンメンが恋をする」というメインプロットから常軌を逸している。確認のためにもう一度書くが、「汁なしタンタンメンが恋をする」のである。なぜ食べ物に意思が生まれるのか、なぜしゃべるのか、そうした問いかけは一切行われない。その後にこの麺は地球征服も企んでいることも分かるのだが、そこでの論理のトンチキぶりはたくさんの脳細胞の死を覚悟するほどに難解である。


狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか。コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け (C)石森プロ・東映

 この汁なしタンタンメンの声を担当するのは、人気声優の鈴村健一。彼が赤ちゃん言葉で父と慕うロボコンに語りかけ、飛びかかってチンゲンサイでおっぱいを吸おうとするシーンでは意識を失いかけた。確認のためにもう一度書くが、鈴村健一ボイス(赤ちゃん語)の汁なしタンタンメンがチンゲンサイでおっぱいを吸おうとする。さらに、登場する中華料理は汁なしタンタンメンだけじゃない。あんなヤツが現れ、あんなことになるとは誰が予想できるのだろうか。

 すでに狂気の釜の底にいるわけだが、ヒロインのロボットが起こすある騒動に至っては、もう斜め上だとか超展開だとかという言葉では足りない、「一体何を見せられているんだ」と思うしかない、悪夢のような光景がスクリーンに広がる。劇場からは子どもたちが呆気にとられる空気が確実に伝わってきた。


狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか。コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け (C)石森プロ・東映

 その後は、汁なしタンタンメンの成長物語へと展開していく。麺は精神的に成長するんじゃなく物理的に伸びるものだと思っていたが、その既成概念が覆される衝撃のラストが待っている。信じてくれ。嘘は書いていないんだ。たすけて。

 恐ろしいのは、このどとうの展開がすさまじいスピードで繰り出されることだ。「ツッコミが追いつかない」どころか「ツッコむ隙が一切ない」のだ。あるのは、ただ狂気の禍中にいるという感覚のみ。Twitterの感想にあった通り、これは逃げ場がない劇場でこそ観るべき、全く新しい映像体験、いや映像兵器である。


3:プロデューサー・脚本家・監督それぞれの意向が噛み合って生まれた奇跡

 そもそも、なぜ汁なしタンタンメンをフィーチャーしたのか? と誰もが思うところだが、白倉伸一郎プロデューサーはまず「ロボコンががんばる話」にしてほしいと脚本家の浦沢義雄氏に提案し、そのロボコンが失敗してしまう例として「例えば出前のタンタンメンの汁をこぼして、汁なしタンタンメンにしちゃうとか……」という具体例をあげたところ、浦沢氏が「あ、それいいね」と気に入ってしまったことがその理由だそうだ。

 その浦沢氏は、「激走戦隊カーレンジャー」「人造昆虫カブトボーグVxV」などの不条理ギャグ脚本で知られ、「ペットントン」という特撮番組では「横浜チャーハン物語」というシューマイとチャーハンが結婚式をあげる話を手掛けていたりもする。「汁なしタンタンメンが恋をする」物語を作り上げるのにも不思議はない(?)というわけだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた