【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】RTA走者に聞く「メジャー Wii パーフェクトクローザー」の面白さ(1/2 ページ)

「パーフェクトクローザー」RTA走者・ソードフィッシュさんにお話を伺いました。

» 2020年12月30日 20時00分 公開
[ねとらぼ]

 年末企画「自分の好きなゲームが世間ではクソゲーと言われている人インタビュー」。今回は、2008年クソゲー・オブ・ザ・イヤー大賞を受賞した野球ゲーム「メジャー Wii パーフェクトクローザー」のRTA走者さんにお話を伺いました。

企画:好きなゲームが世間のクソゲー

「これはクソゲー」「あれはクソゲー」と世間は気軽に言うけれど、遊び方も感性も人それぞれ。むしろ、そんな風に言われている作品の魅力を知っている人に話を聞いてみよう。Twitterで募集をかけたら、2〜3人くらい手を上げてくださるのでは?

……と思っていたら、100人くらいから連絡が来ちゃった企画です。編集部のリソース的に可能な範囲で記事化。1日1本ペースだと公開しきるまでに数カ月かかるので1時間に1本ずつ公開します。

「メジャー Wii パーフェクトクローザー」との出会い(ソードフィッシュさん/@swordfish4649

 「パーフェクトクローザー」がクソゲーと言われていることは、もともと知っていました。私自身ゲーマーとして自分でプレイしてみて、実際どうなのか判断してみたい気持ちがありました。怖いもの見たさもありましたかね。

 今年(2020年)初め、中古ショップのジャンク品コーナーに厳重なビニール梱包をされた、その場にそぐわないゲームソフトがありました。それがパーフェクトクローザーと私の出会いです。

 ジャンク内容には「臭い」と今までに見たことのない理由が書かれていて、衝撃を受けました。価格はなんと500円。当時の相場は1000円前後だったので破格でした。(余談ですが名だたるクソゲーって、けっこういいお値段がするんですよね。評判の悪さからアーカイブ配信が絶望的で、世に出回っているもの限りなのに対し、一定のマニアから需要があるので)。

 そうして購入したのですが、開封の段階で後悔しました。むせかえるような線香の香りがしたので、1週間ほど野ざらしにすることにしました。記憶と香りがリンクをすることを「プルースト現象」と言うそうなのですが、私の中では「線香=パーフェクトクローザー」と結ばれています。

なぜこのゲームのRTAを始めたのか

 私の持論として「どんなゲームでも、RTAであればそれなりに楽しくなる」という考えがありました。自分の中で目標を立てて、それを達成することは言うまでもなく楽しいですから、そこにゲーム単体の楽しさは関係ないだろうというわけです。

 この作品に関しては「いつかやろうかなあと」いう曖昧な感じだったのですが、別のゲームの配信中に「『パーフェクトクローザー』のRTAやりてぇ」とボソッとつぶやいたところ、視聴していたRTA走者が電波を感じ取り、クソゲーだけを集めたRTAマラソンを開催する、という事態に発展しました。

 持論の正しさを確かめたかったこと、企画の元凶になってしまったことから、このゲームのRTAを走る決意をしました。

 できるだけ早くクリアするために通常プレイでは思いつかないことをする面白さは「パーフェクトクローザー」のRTAでも変わりません。どんな展開になるのか、私が参加した「Kusoge Of The RTA」の流れに即して解説します。

「パーフェクトクローザー」RTAの流れ

 ゲーム冒頭に入団テストの打者と勝負するシーンがあります。普通は打ち取ったり、三振にしたりすると思うのですが、最速なのは、なんとホームランを打たれることです。そのため、ド真ん中に真っすぐを投げるのですが、打たれるかどうかは運。ゲームの開始からガチャを楽しめます(プレイ時間2分40秒ごろ)。


ソードフィッシュさん「ここでホームランを打たれると激アツなんですよねえ」(Kusoge Of The RTA、Twitchの動画より)

 続く「3回を無失点以内で抑えろ」というミッションでは、アメリカが舞台のメジャーであっても日本語力が求められます。つまり「点を取れ」とは言われていないわけですね。

 1回表10失点のタイミングでスタートをするのでついつい点を返したくなりますが、我慢してこちらの攻撃になったらバントでアウトになって撤収します。「こういう場面ではこうするであろう」という固定概念を捨て、柔軟なルートを作ることがこのRTAでも求められます。


ソードフィッシュさん「サクサク進めていきましょう」「バンドが一番早いので」(Kusoge Of The RTA、Twitchの動画より)

 クライマックスは、ベテラン捕手・サンダースの引退試合のミッション。9回表5-5の場面で逆転して、勝利するというもの。

 こちらの攻撃から始まるのですが、とにかくボールが飛びません。基本的に真ん中付近に真っすぐが来る、つまり相手の失投を待ち、ホームランを打つ運ゲーになります。

 さらに打順は先頭打者サンダースから始まるのですが、初球バントで凡退させないとイベントが挟まってタイムロス。つまり、1アウト献上することになります。

 加えて前述の通り、先のミッションにあった攻撃回はバントで凡退しており、ここまでの30分間、単調な作業をしているので目が完全に鈍ってしまっています。その状況でホームランを打つことは難しく、プレイヤーの集中力や反射神経が試されます(プレイ時間30分ごろ)。


RTA後半に入ってようやくバッティングらしいバッティング。なお、このときの記録は45分59秒(Kusoge Of The RTA、Twitchの動画より)

「パーフェクトクローザー」RTAの今

 クソゲーだけのRTA企画「Kusoge Of The RTA」の効果があったのか、世界中のRTA記録をまとめたサイト「speedrun.com」に「パーフェクトクローザー」のページが新設され、走者が去年比で3倍になるということがありました。

 1人→3人。これはすごいことですよ!

 そして、日本の最高学府・東京大学における2020年駒場祭では、東京大学ゲーム研究会でメジャー三部作連続RTAが行われ、「パーフェクトクローザー」も登場しました。

※メジャー三部作:2008年に発売されたマンガ『MAJOR』を原作とするゲーム3種「MAJORDREAM メジャーDS ドリームベースボール」「MAJORDREAM メジャーWii 投げろ!ジャイロボール!!」「メジャー Wii パーフェクトクローザー」。いずれもクソゲーと言われている。

 前述の難所・サンダース引退試合をどう攻略するのかを見ていたら、ホームラン戦法だけでなく、バント戦法も改良していて驚かされました。

 このゲームには「3塁線上にバントを転がすと守備が乱れる」という仕様があります。元から知られてはいたのですが、特定の状況下でそれをやると安定して1点取れ、逆転できることを研究されていましたね。やっぱ東大は違えわ! と思わされました。

 今後の展望としては、日本最大のRTAイベントである「RTA in Japan」にメジャー三部作リレーRTAを持ち込みたいですね!

実際にプレイしたから言える「パーフェクトクローザー」の感想

 さて、実際にプレイしてみての感想ですが「そんなにヒドいかなあ」というのが正直なところですね。

 いきなりフリーズして、Wiiから異音がする洗礼を受けたものの楽しく遊べました。聞いたことろによると、フリーズ→異音のコンボはWiiの中が焼ける(?)という話を聞いたことがあり、危うく焼きWiiになるところだったみたいですよ!

 おすすめなのは対戦モードですね。従来の野球ゲームは球速や変化球の表示があるのですが、それが全くないのです。緩急をつけるボールなのか、高速変化で三振を取るボールなのか、手元で変化してゴロにするボールなのか、球筋で予想することになります。

 また相手がどのような変化球を持っているのかも表示されません。相手の手の内を探る頭脳戦も必要になりますね。公式サイトいわく「追求したのは、本格野球ゲーム」。それがもっとも味わえるモードですので、ぜひ遊んでみてほしいです。

記事完成後の追記:2020年12月11日、「パーフェクトクローザー」に“RTAに有用なバグ”が発見されたとのこと。これにより、ソードフィッシュさんはクリアタイム3分50秒を達成したそうです

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた