新津駅「雪だるま弁当」(1080円)〜駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.21「三新軒」編-3)

毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! 新津駅「雪だるま弁当」です。

» 2020年12月18日 09時00分 公開
[ニッポン放送(1242.com)]
ニッポン放送

【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年2月12日)

駅弁 E653系電車・特急「しらゆき」、信越本線・越後石山〜亀田間
駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁

平成27(2015)年3月の北陸新幹線開業に伴って、新潟〜金沢間の特急「北越」に代わり、新潟〜上越妙高・新井間で運行を始めた特急「しらゆき」。

上越妙高で北陸新幹線「はくたか」に接続する形となって、早くも3月で丸5年となります。

「しらゆき」を雪のなかで…と思い浮かべながら新潟市の郊外を訪れてみましたが、この日も暖冬の影響か、雪のない越後平野をE653系電車が駆け抜けて行きました。

駅弁 三新軒・遠藤龍司社長

特集企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第21弾は、新潟・新津を拠点に駅弁を製造する「株式会社三新軒」の遠藤龍司(えんどう・りゅうじ)社長のインタビューをお届けしています。

社長が懐にしのばせているのは…「三新軒」の名物駅弁「雪だるま弁当」の容器。

この容器、じつは6つのカラーがあるのだそう。

今回は、この「雪だるま弁当」の開発秘話をたっぷりと伺いました。

駅弁 雪だるま弁当

新潟らしさを追求して生まれた駅弁「雪だるま弁当」!

─ 三新軒といえば、「雪だるま弁当」も有名ですね?

平成7(1995)年に発売した「雪だるま弁当」(1080円)は、新潟を訪れて下さったみなさんに「もっと新潟らしさを感じていただける駅弁はないか?」というところから生まれた駅弁です。

当時は「新潟のよさ」についてアンケートを取ると、「食べ物が美味しい」というお声を多くいただいたのですが、新潟は魚も野菜も米も美味しいのが当たり前で、なかなか「新潟らしさ」を打ち出せていませんでした。

─ なぜ、「雪だるま」型の駅弁に…?

アンケートのなかに、新潟らしいものに「雪」を挙げた回答がありました。

ただ、雪を召し上がっていただくわけにもいきません。

もう、どうしようか悩んでしまいました。

そこで当時、日本でいちばん売れるものを作っているところはどこか考え、「トヨタ自動車だ!」と思いついて、工場を見学させていただいたんです。

駅弁 雪だるま弁当

大手自動車メーカーの製造ラインが、新作駅弁開発のヒントに!

─ クルマから「雪だるま」…どう結びついたんですか?

製造ラインから出来上がってくる自動車の形を見て、「丸い」ことに気づいて、質問しました。

すると、「お客様のニーズが丸いものを好む傾向にある」こと、そして、「以前と比べ、プレス技術が向上したことで、丸いものを作りやすくなった」ことを教えて下さいました。

そこで、「これからは丸いものが流行る!」と直感しまして、雪で丸いもの…「雪だるま」を思いついたというわけなんです。

─ 確かにあの雪だるま型容器は、丸くて愛らしいですよね!

最初は平らな「雪だるま」を図面で描いたのですが、これがまったく面白くない。

確かに平面だと重ねることができるので、駅弁を売る上ではいいんです。

一方、立体ですとかさばりますので、販売員はどうしても嫌がる傾向があります。

でも、売り出したところで、売れるかどうかわかりませんから、(お客様のために)少しでも「面白いもの」を売りたいという気持ちが勝りまして、あの「立体」の雪だるまを作りました。

駅弁 雪だるま弁当

ミリ単位の工夫で、お客様が自由に「楽しめる」駅弁容器に!

─ じつは「雪だるま弁当」の容器って、いろいろな表情が楽しめますよね?

形を工夫することで、寝かせることもできれば、立たせることもできる「雪だるま」としました。

顔の形も、30通りくらい考えました。

雪だるまって、眉毛と鼻と口だけなんですけど、全然表情が変わって来るんですよ。

結局、どの表情がいいかわからなくなってしまったので、お客様に決めていただこうとなって、“可動式”の眉毛、鼻、口とすることになりました。

─ あれは、わざと動くようにしていたんですか!

いちばん工夫したのは「目」で、丸い目が動いても丸は丸ですから、全く変化がありません。

でも、回転軸の中心をずらせば、目の位置が変わって表情が変わることに気づきました。

そこで目が数ミリ動くようにできないか交渉しましたが、ピンが折れるため最初はNGでした。

でも、(そこを何とかと頼んで)ギリギリ耐えられるという、1ミリ少々の可動幅を設けました。

だから「雪だるま弁当」の雪だるまの目をよくご覧いただくと、少〜しだけズレてますよ!

駅弁 雪だるま弁当

【おしながき】

  • ご飯(新潟県産)
  • 鶏そぼろ
  • 鶏照り焼き
  • ミートボール
  • 味付け数の子
  • うずらの卵
  • 錦糸玉子
  • かに風味かまぼこ
  • 煮物(椎茸、こんにゃく)
  • 山菜
  • チェリー
駅弁 雪だるま弁当

世代を超えて楽しめる鶏と錦糸玉子のそぼろご飯をベースに、鶏の照り焼きやミートボール、さらに新潟らしく数の子も載った「雪だるま弁当」。

思わず容器に目を奪われてしまいますが、じつは中味も飽きがこない実力派の駅弁です。

うずらの卵とチェリーをどのタイミングでいただくかは、食べる方で好みが分かれそう。

その意味でも、自由な楽しみ方ができる「雪だるま弁当」です。

容器は30万円相当貯められる貯金箱に!?

─ 「雪だるま」の容器は、貯金箱にもなるんですよね?

ここまでこだわって作った「雪だるま」でしたので、とにかく捨てられるのがイヤでした。

当時500円玉貯金などが流行っていたので、「貯金箱」にしようとなったんです。

「雪だるま弁当」の容器を厚く作っているのは、500円玉に耐えられるようにするためです。

じつは取引銀行にも足を運びまして、どのくらいの500円玉が入るか試してもらったところ、600枚の500円玉…つまり30万円相当が入ることがわかりました。

駅弁 鉄弁

─ 「雪だるま弁当」のカラーは何種類あるんですか?

全6種類で、色の個数やどの色を使うかは、すべて調理場の方にお任せしています。

「思いついたら、色の雪だるまを入れて下さい」ということで、これを“徹底”しています。

ですので、調理場の方のその日の気分次第で、色の雪だるまが混じることがあります。

なお、「黒の雪だるま」は、駅での販売は行っておらず、鉄道のまち・新津にちなんだ「鉄弁」という弁当として、イベントのときや、事前にご予約いただいた方のみに販売しています。

(三新軒・遠藤龍司社長インタビュー、つづく)

駅弁 E653系電車・特急「しらゆき」、信越本線・さつき野〜荻川間

駅弁は鉄道の一部ではありますが、鉄道の世界に凝り固まらず、自動車の形状にヒントを得て開発された、三新軒の「雪だるま弁当」。

今年(2020年)で発売から25年を迎え、すっかりロングセラーの域に入ってきました。

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第21弾・三新軒編、遠藤社長のインタビュー、次回は駅弁作りのこだわりなどを伺っていきます。

連載情報

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ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史

昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。

駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/



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