「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/:破/:Q」を振り返る 「シン・エヴァ」公開まで泣いても笑ってもあと2週間(2/3 ページ)

» 2021年01月09日 19時30分 公開
[将来の終わりねとらぼ]
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 新規キャラクターの真希波・マリ・イラストリアスがどのような過去を持つ存在か作中でほぼ語られないが、彼女の登場はトラック25〜26(テレビシリーズ・旧劇場版のラスト2話を示唆する)を繰り返していたシンジのカセットプレイヤーを、文字通り「トラック・27」へと進める。

 作中にはさらに不穏、もしくは次回への試金石となる展開が連続する。旧劇場版「まごころを、君に」の「Komm,susser Tod」を直球に思い出させる「翼をください」、ゲンドウの象徴である捨てたはずのS-DAT。テレビシリーズからのさらなる逸脱を思わせる次回予告を経て、「:Q」の公開までには3年半の時間が経過することになる。


「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(2012年)

 我々が3年半待っている間に、作中では14年の月日が経過していた。碇シンジは封印されていた宇宙空間から初号機と共に回収され、その後は作中を通し徹底して無力感を味合わされることになる。描かれなかった作中期間に起こったとされる「ニア・サードインパクト」により世界は壊滅し、物語はゲンドウ率いるネルフと葛城ミサトを艦長とするヴィレの対立を軸とする。

ダイジェスト これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』


 会話には作中のみで通用する専門用語が飛び交い、視聴者とシンジは蚊帳の外に追いやられる。誰ひとり事態の明確な説明を行わず、唯一親身になってくれる渚カヲルはいつも通り何を言っているのかよく分からない。そして何より、「破」で美徳とした強い意志による行動が全て裏目に出続けるという、非情なほどの不親切によって観客を突き放す作品となっている。

 事前情報を極力絞るのは「:序」「:破」からの常であるが、「:破」エンドパートにあった次回予告のカットが何ひとつ登場しない本編に対する困惑。右を見れば「こんなものを見たかったわけではない」というショックの声や、「この理不尽さこそがエヴァである」というマウント合戦。左を見れば震災を契機に物語の舵を大きく変えたとされる真偽不明の情報※。

※雑誌『Cut』2011年9月号のインタビューで宮崎駿は「ほんとに震災のあとね、堂々巡りが続いて。庵野も堂々巡りしてるんですよ。『ヱヴァンゲリヲン』の最終話を巡って。とてもよくわかるんですよ。だけど、傷を舐め合ったってしょうがないんでね」と語っている。


 こうした眉唾ものの考察と庵野に対する罵声が入り乱れる事態を起こしたのは、ひとえにこの「物語をどう受け止めればいいのか分からない」という混乱だろう。

 しかし、もう物語は動いてしまった。次回作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は昨夏公開された冒頭10分「AVANT1」により、「:Q」以後の物語であることが確認できている。

 第1作の「:序」から14年、直近作の「:Q」からも8年以上が経過した現在。月日を経てテレビシリーズから既に完全に離れた新劇場版についていくには、間違いなく「:Q」の再視聴が欠かせない。大方の予想通り、多くの謎や作中用語の意味は明かされないままになるだろう。しかしテレビシリーズでさえ、多くの謎と設定の解明は旧劇場版公開から6年後に発売されたゲーム「新世紀エヴァンゲリオン2」によったのだ。


 ひとつ言えることは、エヴァは「待つコンテンツ」であり、多くの観客は怒り諦めながらも、内心でそれを理解している。その時間が間もなく終わると考えると、ただ感慨深く、同時にとても怖い。

 泣いても笑っても残り2週間。それが過ぎたら、もう待つことはできない。

将来の終わり


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