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» 2021年03月08日 22時50分 公開

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ネタバレなしレビュー 「シン・エヴァ」の「エヴァ」らしさ(1/3 ページ)

ついにその姿を現した「シン・エヴァ」。

[将来の終わり,ねとらぼ]

 「エヴァンゲリオン」史上、最も分かりやすく、飲み込みやすい作品なのではないか――。これが本作を見終わってすぐの、嘘偽りない印象だ。

※以下、ネタバレに最大限配慮したレビューとなるが、まっさらな状態で見たい人はいますぐブラウザを閉じてインターネットから退避してください。


 2度の延期を経て、先日ついに公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。公開10日前に突如公開日が発表され、しかも封切りが月曜日という異例の事態。プロモーションを十分に行うことも難しかっただろう中、争奪戦となった大手シネコンのIMAXシアター分は即時の完売。あらためて根強い人気と期待を示した結果となった。

9日追記:※初掲載時、作品タイトルを「シン・エヴァンゲリオン新劇場版」と誤っていました。お詫びして訂正致します

 本作はこれまでのシリーズ通り、設定を全て明かしているわけではない。そしてもちろん、解釈の余地を残す謎をいくつも残し終劇した。だが総評としてとても理解しやすく、かつ楽しみやすく作られている。ではそれはなぜか? と考えることとなった。そしてそれはそもそも、「エヴァ」においての「面白さ」はどこにあるのか? と考えることと同義だ。


「:破」が受け入れられた理由

 これまでのシリーズのうち、「楽しめる作品」として、最も多くの観客に受け入れられたのは間違いなく「:破」になるだろう。それに対し前作「:Q」が賛否両論となったのにはいくつかの理由があるだろうが、ざっくり2点に分けてみたい。それは「:破」が、これまでのエヴァンゲリオンに対するイメージを最大限利用した作品であるという点。そして観客に物語・または解釈の余地ある難解さを提示するうえで、説明のラインをしっかりと引けていたという点である。

 まずは一点目。「:破」はいくつかの設定の差異を除き、ストーリーラインに加えてキャラクターの表情の基礎までテレビシリーズ版と似たものが見られた「:序」に対し、新キャラクター・マリの投入に加えて綾波・アスカの変化を演出することで、これまでの「エヴァンゲリオンらしさ」を徐々に逸脱。最後には碇シンジが自らの意志でそれを破壊・乗り越える姿を見せることで、より強い満足感を与えるつくりになっている。10数年間を通して浸透してきた碇シンジというキャラクターの内面が、確かに変わったと思える作品であったことが作品の高い評価につながっていることに疑いはない。

 ここで注目しておきたいのは、それでも「エヴァ」が持っていたその難解さを切り捨てたわけではない、ということだ。象徴的なところでは、綾波を救うために初号機が疑似シン化第2形態に入った際の赤木リツコのセリフは相変わらず理解させる気がないそれである。しかし「ネブカドネザルの鍵」や「バチカン条約」といった衒学的な専門用語はシナリオの中核には置かれず、今は理解できなくても良いものとしてスマートに処理。そして「本拠地を狙う使徒の殲滅」という前作共通のプロットにより、各シーンの勝利条件は明確であるため、ストーリーラインを追う限りに引っ掛かりはない。

「:Q」と「:破」の差異

 では「:Q」ではこの2点においてどう処理していたか。舞台が14年後と大きく飛ぶ同作では、観客は前作のように「これまでのエヴァのストーリー」という比較対象を持つことができない。加えて主要キャラクターの性格が一変し、皆が皆心を閉じているかのごとく碇シンジにつらく当たる。その理由は明らかにされず、魅力であった専門用語も成立していないコミュニケーションの端々から聞こえてくるのみで、その単語が大事であるかも判別不能。

 さらには目標とされた槍を利用した世界の再構築も失敗し、唯一のよりどころである渚カヲルは旧世紀版と同様に死んでしまう。以前の満足を、そしてコミュニケーションそのものを否定するかのように受け止められかねないシナリオは、万人に受け入れられたとはいえなかった。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

 今作、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」では、このバランスに対する方針が大いに転換されている。

 まず、事前公開されていた冒頭のパリ奪還作戦について触れたい。上映早々に開始される同作戦では、「ここが元ネルフ・ユーロ支部であり」「目的はヴィレによる前回の戦いで破損したヱヴァ修復パーツの回収」「それを阻止するのは冬月、すなわちネルフ」であるとセリフ上ではっきりと明示される。「:Q」冒頭のUS作戦、大気圏外でアスカが何を“強奪”しており、“パターン青の何”と戦っていたのか非常に分かりづらかった点と比較するとその差は歴然だ。

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