「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ネタバレなしレビュー 「シン・エヴァ」の「エヴァ」らしさ(2/3 ページ)
物語中盤以後でもヴィレとネルフによる攻防が繰り広げられるが、そのたびに「作戦の目的」「勝利条件」「勝利によって何を得るか、敗北で何を失うか」が多少くどいくらいに明示される。これにより上映時間155分のうち、エヴァが立ち回りを開始する後半パートは目的不明となることなく進行していく。専門用語はもちろん飛び交うものの、急に現れたそれが大勢に寄与することは基本的にない。
確かにアニメーション表現としてはアクションシーン(特に予告でも見られたCGI)に対する不満や使用楽曲のアンマッチがないわけではないが、ストーリーラインは明確であり、肩透かしの横槍が入ることもない。
そして「これまでのエヴァンゲリオン」に対するイメージの利用については、作品に既に触れた方にとっては既に自明だろう。シンジ・アスカ・アヤナミレイ(仮称)が放浪の末に行き着いた先で、誰と出会い、何を得たのかはぜひ劇場で確かめてほしい。そして最も注目すべき点として、ミサト・シンジ・そしてゲンドウの対峙は、旧世紀版と比較し大きく踏み込んだものとなっている。
キャラクターが内面を吐露し、後悔し、自省し、苦しむ。本作でも行われるこれらの行為は、もちろんテレビシリーズ最終2話の直接的なアップデートであり、より今の視聴者に伝わりやすいかたちに置き換えられている。シンジがこれまでの作品で超えられなかった点を、これまでの旅から得たもので乗り越えていく様には、強く心を動かされてしまう。そしてそこでの表現手法も最後まで、どうしようもなく「エヴァ」らしくあってくれたことを、非常にうれしく思う。
「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」。碇シンジが発するそれは、必ずしも作中の「エヴァンゲリオン」そのものに対するセリフではないことは明らかだ。これまでのテレビシリーズ版、旧劇場版、貞本義行版、そしてそれらに触れてきた受け手たちの記憶と経験に対し、庵野秀明はできうる限りのサービスで応えてくれたように思う。楽しめたかどうかは分からない。今後見返す中で、自分の中での評価が変わる日がくるかもしれない。それでもまずは感謝したい。
再度、そしてしっかりとエヴァンゲリオンを、納得できる形で完結させてくれたことに。
(将来の終わり)
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