同人誌即売会に「駅のきっぷ売り場」が出現!? 良い意味で「本売るってレベルじゃねーぞ」と話題のサークルに話を聞いた(1/2 ページ)
好きなものへの情熱と作ったモノに対する自信があるからこそ。
先日開催された同人誌即売会に、本物のような駅の「きっぷ売り場」を再現したブースが現れ注目を集めています。これぞ好きを極めたオタクの本気。
同人イベント会場とは思えないほど、懐かしい駅の雰囲気が漂う頒布スペース。アクリル板で作られた“窓口風”仕切りの奥には、つり銭機や硬券(きっぷ)棚が並びます。あまりに凝った飾り付けは、ブースの内にいる人が係員に見えてくるほど。
こちらは「交通法規研究会」(@trrc_editorship)が、東京・神田で11月3日に開催された「おもしろ同人誌バザール11」に出展したときの様子。その日訪れた参加者がTwitterに動画を投稿したことで、「レベルが高すぎる」「素晴らしい」と話題になりました。
またグッズ販売のような形で「硬券」の発券も行っており、係員が切り込みを入れる「入鋏(にゅうきょう)」も再現。その光景は動画で公開されています。実物をみたことがない世代にとっては貴重な経験……!
交通法規研究会は、社会科学の要素から公共交通を研究している団体で、「マルス券(※旅客販売総合システム・MARSで発券されたきっぷ)」を取り上げた書籍『熱転写方式 マルス端末券総集』(vol.1〜4)などを発行しています。
同サークルによれば、「きっぷ売り場」風ブースを設置した理由は大きくふたつあります。
第一に、「きっぷとは何か」を身をもって理解するため。当時の文化を正確に伝えるべく、実際に硬券を販売することで、体験に基づく知識や雑学を深めようと考えたそうです。
第二に、一般の方にも興味を持ってもらうため。専門性の高い同人誌を手に取ってもらうきっかけ作りとして、ブースの装飾をコミュニケーションツール代わりに用いているといいます。
こうした目的意識から硬券の内製化を進め、およそ1年強で量産が可能に。頒布している硬券のほとんどは、所有している活版印刷機で印刷したもので、用紙も乗車券印刷会社から仕入れた本物を使っているそうです。追求心がすごすぎる……。
気になる装飾アイテムについても話を聞きました。ビジュアル面で大きな役割を果たしている「昔の出札窓口を模したアクリルパネル」は、アフターコロナを見据えて作成したもの。特注品の丸い穴の開いた“ビデオフォン”付きパーティションで、販売条件等にマッチした図案を作成し、それをもとに専門の業者に依頼して完成しました。
その他、硬券を差してある「乗車券ケース」や「釣銭機(キャッシャー)」は、実際の駅業務で使われていた廃品が大半を占めています。中にはヤフオクや古物商から直接買い付けたものも。
他ブースと比べて装飾が大掛かりなだけに、やはり設営は苦労を伴う様子。保管場所からどのように輸送するか、時間を掛けて計画するそうです。さらに、硬券の売上管理は枚数と券番号を精査する必要があり、かなり時間をとられるといいます。
イベントの混雑状況次第で「平均45秒に1人接客をしなければならない場合」もあるため、売り場の整備も重要に。なお、規模が大きい即売会では窓口パネルの設置を控えるそうですが、その代わりとばかりに硬券のオーダーが次々飛んでくるのだとか。コロナ禍以前の発券数の実績は1日1000枚前後とのこと。ほとんど駅員さんでは……?
常識を覆すブースの裏側には、これまた想像を超える努力と愛が広がっているのですね。最後に来場者の反応を訪ねました。
交通法規研究会 まず皆さま驚かれます。そのあと、お褒めの言葉をちょうだいしたり、物品類をどこから調達したかを聞かれることが多いです。
最初は硬券だけ購入される方が多いのですが、そのうち書籍も気になりだして、回を重ねるたびに書籍の購入数量が増えてゆく方がたびたび見受けられます。
書籍についてもお褒めいただけたり、またご指摘をちょうだいすることもございます。ただ皆さま総じて、弊会の教育水準の高さについてお褒めをいただいております。
ネット上で「これは興味が湧く」「行きたい!」「ここで本を買う体験も含めて欲しい」なんて声が上がった、きっぷ売り場のような販売ブース。ただ面白いというだけでなく、同好の士を増やす、ステキなアイデアでした。
画像提供:交通法規研究会(@trrc_editorship)さん
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