作り手の“鋼の意志”をたたえたい 「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」レビュー(1/3 ページ)

(たぶん)誰もスタッフとキャストに諦めろなんて言わなかった。

» 2022年06月25日 17時00分 公開
[ヒナタカねとらぼ]

 まずはスタッフとキャストに「お疲れ様です」と、ねぎらいの言葉をかけたい。皮肉なしで、努力が報われてほしいと心から願う。何がって、6月24日より上映されている「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」のことである。

作り手の鋼の意志を皮肉なしに讃えたい「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」レビュー 5月10日(金)「復讐者スカー」/6月24日(金)「最後の錬成」完結編二部作連続公開!!! (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

 何しろ、2017年公開の1作目はビジュアルの発表時点から炎上し、公開後も本編が酷評のオンパレードだった。だが、誰もが続編はないと思っていたはずの完結編の第1部「復讐者スカー」は、多くの観客から「意外と良かった」「悪くない」などと好意的に評されており、筆者も1作目の反省点を生かしてより良いものを作るため、無謀な企画に全力で挑んだ作り手の熱意を大いに感じたので、掛け値なしに支持したくなった。

 そして今回の完結編の第2部「最後の錬成」を実際に鑑賞したところ、これはいい……いいじゃないか! と、一切の忖度なしに思えた。もちろん気になるところがないとは言わない(いや正直大いにある)が、原作のクライマックスを全力かつ誠実に描ききるという、作り手の熱意と愛情がスクリーンから伝わってきたし、作品としては若干の切なさも覚えつつも素直に「面白かった!」と思えたのだ。その具体的な理由を記していこう。

※以下、本編の核心的なネタバレは避けていますが、ごく一部の展開に触れています。

映画「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成」30秒予告(コメント編)

「1人4役」の内野聖陽を筆頭とする俳優陣の輝き

 今回の「最後の錬成」のMVPは、内野聖陽ではないだろうか。第1部の「復讐者スカー」でも佇まいやしゃべり方が原作のイメージにピッタリだと称賛を浴びていたが、今回はメインキャラクターとしてラストバトルに参加しており、さらには「ヴァン・ホーエンハイム」と「お父様」の1人2役を演じていて、しかも「フラスコの中の小人」の声も務めており、さらにはお父様から変化した黒い生命体のCGも内野聖陽の動きをベースにしているという。実質「1人4役」なのだ。

作り手の鋼の意志を皮肉なしに讃えたい「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」レビュー 原作からそのまま飛び出してきたかのような内野聖陽のヴァン・ホーエンハイム (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

作り手の鋼の意志を皮肉なしに讃えたい「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」レビュー 内野聖陽のお父様は本気で怖い (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

 少しとぼけたところがあり、息子のエドからは憎しみに近い怒りもぶつけられたりもするが、抱えている複雑な内面を少しずつ、時には大胆に見せていくホーエンハイム。それと相対する、底知れぬ闇と恐ろしさを伺わせるお父様。言われなければ内野聖陽だと気付けないほどの「無邪気さ」こそが怖くなるフラスコの中の小人の声と、あらゆる方面での内野聖陽という俳優のすごさを思い知らされた。まずは、彼のファンは必見と言っていい。

映画「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」30秒予告(対談編)

 他にも1人2役を演じた俳優がいる。同じく「復讐者スカー」から続投している渡邊圭祐だ。今回の彼は、グリードというホムンクルス、いわば怪物に身体を乗っ取られそうになる役柄を熱演している。ひょうひょうとしながらも確かな信念を持つリンと、不敵で粗暴なグリードという全く違うキャラクターを演技力そのもので表現する様にも感動があった。

 さらなる注目は、「復讐者スカー」には登場していなかった、オリヴィエ・ミラ・アームストロング役の栗山千明。その鋭い眼光や攻撃的なキャラクターは「バトル・ロワイアル」や「キル・ビル Vol.1」の頃の彼女をほうふつとさせながらも、成熟した大人としての威厳をも見せつけており、その近寄り難さも含め、有り体に言ってカッコ良よくて惚れ惚れとできる。一挙一動が原作のイメージそのままでもあり、「いちばん好きなタイプの栗山千明がそのままアームストロング少将に重なる」様には感動すらあった。

作り手の鋼の意志を皮肉なしに讃えたい「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」レビュー アームストロング少将役の栗山千明が、その弟を演じる山本耕史とどう絡むのかにも注目だ (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」