広島・三原の老舗駅弁店が、お米1粒1粒に込める愛情とは:三原「春彩すき焼き弁当」(1250円)(2/3 ページ)
鯛の駅弁文化を復活させタイ!
―「元祖珍辨たこめし」をはじめ、瀬戸内の駅弁は魚介類が基本ですが、近年は価格の高騰で大変ですね?
赤枝:たこはすっかり高級魚となってしまいました。駅弁としてお求めいただく価格帯では、まず地元産を使うことはできません。一方、浜吉には戦前から戦後にかけて、鞆の浦の名物にちなんだ「鯛の浜焼き」がありました。もともとは、都ホテルの列車食堂から、依頼を受けたもので、山陽本線の優等列車の車内で予約を受け付けて、浜吉に連絡が入り、糸崎で列車に積み込んでいました。
―そういえば昔、「鯛の浜焼弁当」という駅弁がありましたね!
赤枝:「鯛の浜焼」は、とても美味しくご好評をいただいていましたので、私が経営に関わるようになって、新たに駅弁として「鯛の浜焼弁当」を出したんです。ただ、鯛の駅弁は、いろいろな工夫を試みてみるのですが、いまの時代は、なかなかお客様に響かないんです。味わいも淡白で、(魚の)匂いが気になるお客様も多いんですね。でも、鞆の浦といえば、「鯛」ですので、またいつか、鯛の駅弁を出したいとは考えています。
浜吉こだわり、オーダーメイドの「玉子焼き」!
―昔、糸崎に住んでいたというラジオ番組のパーソナリティも絶賛していたのが、浜吉の「錦糸玉子(玉子焼き)」なんですが、改めていただくと、本当にユニークですよね?
赤枝:「元祖珍辨たこめし」などに使っている錦糸玉子は、昔から自社生産していました。もちろん、だし巻き玉子も自社で焼いていたんです。でも、いまは、安全基準が高くなってしまったため、専門の業者さんに製造を委託し、オーダーメイドで焼いてもらっています。おかげで、いまもたこめしなどでは、焼き目が入った少し太めの、昔ながらの錦糸玉子を実現しています。ふつうの玉子焼きは、レシピをお渡しして地元の業者に委託しています。
―調味料をはじめ、ご当地性へのこだわりは?
赤枝:調味料のこだわりは、やっぱり出汁ですね。出汁の舌ざわりだと思います。備後のご当地性のある駅弁としては、三原ゆかりのたこめしはもちろんですが、福山に進出したときに開発した「松茸すき焼き弁当」もその1つですね。牛肉には、広島・なかやま牧場の「なかやま牛」を使っています。松茸シーズンではない春は、「春彩すき焼き弁当」として、販売しています。現在のお客様の好みは、どうしても肉駅弁が主力なんですよね。
毎月29日は「肉の日」だけに、肉駅弁を選びたいという方もいるかも知れません。例年、12月〜6月までの間、浜吉の牛肉駅弁は、「春彩すき焼き弁当」(1250円)となります。その意味では、今年(2022年)のうちに「春彩すき焼き弁当」をいただくことができるのは、きょう(6月29日)・明日の2日間を逃すと、次は年末の12月となります。今年上半期の牛肉駅弁の食べ納めには、ちょうどいいチョイスかもしれませんね。
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