宮野真守、最近は「混乱しています」 多忙でも多様なキャラを演じこなす原動力 「シャザム!〜神々の怒り〜」インタビュー(1/2 ページ)
宮野さんが持つ6つのスーパーパワーについても聞きました。
映画「シャザム!〜神々の怒り〜」が3月17日から公開。見た目はオトナ、中身はコドモという異色のヒーローをザッカリー・リーヴァイが演じ、日本語吹替版では宮野真守さんがこの役を担当しています。
第1作「シャザム!」は、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンらと世界感を同じくするDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の7作目として2019年に公開。偶然からヒーローに選ばれてしまった少年ビリーが、強大な力に振り回されながら強敵へ立ち向かうコミカルなストーリーは、比較的シリアスなトーンが多かったこれまでのDCEU作品とは一線を画し、公開から早々に続編が決定するヒット作となりました。
ねとらぼでは、続編となる「シャザム!〜神々の怒り〜」でヒーローになったオトナビリーを演じる宮野さんにインタビュー。暗い過去を持つイケメンキャラから、ぶっ飛んだ変人までモノにするギャップマスターだけに、マッチョなイケメンの見た目に未成熟なティーンの心を持つビリーは適役かと思えます。声優・歌手だけでなく、舞台にドラマ、バラエティー番組と各所で引っ張りだこな多忙ぶりに最近は「混乱している」と苦笑い。作品の魅力や役作りだけでなく、ぎっちり詰まったスケジュールと多様なキャラクターにうまく付き合うコツを聞きました。
敵は1人→3人、ヒーローは1人→6人に! パワーアップして帰ってきた「シャザム!」
―― まずは試写をご覧になった感想からお聞かせください。
宮野真守(以下、宮野) 単純に面白くて笑い声をこらえるのが大変でした。ちょうど一緒の回で見ていた音響監督さんからも「いやー、いいね」ってあらためて褒められてすごくうれしかったです。
―― 宮野さん的な見どころとか、好きなシーンをネタバレにならない範囲でお聞きしたいです。
宮野 神々との戦いということで、バトルアクションのスケールが非常に大きくなっていて圧巻の一言です。映像美や迫力ある場面は、絶対に映画館で見てほしい。
ヒーローって、絶対的な力で敵に立ち向かい、ぶつかり合っていくことを想像されると思うんですけど、「シャザム」の場合はそうではなくて、見た目は大人、中身は半人前のコドモという設定が非常に面白いフックになっています。時にはおじけづいたり、だまし討ちしてみようとしたり、強大な敵に何とか頑張って立ち向かっていく様がコミカルで、笑えるポイントになってくる。
未熟だからこそ正攻法ではないアプローチになってくる。彼らは子どもなりに街の平和を守ろうとしている。たとえ誰にも認められなくても。ビリーの場合は、自分の複雑な家庭状況もあって仲間や兄弟、ファミリーとのつながりに強いこだわりがあり、そこへ一生懸命になり過ぎてうまくいかなかったりすれ違ってしまったりする。バトルシーンだけじゃなくて、そんな心のぶつかり合いも描かれているのがこの作品の特徴かなと。
―― 前作と比べてヴィランが3人に増え、ヒーローチームも6人に。単純に数が多くなっていることに加え、パワーアップしたと感じるポイントはありましたか?
宮野 前作は公開当時に見ました。仰っていただいたような敵や戦いのスケールもですが、まずビリーがヒーローとしてスタートするので心持ちが違う。前作のビリーは「スーパーパワーが手に入って楽しい!」という状態から始まった。今回はこの街のためにどうすればいいか、家族のためにどうすればいいか。ヒーローとして考えるようになりました。ヒーローの心構えが原因でうまくいかないという筋のコメディー要素もあり、笑いの種類も前回から変わってきている気がする。それが変化でもあり、作品の面白さ、ポイントだと思いますね。
「混乱しています」 多様な役を演じ、多忙なスケジュールの中でも変わらない宮野真守の根っこ
―― 今回、演じているシャザムは、見た目は大人で中身は子どもというギャップが持ち味の役柄。宮野さんも明るいキャラから正統派イケメン、闇落ちキャラまで幅広い役柄を演じていらっしゃいますが、どうスイッチを切り替えているのでしょうか?
宮野 最近は混乱しています。混乱したまま現場に行って、現場がスイッチを入れてくれるような感覚があります(笑)。もちろん現場ごとに準備することが違うのでしっかり備えていく。でも演出家や、ディレクター、監督それぞれから求められるものにフィットさせていく中で初めて見えてくるものもあります。だから逆に、ニュートラルでいいのかなとも思うんです。自分でスイッチをカチカチカチカチ入れ替えるよりも、現場で入れてもらう。
―― ドラマ、バラエティー番組と活躍の場がどんどん増えていますからね。あまりの多忙ぶりに“宮野真守は複数いる説”が頭に浮かぶくらいなのですが、実際どうこなしているのでしょうか。もはや宮野さんにもスーパーパワーがあるのでは?
宮野 ありがとうございます。混乱しているといっても、自分の根本はそんなに変わらず“自分の体で何ができるのか”。高校時代から取り組んでいたらしくて当時の友達に「昔とやってること変わんないね」と言われました。当時からステージに立って歌って踊って、ちょっと面白いことをやってみたり、自主制作のお芝居で映像を作ったり。根っから自分の体で表現する行為が好きなんでしょうね。
だから違和感はそんなにないけれど、現場ごとに求められることが違うからやっぱり混乱はするんです。声優の現場だけを取ってみても、監督によって全然求めるものが違うし。でも根本には変わらない「好き」「やりたい」という気持ちがあって、表現にずっとチャレンジしてきた積み重ねがあるから、だからできるのかな。
―― 身体的に、単純に忙しさから「しんどい」と感じることもあるのでしょうか?
宮野 そうですね……。でも「やりたい」が真っ先に浮かぶんですよね。バラエティー番組でこうやりたい、舞台に立ったらこうやりたい、いろいろ浮かぶ。自分自身の欲求にスキルがまだ足りず、できないこともあるくらいです。
―― 話を戻して今回の役作りはどうでしょう。素の宮野さんに近い、明るさや面白さが持ち味のキャラクターではないかと感じましたが。
宮野 でも、少年を演じるのに難しさはあります。僕はどんどん大人になってきて、いろんな活動を通じて経験値が増し、考え方も広がって方法論も身に付けてきました。昔からお世話になっている音響監督さんは「経験値をなくす作業が大切だ」と。「今は大人としてしゃべってしまっているから、ちゃんと10代の気持ちに戻って」「その時の気持ちで考えてしゃべらないと本当じゃないよね」と言われています。
大人になればなるほど、経験値をなくして子どもを演じることがどんどん難しくなっていく。でも過去に子どもとして経験した感情や記憶はあるので、諦めてはいけないと思っています。できないわけじゃないので、できないと思ってはいけない。
ちゃんと筋道を追って「じゃあビリーはどう考えているんだろう」と役の心情を大事にしつつ、「ザッカリーさんはどう表現しているんだろう」と演者に合わせてアフレコしていく。吹き替えの現場ならではの向かい方もありました。
―― 今回は正義のヒーロー役ということで、特に気を付けたポイントはありますか?
宮野 僕もいろんなヒーローを演じてきたけれど、ヒーローの在り方、ヒーロー像っていろいろある中で、どのヒーローにも目的があるんですよ。スーパーパワーもだけど、まず目的がある。シャザムの場合なら、先ほどお話ししたファミリーとのつながり、街の人たちとのつながりや、そこからくる正義感を大事に演じました。まだ成熟していない正義感というか、時には逃げ出したくなるようなことがあっても立ち向かおうとする。何のために? それは家族のために、街のためにみたいな。
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