備蓄は「好きなもの」「普段から食べたくなるもの」が大事―― 防災食の専門家に「ローリングストック」のコツを聞いた(1/3 ページ)
日本災害食学会災害食専門員の今泉マユ子さんに話を聞きました。
8〜9月の台風シーズンも間近に控え、災害対策を見直しておきたいこのごろ。そこで、比較的手軽に実行できる備蓄方法「ローリングストック」のコツを、防災食アドバイザーに聞きました。
ローリングストックとは、普段使いの食料品や衛生用品などを少し多めに購入しておき、日常で消費したらその分だけ買い足す備蓄方法。常に備蓄品を新品に保てるうえ、災害時も普段とあまり変わらない食事をとれるメリットがあります。
その中でキーワードになるのが「フェーズフリー」。「日常」と「非常時」という2つのフェーズをフリーにするという意味で、日常で使っている身の回りの物や食べ物を非常時にも活用して、日常にも、もしもの時にも役立てることができるという考え方です。
あまり「有事に備えよう」と構えなくとも実行できる点は手軽ですが、食品には保存の向き不向きがありますし、置ける場所にも限りがありますから、何をどれだけ蓄えるべきかは悩ましいところ。ねとらぼ編集部は防災食アドバイザーの今泉マユ子さんに、おすすめなどを聞きました。
今泉マユ子さんプロフィール
株式会社オフィスRM代表取締役 管理栄養士・防災士・災害食専門員
1969年徳島市生まれ。横浜市在住。1男1女の母。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、2014年に管理栄養士の会社を起業。レシピ開発を行い、防災食アドバイザーとして全国で400以上講演を行う。
東京消防庁から拝受された感謝状は6枚になる。著書は『SDGsクッキング』『もしもごはん』『防災教室』シリーズなど22冊。
今泉さんによるローリングストックの3つのコツ
3つの「見える化」でわかりやすい管理を:ローリングストックを無理なく続けるためのポイントは “見える化 ”することです。「備蓄場所」、「賞味期限」、「食べ方」の3つを意識して備えましょう。
- 「家族に見える化」(備蓄場所の見える化):備えるもの、場所などは家族と共有することが大切です。せっかく備蓄していても、自分だけが把握しているだけでは、家族を守ることができません。
- 「食べ方の見える化」:もし災害が起きた時「食べ方がわからない」「口にあわない」では意味がないので、普段から食べ慣れているものを選んで備蓄しましょう。
- 「賞味期限の見える化」:賞味期限が一目でわかるようマジックなどで大きく記入するのがおすすめ。さらに古いものから取り出しやすいように収納しましょう。
―― まず、食品は何日分ストックすればいいか、目安を教えてください
今泉 農林水産省が推奨する食品備蓄は、災害対策として最低3日〜1週間分、感染症の備えでは2週間分とされています。高齢者や乳幼児、アレルギーなど疾患のあるかたへの配慮も忘れずに。
あわせて、水は飲料用に1人1日あたり3リットルを3日分、できれば7日分を備えましょう。水の蓄えが心もとないと「少しずつ飲もう」という心理から、脱水症状を起こす危険性があります。また、カセットコンロとカセットガスボンベは、電気やガスが復旧するまでの必需品です。調理はもちろん、お湯を沸かすことで、蒸しタオルを作ったり暖を取ったりできます。
―― ローリングストックに適した食品を教えてください
今泉 健康を守るうえで、災害時でも栄養が偏らないよう、バランスよく食べることが大切です。米やパンで「糖質・脂質」を、缶詰やレトルト食品で「たんぱく質」を、野菜ジュースや乾燥野菜で「ビタミン・ミネラル・食物繊維」をと、この3要素を意識して蓄えましょう。
ただ、「何を買っておけばいいか」に正解はありません。どれだけ備蓄に適した食材であっても、好みの味でなかったり、上手に調理できなかったりすれば、そのご家庭におすすめの備蓄食材とはいえないからです。
ですから、非常時用に購入するのではなく、自分の好きなもの、普段から食べたくなるものを選んで家に置いておくことが重要です。また、いろいろな種類が家にあると、「選ぶ楽しさ」もあります。
「これを食べなければならない」「これしかない」で食べるより、「どれを食べよう」と選ぶことで前向きになり、心を豊かにしてくれます。災害が起きたあとに食べる食事は、決して我慢して食べるものではありません。「おいしい」と思ったものを食べることができると、ほっと安心できます。好きなものが家にあると「あれが食べられる!」と、少しは気持ちも落ち着きます。食べたくなるものを選ぶことが大事です。
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