備蓄は「好きなもの」「普段から食べたくなるもの」が大事―― 防災食の専門家に「ローリングストック」のコツを聞いた(1/3 ページ)

日本災害食学会災害食専門員の今泉マユ子さんに話を聞きました。

» 2023年08月05日 11時30分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 8〜9月の台風シーズンも間近に控え、災害対策を見直しておきたいこのごろ。そこで、比較的手軽に実行できる備蓄方法「ローリングストック」のコツを、防災食アドバイザーに聞きました。

ローリングストック ローリングストックのポイントは?

 ローリングストックとは、普段使いの食料品や衛生用品などを少し多めに購入しておき、日常で消費したらその分だけ買い足す備蓄方法。常に備蓄品を新品に保てるうえ、災害時も普段とあまり変わらない食事をとれるメリットがあります。

 その中でキーワードになるのが「フェーズフリー」。「日常」と「非常時」という2つのフェーズをフリーにするという意味で、日常で使っている身の回りの物や食べ物を非常時にも活用して、日常にも、もしもの時にも役立てることができるという考え方です。

 あまり「有事に備えよう」と構えなくとも実行できる点は手軽ですが、食品には保存の向き不向きがありますし、置ける場所にも限りがありますから、何をどれだけ蓄えるべきかは悩ましいところ。ねとらぼ編集部は防災食アドバイザーの今泉マユ子さんに、おすすめなどを聞きました。

今泉マユ子さんプロフィール

今泉マユ子さん 日本災害食学会災害食専門員の今泉マユ子さん

株式会社オフィスRM代表取締役 管理栄養士・防災士・災害食専門員
1969年徳島市生まれ。横浜市在住。1男1女の母。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、2014年に管理栄養士の会社を起業。レシピ開発を行い、防災食アドバイザーとして全国で400以上講演を行う。
東京消防庁から拝受された感謝状は6枚になる。著書は『SDGsクッキング』『もしもごはん』『防災教室』シリーズなど22冊。

公式サイト


今泉さんによるローリングストックの3つのコツ

3つの「見える化」でわかりやすい管理を:ローリングストックを無理なく続けるためのポイントは “見える化 ”することです。「備蓄場所」、「賞味期限」、「食べ方」の3つを意識して備えましょう。

  • 「家族に見える化」(備蓄場所の見える化):備えるもの、場所などは家族と共有することが大切です。せっかく備蓄していても、自分だけが把握しているだけでは、家族を守ることができません。
  • 「食べ方の見える化」:もし災害が起きた時「食べ方がわからない」「口にあわない」では意味がないので、普段から食べ慣れているものを選んで備蓄しましょう。
  • 「賞味期限の見える化」:賞味期限が一目でわかるようマジックなどで大きく記入するのがおすすめ。さらに古いものから取り出しやすいように収納しましょう。

ローリングストック 見えるところに賞味期限を書く「賞味期限の見える化」
ローリングストック 賞味期限ごとに分けて収納

―― まず、食品は何日分ストックすればいいか、目安を教えてください

今泉 農林水産省が推奨する食品備蓄は、災害対策として最低3日〜1週間分、感染症の備えでは2週間分とされています。高齢者や乳幼児、アレルギーなど疾患のあるかたへの配慮も忘れずに。

 あわせて、水は飲料用に1人1日あたり3リットルを3日分、できれば7日分を備えましょう。水の蓄えが心もとないと「少しずつ飲もう」という心理から、脱水症状を起こす危険性があります。また、カセットコンロとカセットガスボンベは、電気やガスが復旧するまでの必需品です。調理はもちろん、お湯を沸かすことで、蒸しタオルを作ったり暖を取ったりできます。

―― ローリングストックに適した食品を教えてください

今泉 健康を守るうえで、災害時でも栄養が偏らないよう、バランスよく食べることが大切です。米やパンで「糖質・脂質」を、缶詰やレトルト食品で「たんぱく質」を、野菜ジュースや乾燥野菜で「ビタミン・ミネラル・食物繊維」をと、この3要素を意識して蓄えましょう。

バランスよく食べることが大切

 ただ、「何を買っておけばいいか」に正解はありません。どれだけ備蓄に適した食材であっても、好みの味でなかったり、上手に調理できなかったりすれば、そのご家庭におすすめの備蓄食材とはいえないからです。

 ですから、非常時用に購入するのではなく、自分の好きなもの、普段から食べたくなるものを選んで家に置いておくことが重要です。また、いろいろな種類が家にあると、「選ぶ楽しさ」もあります。

 「これを食べなければならない」「これしかない」で食べるより、「どれを食べよう」と選ぶことで前向きになり、心を豊かにしてくれます。災害が起きたあとに食べる食事は、決して我慢して食べるものではありません。「おいしい」と思ったものを食べることができると、ほっと安心できます。好きなものが家にあると「あれが食べられる!」と、少しは気持ちも落ち着きます。食べたくなるものを選ぶことが大事です。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/01/news003.jpg パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. /nl/articles/2412/01/news031.jpg 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. /nl/articles/2412/03/news082.jpg 「ほ、本人……?」 日本に“寒い国”から飛行機到着→降りてきた“超人気者”に「そんなことあるw?」「衝撃の移動手段」の声
  4. /nl/articles/2412/03/news111.jpg 才賀紀左衛門、娘とのディズニーシー訪問に“見知らぬ女性の影” 同伴シーンに「家族を大切にしてくれない人とは仲良くできない」
  5. /nl/articles/2412/02/news009.jpg 【今日の難読漢字】「誰何」←何と読む?
  6. /nl/articles/2412/05/news006.jpg 「今やらないと春に大後悔します」 凶悪な雑草“チガヤ”の大繁殖を阻止する、知らないと困る対策法に注目が集まる
  7. /nl/articles/2412/03/news148.jpg 武豊騎手が2024年に「武豊駅に来た」→実は35年前「歴史に残る」“意外な繋がり”が…… 街を訪問し懐古
  8. /nl/articles/2412/03/news092.jpg 大谷翔平、“有名日本人シェフ”とのショット 上目遣いの愛犬デコピンも…… 「びっくりした!!」「嬉しすぎる」
  9. /nl/articles/2412/03/news055.jpg ハローマックのガチャに挑戦! →“とんでもない偏り”に同情の声 「かわいそう」「人の心とかないんか」
  10. /nl/articles/2412/03/news034.jpg 古着屋で“インパクト大”なブランケットをリメイクすると…… 劇的な仕上がりに386万再生「これはいいね、欲しい!」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  4. 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
  5. 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
  6. パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
  7. アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
  8. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
  10. PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」