夫の「栄養偏ってて大丈夫?」にプチッ…… つわりのしんどさ描く漫画に「この通りでした」「同じです」共感集まる(1/2 ページ)
真船佳奈さんに、妊娠・出産・育児のエッセイ漫画『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』について聞きました。
食べられるものがコロコロ変わり、パソコンの画面を見ても気持ち悪く――つわりのつらさを描いた漫画が多くの人の共感を集め、約6000件の「いいね」が集まっています。
漫画家の真船佳奈(@mafune_kana)さんが、自身の妊娠中の経験を描いた漫画。つわりの症状は人それぞれですが、真船さんの場合は、日々体調や食べられるものが変わり、1日に7〜8回吐いたり、パソコンの画面を見ると気持ち悪くなったりなどの症状に見舞われました。
生活は一変し、自分の体を誰かによってかき乱されているような感覚。赤ちゃんは楽しみだけれど、一方で「自分がどうなるか怖い」という不安もあり、ホルモンの影響で情緒が不安定に。つわりで食べられるものが限られる中、「栄養偏ってて大丈夫なの?」という夫の言葉に「私だってこんな食生活がよいと思ってないよ!」と怒ってしまったり……。
妊娠前と変わらずマイペースな夫に「一人では頑張れない。一緒に親になってほしい」と泣いて寝落ちしたあと、心なしか家がきれいに片付き、冷蔵庫に夫が買ってきてくれた蒸しパンがたくさん入っていた――漫画はそう締めくくられています。
漫画には「当時を思い出して泣けた」「食べられるものが毎日変わる。自分が自分じゃないみたい」という共感や、「わかりやすく言葉にして夫さんに伝えていて精神と技術がスゴイ」といった感想が寄せられています。
この漫画は、8月に発売された真船さんのエッセイ漫画『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』に掲載された一編。同書では、真船さんが妊活から出産、育児の体験をつづっています。ドタバタ劇をコミカルに描きつつも、夫とのすれ違いから衝突するも二人で「親」になっていくまでや、とらわれていた「こうするべき」から脱する過程なども両者の視点から描かれています。
ねとらぼ編集部では真船さんに、同書に込めた思いなどを聞きました。
―― 書籍に描かれている妊娠・出産・育児の期間で、振り返ってみて一番つらかったことはなんでしたか
真船さん 妊娠期は自分の体が自分でコントロールできない身体的なつらさ、出産は恐怖とホルモンの大暴走、新生児育児は体力・精神的なつらさ……などなどそれぞれ別のベクトルでつらかったことがたくさんありました。なかなか一番を決めづらいですが、総合して言えるのは「それまでの自分と全く違う自分にならざるを得ない」状況がつらかったです。
妊娠期はつわりや体調不良のほかに食事も制限され、今までやれていたことがどんどんできなくなっていくのに対し、目の前の夫は何も変えなくても親になれる、というギャップにイライラしてしまったり。病院に行っても周りに相談しても「赤ちゃんを産むんだからこのくらいは仕方ないんだよ!」と優しい圧をかけられ(笑)。
やっとの思いで産んだ後も即「はい! 今日からお母さんね!」となるのも、「これどうしたらいいんだよ〜〜!」とめちゃくちゃ不安で泣いてばかりの日々でした。
今までお互い自由に、でも仲良くしてきた夫とも溝が深まって、一人ぼっちになってしまった気がしたのがつらかったです。
―― 逆に一番うれしかったことや楽しかったことはなんですか
真船さん 赤ちゃんをおなかの中で育てるのも、産んでから育てるのも大変なことが多いのですが、予想の5億倍かわいいです。私は、「かわいい」という4文字で全ての苦労を取り除く存在を初めて目の当たりにしました(笑)。
前まで仕事で疲れた体を引きずってまで推しのライブに行っている人を「なんで……? 余計疲れるじゃん」と不思議に思っていましたがやっと分かりました。本当に、一瞬で心を幸せで満たしてくれる存在というのはいるんですね!
でも「かわいい」だけでは乗り越えられないことも多くて、「ああかわいい……ああつらい……ああかわいい……」の連続でした。笑
漫画の中では新生児時代のかわいい息子をたくさん書きました。写真を見て当時のほにゃほにゃの息子を見ながら漫画をかけて楽しかったです!
―― 子どもを持ってみて「思っていたとの違う!」と感じたことをお聞かせください
真船さん 思っていたのと違うことしかありませんでした(笑)。
核家族化や少子化もあり、今や日本人の多くが、赤ちゃんを抱っこした経験がないまま自分の子を産んで育てているそうです。私もそうでした。
マジで赤ちゃんと言ったら「ばぶー」と言っておしゃぶりちゅっちゅしてゆりかごですやすや眠る、フリー素材のイラスト赤ちゃんみたいな存在を想像して31年間生きていたので、初めて赤子を抱いた時の存在の頼りなさ・はかなさに「首折れない?!大丈夫?!」と戸惑い、風呂に入れるだけでも怖すぎて息子を水中に落としてしまう夢を見て汗だくで目覚め、おっぱいを拒否する息子に「なんでなんじゃーーーーーい!」と毎日ひっくり返っておりました。
今息子は1歳6カ月になりましたが、それでも毎日「なんでなんじゃーーーーい!」とひっくり返ってます。
―― タイトルの「頼りになるのはスマホだけ?!」についてうかがいます。スマホがあってよかったことや知って助かった情報、逆にマイナスになったこと(見なくてもよかった、あるいは見ない方がよかった情報など)を教えてください
真船さん 令和の妊娠・子育てって、まず妊活のための管理アプリ・妊娠したら週数アプリをDLすることから始まり、そこからオンライン上でほかのママたちと交流したり、子どもの成長を記録したり。
昔よりもはるかにスマホという存在に、助けられている部分も多いのかなと思います。「子どもが大変だ!」というときに、大体のお母さんが真っ先にスマホを手に取るでしょうし、検索すればとりあえずそれっぽい答えが出てくる。「分からない」ことで怖くなる、ということは圧倒的に減っているのかな、と思います。
でも結局、育児に迷ったとき、孤独に感じたとき。どんなに検索しても答えは出てこないどころか、たくさんの情報の海に飲まれて自分を責めたり、比べたり焦ったり悲しくなったりしてしまって。
特に私は母乳が出なかったので、母乳育児の情報や、子どもの「愛着障害」の記事にはかなり心惑わされ、疲れてしまいました。今は息子にスマホを取られて食われることが多いので、強制デジタルデトックスできています笑。
―― これからママになる人へのメッセージをお願いします
真船さん トラブルの多い人生を歩んできましたが、その中でも妊娠・出産・育児を経験したこの1年は、人生の中でも指折りの激動の1年でした。
今までの人生から良くも悪くも変わる・変わらねばならない状況になり、不安になってスマホの中に正解を求めることも多いと思います。
でも私は、結局スマホの中に本当に大事なことは見つけられなくて。周りに目を向けて、頼って、相談して、「大丈夫だよ」と言ってもらってやっと少しずつ親になれてきました。
私もそんな風な存在になりたい、と思ってこの本を作りました。ぜひぜひ、大切な方や、ご家族と読んでいただけたらうれしいです。
(C)真船佳奈/オーバーラップ
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