“子ども時代に、大切なものを奪われてはいけない” 「屋根裏のラジャー」西村義明 1万4000字インタビュー(1/10 ページ)

プロデューサー自らが脚本を手掛けた理由と、本編で描ききれなかったキャラクターの背景とは。

» 2023年12月29日 18時00分 公開
[ヒナタカねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 12月15日より「屋根裏のラジャー」が公開中。ここでは、アニメーション制作会社スタジオポノックの代表取締役であり、同作でプロデューサーおよび脚本を担当した西村義明のロングインタビューをお届けしよう。

「屋根裏のラジャー」西村義明ロングインタビュー プロデューサー自らが脚本を手掛けた理由と、本編で描ききれなかったキャラクターの背景とは 「屋根裏のラジャー」 全国東宝系にて公開中 (C) 2023 Ponoc

 スタジオジブリ在籍時代の経験と、スタジオポノックの立ち上げの決意、そして「屋根裏のラジャー」で自身が脚本を手掛けた理由がリンクしていると思える、興味深い内容となった。映画本編では描ききれなかったキャラクターのディテールや背景も記しているので、ぜひ映画本編と合わせて楽しんでほしい。

※以下、『屋根裏のラジャー』本編の一部展開に触れています

映画「屋根裏のラジャー」予告2

脚本を手掛けた理由には「映画の前と後」を作ることにもあった

――なぜ、今回の「屋根裏のラジャー」ではプロデューサーだけでなく、脚本も手掛けられたのでしょうか。

 日本では映画プロデューサーは商売をする人という印象を持たれている方が多いから不思議に思われるでしょうね。映画産業には独立系プロデューサーと呼ばれるプロデューサーがいて、メディアや大手映画会社には所属しない映画プロデューサーのことを指しますが、脚本に深く入り込むのは特別に珍しいことではないんです。

「屋根裏のラジャー」西村義明ロングインタビュー プロデューサー自らが脚本を手掛けた理由と、本編で描ききれなかったキャラクターの背景とは 西村義明プロデューサー

 独立系プロデューサーの仕事はまず企画を定めて、資金を集め、脚本を作り上げる。その後に監督や役者やスタッフを決めて、制作現場を陣頭指揮する。プロデューサーでもあり脚本も書くという方は少なくはないですよ。

 北米のある映画人に教えてもらったのですが、プロデューサーにはディールメーカーとフィルムメーカーがいるそうです。売れている原作なりを購入して、有名な役者をアタッチし、メジャースタジオに売る交渉や商売の才覚を持ったディールメーカー。あとは企画なり脚本なりを考えて、制作現場も含めて映画を作り上げるフィルムメーカー。日本の場合は産業が小さいこともあって、その両方を兼ねないといけない局面が多いので負担は大きいでしょうけどね。

――売れる作品のための交渉ごとではなく、作品のためを思ってこそ、プロデューサーおよび脚本の仕事を手掛けた、ということでしょうか。

 それほど能動的な姿勢から始めたわけではありません。今回も脚本家の方にお願いして書いていただいたんですが、イマジナリーフレンドという日本人にはなじみの薄い題材を映画化すること自体の難易度が高くて、こちらが思うような脚本にはならなかった。それは脚本家の力量ということではなくて、狙っているところが違ったというか。つまり、展開だけ追っても面白い物語でありながら、角度を変えると隠喩的に人間の真実が描かれているというような、真実の寓話とでもいう型に挑戦できる企画だったので。

「屋根裏のラジャー」西村義明ロングインタビュー プロデューサー自らが脚本を手掛けた理由と、本編で描ききれなかったキャラクターの背景とは (C) 2023 Ponoc

 それに、表面的にも面白い物語と言っても、その表面に登場する人物はイマジナリーフレンドですから。彼らを形作るためには、その想像を生み出した側の人間をこそ、具体的にイメージする必要があります。どのような過去を生きてきたか、なぜ本屋を営むことになったのか、その本屋はどこにあり、具体的にどんな本を置いてあるのかなどです。黒澤明監督が「七人の侍」でやったように、登場人物の分だけの真実味を持った人生を形作らないと、ファンタジーの力は雲散霧消してしまいます。

       1|2|3|4|5|6|7|8|9|10 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」