「ひろがるスカイ!プリキュア」がソラ・ハレワタールに託したヒーロー像 「説教+名ぜりふ=論破」ではなく「行動」で伝えることの重要性:サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)
「ひろがるスカイ!プリキュア」1年間ありがとうございました。本当に良い作品でした!
「説教+名ぜりふ=論破、で問題解決するのはやめよう」
「ひろがるスカイ!プリキュア」(以降ひろプリ)の方向性について、シリーズ構成の金月龍之介氏はアニメ誌のインタビューでこう答えました。
この言葉は何を意味していたのか? 終盤を迎え大きな盛り上がりを見せている「ひろプリ」では何が描かれ、何が描かれなかったのか?
製作者はソラ・ハレワタールにどんなヒーロー像を託したのでしょうか。
kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
- これまでのプリキュア連載一覧
プリキュア20周年記念作品「ひろがるスカイ!プリキュア」は、数多くの新しいことにチャレンジした意欲作となりました。
初のレギュラー男子プリキュア、初の成人女子プリキュア、初の赤ちゃんプリキュア、初の異世界人主人公、初の青色主人公……。
「どこにでもいる普通の女の子が妖精と出会いプリキュアになって世界を救う」という、これまでのプリキュアの固定観念を大きく覆した作風となり、ファンを驚かせました。
特に初のレギュラー男子プリキュア「キュアウィング」は、発表当時はネットでも大きな話題となりました。
しかし作中では「男の子であること」を特に強調せずに、仲間の一人としてみんなと普通に過ごす描写にしたことは特筆すべきことだと思われます。
「男の子がプリキュアになるのは、何も特別なことじゃない」という製作者側からのメッセージとなったのです。
また、物語の進行的にも従来のシリーズとは異なる点が多々見られました。
中でも、いわゆる「悪役会議」を描かなかったことがファンの間で賛否が分かれる形となりました。
「悪役がヒーローを引き立たせるのだから、もっと悪役の主張も描くべき」「いや、子ども向けとしては敵の事情よりもプリキュアの活躍が優先されるべき」など、賛否入り交じりさまざまな意見がファンの間でも交わされました。
悪役会議を描かなかった理由
ひろプリで「悪役会議」を描かなかった理由として、シリーズ構成の金月氏は、2023年6月のアニメ誌のインタビューで「悪役よりも、子ども達はプリキュアの描写をみたいはずだから」と答えています。子どもたちのことを考え「悪役会議」を無くしていたのです。
しかし、同時に「悪役会議」を描かないことにより「ストーリーが推進力を失うリスク」があることも当時から懸念していたようです。
金月 いわゆる「悪役会議」のシーンってお子さんたちは本当に楽しんでいるのかなあ? その時間があるならプリキュアたちを見たいのでは? というのが僕の意見です。もちろん敵サイドの事情を描かないことで、ストーリーが推進力を失うリスクがあります。
徳間書店『Animage(アニメージュ)』2023年6月号(P70)
確かに、ひろプリは悪役側の都合が描かれなかったため「プリキュアたちが何のために戦っているのか?」が終盤まで判明しないなど、ストーリー的な求心力はやや弱かった部分は否めなく、製作者側が懸念したリスクが顕在化した形となっていたようにも思われます。
「悪役会議」を描かないのはもろ刃の剣だったのかもしれません。
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