CGになっても「これぞモルカー!」 あまりにすばらしい『PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX』レビュー(2/3 ページ)
AIが人間の脅威となるSF作品はこれまでも数多く作られているし、今回の『ザ・ムービー MOLMAX』にもその側面はあるのだが、それだけではない。前述した相葉演じるCEOは善意でAIモルカーの開発に挑んでおり、味方になるAIモルカーの力もあって冒険を繰り広げる展開もあるため、AIを「悪」だと決めつけることもしていない。むしろ、AIの知見をアップデートするようなアクロバティックかつ誠実な結論が導かれる様は、AIを扱った物語として「最新」とさえ思えたのだ。
さらには、AIを物語の主軸においたことで、「人間」の強烈な風刺にもつながっている。元のテレビアニメからして、「モルカーはこんなにかわいいのに人間はゴミ」「民度がゴッサムシティ(『バットマン』シリーズに登場する腐敗した都市)」とやゆされるほど、人間の愚かさが描かれた作品だった。今回ではさらにAIの便利さにかまけてモラルがさらに低下した人間像が描かれるので、「人間はマジでゴミだな」と思わせる場面までアップデートされている。
しかし、それだけではもちろん終わらない。ネタバレになるので詳細は伏せておくが、本作は映画『アイの歌声を聴かせて』にも通ずる、人間とAIの関係、それぞれの認識について、とある尊く感動的な展開を用意してくれていたのだから。
まとめ:ファンサービスも、万人向けエンタメとしての完成度も申し分なし
他にも、ファンサービスが行き届いていることも特筆すべきだろう。テレビ版の人気キャラクターや、印象的なシチュエーションが登場してくれることだけでうれしいのだが、それらが「単に出しただけ」でなく、「このときのコレがこうなるのか!」と驚きのアイデアにつながり、かつ映画独自の物語にもしっかり融合していたことにも驚かされた。「ファンサービスと物語の整合性を両立させる」映画としても理想的だろう。
わずか69分の上映時間にテンポよく見せ場が詰まっているため、「モルカー」のことを知らなくても、子どもから大人まで楽しめるエンタメとしても申し分がない。かなり「攻めた」作劇もあるため、穏当な内容を期待していた人にとってはびっくりするか、混乱してしまうかもしれないが、「ここまでやるのもモルカーだ……!」と個人的には納得できた。
ギャグもキレキレで、未就学児が喜びそうな「う○ち」ネタ(でも汚くはない)もかわいらしくて楽しいし、大塚明夫ボイスである芸能人の有名なセリフを絶妙なタイミングで繰り出したことにも大笑いした。
なお、監督のまんきゅうは映画 『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』やテレビアニメ『ミギとダリ』、脚本家の柿原優子もテレビアニメ『はたらく細胞』や映画『トラペジウム』などで高い評価を得てきた。今回の『ザ・ムービー MOLMAX』で、元の作品への愛とリスペクトを、これでもかと詰め込むことができたのは、その両者の手腕はもちろん、スタッフたち全員の尽力のおかげだろう。
いずれにせよ、ストップモーションからCGになったことも、人間のキャラクターがしゃべることも、現代的なAIを物語の中心に据えたことも、それぞれが挑戦的なアプローチながら、見事に作品のクオリティーに結実し、「モルカー」というコンテンツが持つ魅力そのものにもつながっていることが、あまりにすばらしい。もうこれ以上、言うことはない。すべての「モルカー」ファンが見に行くことはもちろん、万人向けのファミリー映画として多くの人が劇場へ足を運ぶことを期待している。
(ヒナタカ)
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