2018年3月1日、Twitterが「ブックマーク」機能の導入を発表した。気になったツイートを保存しておき、後からまとめて読めるというものだ。
既存の「いいね」機能との違いは、「いいね」が「自分をフォローしている他人のタイムラインにも表示される」ことがあるのに対し、ブックマークは「他人の目には触れず、自分だけが見られる」という点。
他人からの「いいね」経由で流れてきたツイートなどは、リロードをすると消えてしまうことがあり、再度見つけるのが困難になるが、ブックマーク機能はそうしたツイートを保存しておくのに向いている。また、他人には見られたくないけれど保存したいツイートをまとめる、という用途もある。
一見すると良いことづくめに思えるが、一部のユーザーはこのブックマーク機能の導入に反発しているようだ。
「○○さんがいいねしました」の弊害
その理由は、前述した「自分が『いいね』したツイートが他人のタイムラインにも表示される仕様」にある。これは2017年3月に始まったもので、
- タイムラインが時系列順ではなくなること
- いいね機能とRT(リツイート)機能の差がなくなっていること
- 他のユーザーに流したくないツイートもあること
などの問題点から、廃止を望む声が当初から挙がっていた。いわゆる「○○さんがいいねしました」を止めてほしい、というわけだ。
Twitter運営は以前のねとらぼの取材に対し、「廃止を望む声が多いことは把握しているが、ユーザーが興味を持つものに出会いやすくするための仕様だ」という趣旨のコメントをしている。
「選択肢を与えない」という選択肢
「『いいね』をタイムラインに流す」ことに関しては、実際にTwitter運営が言う通りの良い側面もあるし、この機能を気に入っているユーザーもいる。ある新機能をサービスに追加したときに、その恩恵を受ける人もいれば、気に入らず不便になったと感じる人もいるのは当然のことだ。
それでは、どちらの要望も満たすにはどうすればいいか? 表示のオン/オフを切り替えられるようにすればいい。極めて単純な答えだが、そう考えるのは自然なことだろう。
事実、今でもユーザーは見たくないアカウントを丸ごとブロックできるし、ダイレクトメッセージの可否も、他者からのRTの表示も、設定からコントロールが可能だ。しかし、唯一「いいね」だけがそれを許されていない。ユーザーの要望とは無関係に、タイムラインに「表示されたりされなかったり」する。
繰り返しになるが、廃止せずとも、ただ選べるようになっていればそれで済む話なのだ。それでも1年以上にわたってこの仕様を続けているというのはつまり、「Twitter側はどうしても「いいね」をタイムラインに表示したいのだ」と考えるほかない。
ユーザーの「矛先をずらす」ということ
Twitterがどうしても「いいね」を表示したい理由としては、RTだけでは広まりきらないツイートをさらに広め、ユーザーのTwitter上での活動をアクティブにして、メディアとしての拡散力・影響力を高めることにあるのだろう。
その意味で、先のTwitter運営のコメントに嘘はない。そしてまた、その効果はおそらく非常に大きいのだろう。これは体感でしかないが、タイムラインを眺めていると、「『いいね』のタイムライン表示以前」と「以後」とを比べたときに、最近は「バズるツイート」「高RTを稼ぐツイート」の絶対数が明らかに増えているように感じられる。
効果は大きい。しかし、ユーザーからの反発も大きい。ではどうするか――。そこでTwitterは、オン/オフの切り替え設定を入れるのではなく、新たにブックマーク機能を導入することで、先に挙げたようなユーザーの不満を解消しようとした。別の書き方をすれば、ユーザーの不満の矛先をずらしたということだ。
あらためて結論を書く。ブックマーク機能が導入された理由は、「『いいね』を他人のタイムラインにずっと表示させ続けたいから」だ。もったいつけて書いたが、これは多くの人が同じように感じていることだろう。
ユーザーの声とサービスの継続性
2018年2月、Twitterは上場後初となる黒字決算を発表した。今が大事な時、というのは外から見ていてもはっきりと分かる。
その意味で、ユーザーのサービスへの関わり方(いわゆる「エンゲージメント」)を高めるような施策は何でも打っていきたい、というのは当然の考え方だろう。「いいね」を巡るタイムラインの攻防も、おそらくはそのうちの1つであり、効果があるものは続けたいという気持ちはもちろん分からなくはない。
しかし、たとえそれで拡散力が上がったとしても、多くのユーザーに「このサービスは自分たちの方を向いていない」と思われてしまったとしたらどうだろう。
今後ユーザーがどのようにブックマーク機能を利用し、それを受けた運営がさらなる改善を図っていくのか。ユーザーとの意見交換会を開き、体制の抜本的見直しを図ったニコニコ動画の例もあるように、長く続くサービスというのはつまり、「真の意味でユーザーの方を向いている」ものであってほしいと思う。
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