「本当は船に乗りたいけれど、大金が掛かるから」と諦めていた人に、「いえいえ、国産コンパクトカーを買い、維持するくらいの費用で船が持てますよ」という事実を伝えたいこの連載。
これまで、船の買い方・選び方、マリーナ事情と選び方、船舶免許の取り方、ヨットの動かし方をクリアし、めでたく「船長」として船で暮らしたり、船で旅をしたりできる身分となりました。
そうなって気になるのも、やはりオカネですかね。「買ったはいいけれど、ヨット趣味を維持するのに一体いくらかかるのか」ということですね。今回は筆者のヨット維持費を例に「かかる費用」をひもといて解説します。
最も多くを占める「係留費」
港に船を泊めておく係留費については第2回目「月2万円台でマリーナに船を係留できる」で紹介しました。
念のため費用をおさらいしましょう。老舗の名門マリーナは、25〜26フィート(7.5〜8メートル)クラスの船で年間100万〜200万円。第三セクターの横浜ベイサイドマリーナならば、年間42万円で月額3万円台、漁港併設のみうら宮川フィッシャリーナならば、年間32万4000円で月額2万円台です。係留費は、クルマ維持費における月極駐車場代に相当します。
なお、海上係留と比べて安くなるはずの陸置きマリーナですが、関東近辺のマリーナでは2018年現在、横浜ベイサイドマリーナやみうら宮川フィッシャリーナよりも高額なところばかりなのが現状です。また、陸置きマリーナは海に降ろしたり、帰港して海から揚げたりするのに必要なクレーンの費用が毎回かかります。
とにもかくにも、ヨット趣味の維持費で最も多くを占めるのが係留代です。
年イチ発生「船底掃除/船底塗装費」
本連載で勧める「海上係留マリーナ」は、船底やスクリュープロペラに海藻や貝などの海生生物がどうしても付着します。これが増えると抵抗になって、船が進まなくなります。そのため、最低でも年に1回は陸上に船を上げて、付着した海藻や海生生物をそぎ落として、ペンキを塗り直すメンテナンスが必要です。
このときに併せて、船を電蝕から守るための部品「亜鉛ブロック」も交換します。これらのメンテナンスを「船底掃除」「船底塗装」といいます。海上係留の船は避けては通れません。
参考費用は、船をマリーナの整備エリアや造船所に引き上げる「クレーン代」、陸上に船を置いておくために一時的に借りる「台」の費用、新たに塗る船底用とスクリュープロペラそれぞれの「ペンキ代」、交換用の「亜鉛ブロック」の部品代で、約8万円です。
クレーン代と船を置く台の費用はマリーナや造船所によって異なります。そして「付着物の除去」「ペンキ塗り」「亜鉛ブロックの交換」などを業者に依頼するならば、その分の作業工賃がかかります。その費用は2万円ほど。自分でやるならば発生しません。
年間1万円くらい ヨットだから抑えられる「燃料費」
エンジンで航行するボートに対して、ヨットは風の力を使って航行できます。帆走を主体とするならば、エンジンを使うのは帆をしまった状態で走る出港の30分、同じく帰港の30分の約1時間程度で済みます。
本連載で勧めている25〜26フィートクラスのヨットは、ほとんどがヤンマー製の「1GM」というディーゼルエンジンを搭載しています。このエンジンは(もちろん整備状態や航行状況によって差はあるものの)「1時間動かすと燃料の軽油を約1リットル消費」します。
一例として、月に4回出港するならば、出港と帰港でエンジンを1時間使うので12カ月×4回で年間48リットル。それに加えて、年に2回だけ片道12時間かかる港まで遠出し、それを全てエンジンを使う航海だとすると、エンジン使用時間が1回24時間×2の48時間で約48リットル。ということでざっくりと年間100リットル、燃料費は年間約1万3000円くらいです。
クルマの車検に当たるが、意外と安価な「船舶検査費」
船にもクルマの車検と同様の「定期検査=船舶検査」があります。本検査は6年に1回、本検査と本検査の中間(本検査から3年後)に中間検査を受けることが義務付けられています。
搭載している安全関連設備によって、ヨットを含めた小型船舶は航行できる海域が定められています。「遠洋」「近海」「沿海」「限定沿海」「沿岸」など、幾つか種類がありますが、ほとんどのヨットは「限定沿海」を選択しています。費用もこの種類で算出します。
検査手数料は、全長25フィートまたは26フィートの船の定期検査で2万4300円、中間検査で1万4900円です。このほかに、検査のたびに使用期限がある「信号紅炎」の部品代5400円も必要です。検査を受けて交付される書類を郵送で受け取る場合には、その郵送費の実費も発生します。
ともあれ車検ほどひんぱんにはなく、基本費用もそこそこ安価です。
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