上諏訪駅「諏訪弁 ほいじゃねェ」(1080円)〜諏訪の温泉文化が生んだ駅弁大将軍!(1/12 ページ)
毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! きょうは上諏訪駅「諏訪弁 ほいじゃねェ」(1080円)です。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年12月16日)
東京・新宿から約2時間、特急「あずさ」は、諏訪湖の畔に差し掛かります。
車窓には上諏訪温泉の大きなホテル、精密機械の工場、さらには味噌メーカーといった、信州・諏訪らしい風景が広がります。
諏訪盆地の2市1町には、諏訪大社上社の本宮・前宮、下社の春宮・秋宮も点在。
7年に1度行われる御柱祭は、令和4(2022)年に次回の開催が予定されています。
この地域は、上諏訪温泉・下諏訪温泉をはじめとした日本有数の温泉地の1つ。
なかでも国の重要文化財に指定された「片倉館」の千人風呂は、昭和初期に建設された一度に100人は入ることができるという、大理石造りの温泉浴場として有名です。
また、豊富な湯量に恵まれているゆえ、町内会ごとに住民向けの共同浴場も多く点在。
諏訪地方は、温泉文化が日常生活のなかに、ごく自然にある地域なんですね。
温泉文化の背景には、真冬の諏訪盆地における、底冷えのする気候もありそうです。
その象徴的な現象が、「諏訪湖の御神渡り」。
諏訪湖が全面結氷し、その一部が寒暖差などでせり上がり、「筋」になる現象のこと。
御神渡りが起こると、TVの全国ニュースでも報じられることが多いですね。
果たして、この冬は「御神渡り」、起こるでしょうか?
そんな御神渡りの写真が掛け紙となった中央本線・上諏訪駅の“駅弁”、「諏訪弁 ほいじゃねェ」(1080円)が、今年(2020年)1月から登場しています。
上諏訪駅近くの「れすとらん割烹いずみ屋」、信州のソウルフードとも云われるチェーン店「テンホウ」、そしてゲストハウスの「TATAMI」がコラボする形で開発。
上諏訪駅改札口脇の「NEWDAYS」で個数限定販売が行われている他、駅から歩いて1〜2分の「いずみ屋」で予約して購入することもできます。
【おしながき】
- 龍神おむすび(小林川魚店のわかさぎ唐揚げ、川海老煮付け)
- 諏訪ギョウザ(テンホウと漬物の松尾商店による、野沢菜漬入り揚げ餃子)
- 信州ポークの諏訪味噌焼き
- 鯉の甘酢あんかけ
- 御柱巻き(凍み豆腐の煮物)
- 松尾商店の野沢菜漬け
- 信州りんご
- かりんの寒天
「ほいじゃねぇ」とは、諏訪の方言で親しい人に遣う「また会おうね!」の意。
製造する「いずみ屋」によると、諏訪から「あずさ」に乗って帰る方が、“列車のなかで一杯やりながらいただく”おつまみ駅弁をイメージして開発したと言います。
このおむすびのご飯がいい塩梅で、具がちょっとだけ載っているのも、食欲をそそります。
地元のお店とのコラボでできた餃子も後を引かず、信州名物の鯉料理も臭みは全くなし。
作り手の技を感じさせてくれる、美味しい弁当に仕上がっています。
「諏訪弁」を製造するいずみ屋の宮坂社長によると、上諏訪駅ではかつての駅弁屋さん「山なか」の撤退後、オリジナルの駅弁がないことが長年、課題になっていたと言います。
今回、上諏訪駅のNEWDAYSの方とゲストハウス「TATAMI」の方が、偶然同じ町内で、地元専用の温泉共同浴場のなかで意気投合したことが弁当開発のきっかけになったそう。
まさに、諏訪の温泉文化が育んだ“新作駅弁”というわけなんですね。
まもなく発売から1年になるいまでは、旅行者はもちろん、地元の少人数の会合などでも、「諏訪弁」が人気を集めていて、上諏訪の弁当として少しずつ定着してきている様子。
宮坂社長も、「まずは、この諏訪弁を大事に育てていきたい」と話します。
この「諏訪弁 ほいじゃねェ」、今年(2020年)10〜11月にかけて東日本地区で行われた「駅弁味の陣2020」で、見事「駅弁大将軍」に輝きました。
老舗の名物駅弁ではなく、初参加業者、新作での“大将軍”はこれまでにない快挙。
諏訪弁のプロジェクトに携わっている皆さんも、一同驚き、歓喜していると言います。
上諏訪駅ホームの足湯と共に、新たな上諏訪駅の名物が、ここに誕生です!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
おすすめ記事
Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.