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コロナ禍のフランスから「帰国しよう」と決意させた母からの通話…… 日本人留学生が漫画でつづる2020年春の緊急帰国

帰国を決心してからも一大事が。

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 2020年3月、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が原因で、多くの留学プログラムが中止になり、緊急帰国を余儀なくされた学生が続々と日本に帰ってきました。

 ついに外出制限(コンフィヌモン)が発令され、必要不可欠なこと以外の外出が全面的に禁止になったフランス。そんな状況下で「実家にウィルスを持ち込みたくない」という理由でフランスに残留することを決意する筆者でしたが……。

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書いた人:SONO

 1995年生まれ。漫画家。

 キリスト教、歴史を題材にした漫画を執筆している。著作に『教派擬人化漫画 ピューリたん』(キリスト新聞社)がある。

Twitter:@0164288

方向転換

コロナ 帰国日記

 母から突然かかってきたLINE電話。何の気なしに朝ごはんを食べつつ応対すると、予想外に思いつめた母の声が聞こえてきて、居住まいを正しました。医療従事者である母は、フランスの新型コロナ患者の死亡率の高さ、寮で1人で生活している私が万が一罹患した場合、適切な医療を受けることができるのか、といった不安を訴えました。

 「やはり日本に帰国したほうがいい。家族に感染させるのが怖いなら、ウィークリーマンションで2週間の自主隔離をしよう。お金なら私が出すから……」母はそう提案してくれましたが、この言葉よりも、通話の声から伝わってきた母の不安の大きさが、私に「帰国しよう」と決意させたのでした。家族のために帰国しない! と言い張っていたけれど、そのせいで家族を不安にさせているなら、本末転倒です。

帰国へのカウントダウン

コロナ 帰国日記

 「よし! 帰国しよう」そう決断してからの行動は早かったです。まず、入国時に取っていたオープンチケット(日付変更可能な往復チケット)の帰国日を変更して、3月22日の飛行機の席を確保。そして、日本にいる母親と連携プレーで、ウィークリーマンションの入居申し込みを済ませました。

 飛行機出発時刻から逆算すると、2日後の昼に寮を出発すればフライトに間に合うようです。現在、20日の午前中。残された時間はあと1日半。荷造り・掃除・退寮手続きを済ませ、この部屋を空っぽにしなければいけません。半年間の生活が詰まったこの部屋を……。

コロナ 帰国日記

 渡仏してきた当初は、スーツケース1つに収まるだけの身軽な荷物で新生活をはじめたはずが、半年間の間に増えに増えた本、服、おみやげ類(ワインも)……。急遽、スーツケースをもう1つ用意して、全て飛行機の預け入れ荷物として運ぶことにしました。外出制限が発令されて混乱状態にあるフランスから、郵送サービスを使って荷物を送るのは不安がありました。

 でも、ここで一つ問題が。スーツケースが売ってる店って、どこ!? カバン屋さんなどの専門店は「生活必需品の販売店」ではないので休業中。開いているのは食料品などを売るスーパーだけです。近所のスーパーには、せいぜいおばあちゃんが押しているような買い物用カートぐらいしか売っていません。

 必死で記憶をたどっていくと、パール・デュー駅前のショッピングセンター内の巨大スーパーには、カバンを売っていたことを思い出しました。必死でGoogleマップで検索し、店内の写真を探すと、確かにスーツケース売り場があるようです。とにかく、ここに行ってみるしかない!

 普段だったらリヨン市のレンタル自転車で移動するのですが、この時は時間と体力の節約のため、地下鉄(メトロ)に乗っていくことに。外出制限が発令されているため、車両には私のほかに1人しか乗客がいませんでした。

ショッピングセンターへ

コロナ 帰国日記

 地下鉄の出口から出て、SNCF(国鉄)のパール・デュー駅を突っ切って反対側へ。さらに路面電車(トラム)の線路を渡ると正面にある大きな建物が、ショッピングセンター・パールデューです。

 雑貨屋さんからファストファッションから高級ブランドまで多種多様なお店が入っていて、だいたいのものはここでそろうので、留学してきた当初はしょっちゅうお世話になっていました。レストラン等も豊富なので、友達と遊びに来たことも。しかし、この時はスーパー以外のお店が閉店しており、店内の照明も落とされ、まるで廃墟のようです。

コロナ 帰国日記

 目当てはショッピングセンターの2階と3階にまたがっているCarrefour(カルフール)というスーパー。これがめちゃくちゃ巨大なのです。ちなみに、Carrefourの発音は正確には「キャッフー」という感じです。はしゃいでるみたいで、発音するたびにテンションがアガります。

 2階はドラッグストア、文房具や電化製品、お菓子、酒類。3階はまるまる生鮮食品売り場になっています。ほとんど無人の店内をさまよった結果、2階の文房具売り場の奥に、カバン類の棚を発見。無事、スーツケースをゲットできました!

 スーパーでは、ちゃっかりおみやげ(マルセイユ石鹸、ご当地銘菓や駄菓子、チョコレートなど)の購入にも成功。バスに乗って帰路につきました。バス停周辺で巡回している警察官の一団とすれ違い、緊張したのを覚えています。

 ところで、フライトで預け入れできる荷物の重量制限はスーツケース2つ、それぞれ23キロまで。つまり、重さの上限は46キロ。さて、私の部屋にある荷物は、46キロ内におさまるのか? 買ってしまったおみやげは、無事に日本まで持ち帰ることができるのか……!? 次回へ続きます!

第6回に続く

これまでの「帰国日記」

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