ニュース
» 2021年06月08日 20時00分 公開

大統領「われわれは戦争中だ」 コロナ禍で様変わりしていくフランス――日本人留学生が漫画で描く2020年春の記憶

ついに、外出制限開始。

[SONO,ねとらぼ]

 2020年3月、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が原因で、多くの留学プログラムが中止になり、緊急帰国を余儀なくされた学生が続々と日本に帰ってきました。

 かくいう私もその1人。帰国直後は、念願の留学がこんな形で終わってしまったことがショックで、なかなか筆が進まなかったのですが、ようやく当時を振り返ることができるようになってきました。

 この連載では、マンガと文章で、フランス・リヨンでのコロナ流行当初の雰囲気や、帰国までの流れをお伝えします。

前回の記事はこちら

書いた人:SONO

 1995年生まれ。漫画家。

 キリスト教、歴史を題材にした漫画を執筆している。著作に『教派擬人化漫画 ピューリたん』(キリスト新聞社)がある。

Twitter:@0164288

外出制限(コンフィヌモン)の開始  

コロナ 帰国日記

 3月16日、午後8時。フランスの大統領マクロン氏が、テレビ中継で新型コロナウィルス対策について演説を行いました。私の寮にはテレビがなく、フランス語の聞き取りにも自信がなかったので、フランス人の友達の部屋でこれを聞くことにしました。

 マクロン氏と内務大臣カスタネール氏は、コロナ流行の状況や対策についてさまざまな説明をしましたが、話題の中心は「外出制限(コンフィヌモン)」の実施についてでした。

 基本的には外出や移動を控えること。例外として許可されるのは、生きていくための最低限の外出のみ。例えば、(1)テレワークできない職場への出勤、(2)生活必需品の買い物、(3)医療業務、(4)子どもの保育・脆弱な人の支援、(5)人間やペットの健康維持の運動、など。

 外出時には自筆でサインした「外出証明書」を携帯すること、警察と憲兵隊による検問を行い違反者には38ユーロの罰金を課すことなど、外出する際のルールも定められました。外出制限期間は最低15日間で、感染拡大が続けば延期もありうるとのことでした。

 マクロン氏は「われわれは(ウイルスとの)戦争中なのだ」という合言葉を繰り返していました。言われてみれば、確かにこのものものしい雰囲気は開戦前夜のようです。学生はほとんどが母国や実家に帰ってしまい、大学も寮も人気がない。外出制限はまるで戒厳令。第二次世界大戦の直前にヨーロッパに留学していた人は、こんな空気を味わっていたのかな……。

家族とのLINE

コロナ 帰国日記

 外出制限が開始された3月17日。日本の外務省は「全世界」を「感染症危険レベル1」に引き上げました。ここにはもちろん、日本も含まれます。

 いま、フランスから日本へ帰国したところで、危機レベル2の地域からレベル1の地域に帰るだけ。しかも、帰国後は「自宅など」での自主待機が求められる。実家に帰って家族に感染させる可能性があるなら、このままフランスで寮に閉じこもってる方がマシ!……当時の私は、そう考えていました。

 日本へ帰国後、実家へ戻らずに、ウィークリーマンションやホテルで2週間の自主隔離期間を過ごすという案もあったのですが、その費用は決して安くはありません。外出制限が始まったいま、公共交通機関で空港まで行き、パリの空港で乗り継ぎを行うというリスクを犯して帰国し、ウィークリーマンションへ……? 私には、それは無駄なリスクと無駄な出費だとしか思えませんでした。

外出制限下のフランス

コロナ 帰国日記

 外出制限2日め(3月18日)、スーパーへ食材の買い出しに行きました。プリンターがないので、「外出許可書」は公開されているフォーマットに沿って手書きしました。書類を握りしめ、やや緊張しつつスーパーへ向かいます。

 ところがその道中、私が目撃したのは、「運動」のつもりでのんびりお散歩する人々……集合住宅の窓から爆音の音楽を流してパーティーしている人々……。さすがに住宅街は静まり返っていたのですが、普段から人々の憩いの場であるローヌ川沿いは、ずいぶん賑やかだったようです。案の定、翌日には川沿いに進入禁止のバリケードが張られることになりました。

 パリなどの他の都市も同じような状況だったらしく、大統領はふたたび演説を行い、感染防止対策の重要性を強く訴えました。

コロナ 帰国日記

 一方で、このころから本格的に「新しい生活様式」が導入されはじめました。スーパーでは入場人数の制限がかかり、店の外には長蛇の列が。店内放送では「社会的距離(ディスタンス・ソシアル)」が呼びかけられ、店員さんはマスクに手袋といういでたちになりました。行列に並ぶのも、マスクや手袋をするのも、フランスではかなり珍しい光景で面食らってしまいました。

運命の電話

コロナ 帰国日記

 3月20日、早朝。指導教官への近況報告の通話を終えたところに、またLINE電話がかかってきました。表示を見ると、母親から。

 母とはおととい電話で話したばっかりなのに、どうしたんだろう? 私が外出できなくて退屈しているだろうから、おしゃべりに付き合ってくれるのかな? と、はじめは能天気にかまえていました。しかし電話に出てみると、母の声はいつもとは違う真剣なトーンだったのです。

「いま、時間大丈夫?」

「いいよ、どうしたの?(むしゃむしゃ)」

「……え、もしかして何か食べてる?」

「うん、りんご。これ朝ごはん」

「……ホントに、帰国する気ないんだね」

「えっ? それ、どういう意味……??」


 このわずか数十分の電話で私の運命が変わってしまうなんて、このときの私は知るよしもなく……。

 なんだか雲行きが怪しくなってきました。私は無事にフランスで留学を続けられるのか? そして、健康に外出制限令を乗り切れるのか!? 次回へ続きます。

第5回に続く

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2106/17/news019.jpg 「とらのあな」なぜ急ペースで閉店? コロナ禍の影響は? 閉店が相次ぐ理由を聞いてみた
  2. /nl/articles/2106/15/news101.jpg 【Amazonプライムデー】セール対象商品の第2弾を公開 「Fire TV Stick 4K」が43%オフの3980円に
  3. /nl/articles/2106/16/news108.jpg エハラマサヒロ、そっくりな元俳優・遠藤要容疑者の逮捕で風評被害 「俺を面白がって悪者にしたい奴が世の中に一定数おるぞ!」
  4. /nl/articles/2106/16/news093.jpg 「虚数とか社会に出ていつ使うんだよ」にセガが回答 社内勉強会用の“ガチ数学”資料公開、ゲーム開発現場で使われていた
  5. /nl/articles/2106/14/news065.jpg 「産んでくれた親に失礼」「ちょっと我慢できません」 上原浩治、容姿批判のコラム記事に不快感あらわ
  6. /nl/articles/2106/15/news147.jpg 指をつまむだけの熱中症チェック 厚労省のセルフ確認が簡単すぎて活用したい
  7. /nl/articles/2106/15/news022.jpg 猫の夜鳴きで寝不足に→かたっぱしから対策した結果 思いがけない理由が判明する猫漫画が参考になる
  8. /nl/articles/2106/15/news127.jpg 【そんなことある?】相談者「徒歩3分圏内にコンビニ、5分圏内にスーパーがあって飲食店も揃ってて遊ぶ場所に困らない田舎を探している」→「ぶっとばすぞ」
  9. /nl/articles/2106/14/news100.jpg 死のうとする女性の前に「人食い鬼」現る おいしく食べられるために踊っていたら全てがどうでもよくなる漫画が話題
  10. /nl/articles/2106/16/news050.jpg 離乳食に興味を持たない1歳息子に、ママの意外な“秘策”がヒット! 真剣だけどシュールな作戦を描いた漫画にクスッとする

先週の総合アクセスTOP10

先月の総合アクセスTOP10