“和”と“間”で魅せる、秀逸なホラーアドベンチャー「零〜月蝕の仮面〜」レビュー(2/3 ページ)

» 2008年08月18日 15時43分 公開
[仗桐安,ITmedia]

死神は細部に宿る? ディテールにこだわった“間”の演出

 心霊との戦いは避けては通れない要素だが、もうひとつ本作で避けては通れないものがある。それは館や病院の中を移動しての“探索”そのものだ。

迷ったら+ボタンを押して地図を見よう
セーブポイントを見たら、ひとまずセーブしておくべし

 本作では、Wiiリモコンにヌンチャクを装着した状態でプレイすることになる。コントロールスティックで移動し、Bボタンで射影機を構えたり下ろしたりできる。射影機を構えている時にAボタンを押せば撮影することが可能だ。通常時は懐中電灯を構えているのだが、Wiiリモコンを上下に動かすことで懐中電灯の灯りも上下に動く。

同じ位置にいてもWiiリモコンを上下に振ると視点がまったく変わる。懐中電灯の操作は重要だ

 シリーズ旧作品と異なって、本作ではプレイヤーキャラの後方視点でのプレイになるので、臨場感、没入感は抜群。まるで自分が探索をしているかのような感覚に陥ることだろう。懐中電灯とWiiリモコンのシンクロも臨場感アップにつながっており、非常によい。基本的に真っ暗な場所を移動し続けるので、懐中電灯でちゃんと見たいところを照らすという操作が重要なのだ。

アイテムは光っているので見つけやすい。迷わず調べて手に入れよう

 懐中電灯で照らした先にアイテムがある場合は、Aボタンで調べて入手することができるのだが、ここでもちょっとした演出上の工夫がなされている。まず、暗さを優先するがためにアイテムの場所が分かりにくいということがないように、調べられる重要なモノが近くにある時は、画面右下に青い光が表示される。さらにアイテムそのものが視界に入ったら、暗闇の中で光って表示されており、取り逃しにくいように配慮されている。

 また、重要なアイテムを取る際は、ただAボタンを押すだけではダメで、Aボタンを押し続けることで手をぐっと伸ばすという“間”が存在する。アイテムに手が届く前にAボタンを離すと手に取るのをやめることができるというのも芸が細かい。アイテムを取る、という行為は本来ならAボタン一発でポンッととれるのがユーザーフレンドリーではあるのだが、本作におけるこの間の演出は恐怖を醸し出すためにバッチリ機能しており、けして冗長ではない。プレイヤーを楽しませるために必要な間なのだ。


霊を調べることができるのだが……
調べるためには手を伸ばさなくてはならない。数秒間Aボタンを押し続けなくてはならず、このヌ〜と手を伸ばす間が何とも怖い

 同様に、ドアを開ける時の絶妙な間と演出も素晴らしい。ロードに時間がかかった昔ならいざ知らず、最近のゲームでは、部屋から部屋へ、廊下から部屋へという移動での余計な間は極力なくしてロードレスで快適にプレイさせる、というのがゲームとしてのまっとうな進化だ。本作もやろうと思えばもっとスムーズにドア移動ができるのだとは思うが、ドアを開ける時のモーションにあえてイヤ〜な間を作っている。キャラクターの緊張感が手から伝わってくるような、グッと力を込めてドアノブを回す“ため”の演出があったり、ドアを開ける時だけ誰かが見てるような妙な視点に切り替わるなど、プレイヤーをドキドキさせる演出がちりばめられている。

このドアは開くのか開かないのか……固唾を飲んで見守ってしまう

 プレイヤーキャラの移動が遅い、というのも、探索の恐怖を味わうに必要な要素だと言っていい。Zボタンで走ることもできるが、それでも遅く感じられる。ゲームのプレイとしては、その遅さにイライラすることがあるかもしれないが、先に何があるか分からない状況で歩くリアリティとしては、あまりシャカシャカ歩かれても情緒がないわけで、このトコトコと歩き、じわじわと迫り来る恐怖がたまらない。

 フィールド内のディテールの無闇な怖さも特筆に価する。さすが“和”物のホラー、屋敷や病院内の日本ならではなオブジェやアイテムの数々が、日本に生きている自分の心を確実にくすぐる。壁にかかっているお面などはけして身近だとは言えないが、それでも日本のお面としてあり得ないデザインではないので、それらの実在を想像したりして、怖くなったりもする。風にそよぐカーテンや、チカチカと点滅する電灯など、とにかく全体的に細部にこだわったフィールドの数々は、歩いているだけでも十分に怖いシロモノだ。

そんじょそこらのお化け屋敷よりも断然怖い状況で進んでいくプレイヤーキャラ。これ、実際に1人で歩けって言われたらホント無理です……

 アドベンチャーゲーム的な謎解きも、ふんだんに盛り込まれているのだが、これに関してはやや簡単な印象を受けた。ほどほどに歯応えはあるが、ハードなアドベンチャーが好きな人からすれば物足りなさを感じるかもしれない。全体を包むホラーとしての質の高さが補っているという感じだ。

壁にかけられたお面。マジこれだけでも十分に怖いッス
至るところにメモや手記がある。それらを読んでいくと朧月島での恐怖の儀式の全貌が分かっていくだろう

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/09/news183.jpg JR東のネット銀行「JRE BANK」、申し込み殺到でメール遅延、初日分の申込受付を終了
  2. /nl/articles/2405/10/news144.jpg GACKT、「最上級グレードの外車」寄付も売り飛ばされ……“カスタムだけに3000万円”な元愛車の激安価格に「この値段なら買い戻すか」
  3. /nl/articles/2405/09/news162.jpg 「ずっと小児」 グランスタ東京の“母の日広告”に賛否…… 運営会社が撤去「違和感覚える方もいた」
  4. /nl/articles/2404/09/news169.jpg JR東日本、ネットバンクサービス「JRE BANK」を発表 JREポイントがたまるなどの特典も
  5. /nl/articles/1608/02/news135.jpg 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. /nl/articles/2405/10/news013.jpg 娘の部屋にあるゴツいメタルラック→パパが大変身リメイク! 驚きのビフォーアフターに「かわいい!」「細かいところまで!」
  7. /nl/articles/2405/10/news022.jpg ママもパパも双子赤ちゃんのお世話で手が離せないときは…… 赤ちゃんを見守る思わぬ“お姉ちゃん”が頼もしい
  8. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  9. /nl/articles/2405/10/news116.jpg 「ほんと凄すぎ」 加藤紗里、全身及んだ“人生で一番の大手術”から1か月……脂肪吸引で理想のスタイルへ「胸だけでかくて他は細い」
  10. /nl/articles/2405/10/news127.jpg 「ガチンコファイトクラブ」元2期生、現在は有名タレントの“マネジャー”だった……竹原慎二の“再指導”で約20キロ減「中途半端にやめやがって」
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評