「Apple Watchは失敗、売れない」? iPhoneのときにも同じこと言ってませんでした?同じ轍を踏む?

「Apple Watch」の登場により、スマートウォッチへの関心が高まっています。ですが、スマートウォッチを巡る議論はまだ腕時計か、スマホアクセサリーか、といった観点でしか語られていないように思います。その先にあるものは何か、考えていく必要があります。

» 2015年04月01日 11時42分 公開
[園部修ITmedia]
Apple Watch Apple Watchによってさらに注目が高まるスマートウォッチをどう見るべきでしょうか

 その歴史に一石を投じることになるかもしれない「Apple Watch」の発売が近づき、スマートウォッチには、かつてないほど注目が集まっています。Apple Watchの存在が最初に世の中に明らかにされた2014年9月から約半年の間に、さまざまなスマートウォッチが登場し、腕時計にもスマート化の動きが顕在化してきました。

 状況としては、スマートフォンが登場する前夜、PCが小型化してモバイル化し、携帯電話がより高機能になっていった頃と似ているところがあります。もともと出自は異なるものたちが、機能を突き詰めていく過程で新しいカテゴリーの製品として昇華していく。そんな雰囲気がスマートウォッチにも感じられます。

手首を巡る争い

 時計メーカーの人は、「腕は一等地」だといいます。肌身離さず持ち歩くものを身に付けるのに、腕は最適な場所だからだそうです。しかし、残念なことに人間の手首は右手と左手に1つずつしかありません。この一等地を巡って、スマートウォッチは激しい競争を繰り広げることになるわけです。

 腕にはすでに腕時計をしている人がいます。その時計を押しのけて、一等地を手に入れることができるのでしょうか。また昨今は、スマートフォンを持ち歩くようになったことで、腕時計をしなくなった人も多いと思います。そうした人たち、腕にスマートウォッチをしてもらうためには、特別な理由が必要でしょう。

 Apple Watchは、その特別な理由になりうる製品ですが、まだ製品としての完成度は高いとは言えません。ケースやバンドの質感の高さ、持ったときの喜びや満足感は特筆に値するものの、バッテリーの持ち時間など、機能面ではまだ問題があります。先行するAndroid Wearも似たような状況で、Apple Watchの登場を受けてどう進化していくのかは注目です。

 またApple WatchやAndroid Wear以外のスマートウォッチも、第3あるいは第4の選択肢として存在感を放つものがあります。VELDT(ヴェルト)の「SERENDIPITY」や、米国で話題のPebbleが開発した「Pebble Time」「Pebble Classic」をはじめ、通信機能を備え、スマートフォンそのものを小さくしたような製品なども登場しています。

 ただ、現状はまだ一部の先進的なユーザーが好んで使っているといった状況です。

腕時計のスマート化

コネクテッドウォッチ 「コネクテッドウォッチ」のように、スマートフォンと連携する腕時計も増えつつあります

 スマートウォッチに注目が集まる中で、腕時計の側もスマートフォンの存在が無視できなくなってきています。高級な宝飾品並みの価格の腕時計は別ですが、スマートウォッチと競合する価格帯の腕時計は、スマートフォン連携の機能を搭載する動きが見られます。

 先日スイスで開催された時計と宝飾品の展示会、「Baselworld 2015」では、TAG Heuer(タグ・ホイヤー)がIntel、Googleと協業してAndroid Wearを搭載するスマートウォッチの開発に乗り出すことが発表されました。Android Wear陣営には大きな力になるでしょう。

 また活動量計機能を搭載し、スマートフォンと連携する「Motion X」搭載の腕時計が有名ブランドからも登場しています。これらの腕時計は、まだスマートウォッチと呼ぶよりも、「コネクテッドウォッチ」とでも呼ぶべき、一部の機能をスマートフォンで代替する時計ですが、その進化の先には、スマートウォッチに近い世界があると考えられます。

スマートウォッチが活動量計を滅ぼす?

 スマートウォッチの高機能化と腕時計のスマート化の先には、恐らく新しいカテゴリーのウェアラブルデバイスがあるのだと思います。その中で、現在ウェアラブルデバイスの具現化したものとして一定の存在感を持っている活動量計(アクティビティ・トラッカー)は、役割を終えてしまうかもしれません。

 活動量計は、モーションセンサーによりユーザーの活動を計測し、歩いた歩数や消費したカロリー、また機種によっては脈拍数や睡眠の状態などを可視化するツールとしてすでに多くのメーカーから製品化されています。しかし、多くの製品はスマートフォンと連携し、腕に付けて使うことを前提にしており、その機能はスマートウォッチやコネクテッドウォッチに用意されているものです。ワープロ専用機がパソコンに取って代わられ役目を終えたように、活動量計は一部の高機能なものをのぞいて、スマートウォッチに取り込まれてしまうのではないでしょうか。

iPhoneのときと同じ「落とし穴」にはまらないために

 このように、スマートウォッチを巡る状況はいまだ混沌としていると言わざるをえません。

 ただし、現時点で1つだけ言えることは、この新しいデバイスを単に「時計としてどうか」とか「ウェアラブルデバイスとしてどうか」、あるいは「スマホと一緒に使うものとしてどうか」といった評価だけで語ると、未来を見誤る可能性があるということです。

 こうした新しい領域を切り開いていく製品を、既存の製品の延長線上で考えてしまうと、iPhoneが登場したときに「電話として使いにくい」「ボタンがないので売れない」と考えてしまったのと同じ落とし穴にはまってしまうかもしれません。当時、さまざまな理由をつけて「なぜiPhoneは売れないか」を語った評論家たちが、その後どのように手のひら返しをしたかを記憶している読者も多いことでしょう。

 Apple Watchは、これまでウェアラブルデバイスやスマートウォッチに特に興味を示してこなかった人たちが関心を持つ契機に成り得る製品であり、使用するアプリによってコミュニケーションツールになったり、将来的には医療器にもなったりする可能性を秘めています。単に「スマートフォンと時計」の文脈だけで捉えてしまうのは早計でしょう。

 進化したスマートウォッチがもたらす世界とはどんなものか。“一等地”である腕をめぐる攻防戦という意味でも、人々の利用シーンや生活シーンを変える存在に成り得るデバイスという意味でも、先入観を持たずに注目していく必要がありそうです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/08/news009.jpg スーパーで買ったリンゴの種に“粉”を振りかけ育てると…… まさかの結果に「どうして!?」「すごーい!」「やってみます」
  2. /nl/articles/2405/07/news109.jpg 「ロッチ」中岡、顔にたっぷり肉を蓄えた激変ショットに驚きの声 「これ…ヤバいって」「すごい変身っぷり」
  3. /nl/articles/2405/08/news006.jpg 娘が抱える小型犬の目を疑うデカさに「サモエドかと思った…」「固定資産税かかりそう」 意外な正体がSNSで話題
  4. /nl/articles/2405/03/news025.jpg 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  5. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. /nl/articles/2405/08/news014.jpg 1歳弟の歩行練習に付き合う柴犬、アンパンマンカーに乗って…… 「待ってましたー!!」「もうプロ級ですね」“師匠”なたたずまいに爆笑の620万再生
  7. /nl/articles/2403/13/news017.jpg 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」
  8. /nl/articles/2405/07/news153.jpg 注意書きや警告に添えると……? 天才的発想の“一発逆転キーホルダー”が10万いいねの大反響 「やめーやww」「好きすぎる」
  9. /nl/articles/2405/08/news018.jpg 2歳兄、4カ月の妹の周りをおもちゃで埋め尽くしたあと…… 妹をとことん楽しませる行動に「優しいおにいちゃん」「癒されてほっこり」
  10. /nl/articles/2405/08/news107.jpg 「悲しくなった」「リスペクトがない」「嫌悪感」――楽器や画材を潰すiPadの紹介映像が物議
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評