RMTは誰からも認知される“産業”となり得るのか:アジア オンラインゲーム カンファレンス2005
オンラインゲームに関するカンファレンス「アジア オンラインゲーム カンファレンス2005」が、2月28日、3月1日に渡って、東京・工学院大学で開かれている。韓国のRMT(リアルマネートレーディング)に関する実態を報告するセッションでは、韓国・中央大学の魏教授による講演が行われた。
RMTは本当に「悪」なのだろうか
ゲーム内で得たアイテムを、他人に売り渡す行為が「RMT」(リアルマネートレーディング)だ。韓国においてもRMTは否定的な見方が多く、ゲーム・サービス会社とアイテム取引仲介会社の対立や、「犯罪の温床になる」という市民団体(NGOなど)、青少年保護団体からの批判にさらされているという。
しかし一方で、RMTの市場規模は2005年の予測で1兆ウォン以上(約1000億円以上)と大きく、産業の規模としてはオンラインゲームの売り上げを上回っているのが現状であると指摘する。2002年頃に登場したアイテム取引仲介会社を通じて半分程度、残りの半分はユーザー間での取引により、RMTが行われていると魏氏は予測している。
「ゲーム内でゲットしたアイテムについては、ユーザーは自分の所有物であるという認識だ。アイテムをほかのユーザーと交換した人もいるだろうが、要は物々交換から貨幣経済へ移行しただけのこと。RMTはデジタル時代の新しい“市場”を形成する可能性がある」(魏氏)
韓国でのRMT経験者は、一般ユーザーでのデータを見ると、18歳以下の青少年では20%程度。それ以上の成人では1割弱。しかしMMORPGユーザーに限ってアンケートを採ると、3割ほどに上がるという。またこれに伴い、RMTでの詐欺に、2004年の調査では青少年50%、大人でも20%近くのユーザーが被害にあっているようだ。
魏氏は「ゲームといえども自由と公平が基本的哲学であるべきだ」と語る。ユーザーの認識としても、ゲーム内でのことはユーザーの判断に任せるべきであり、RMTを禁止することは反対である、とする人が多いという。
「自分の持つアイテムを他人に譲渡することを禁止したゲームは、ゲーム自体が潰れるし、かといってRMTを自由に行わせてしまうと、ゲームバランスが崩れ、こちらもまた自滅する。これをどのようにハンドリングするかが、ゲーム・サービス会社のノウハウとなっている」(魏氏)
ユーザーに対するトレーニングが重要
RMTについて、一般ユーザーはネガティブな意見を持つが、MMORPGユーザに限って見ると、意見は半々であるそうだ。これはゲームの種類にも、国によっても違う。
「全体的な傾向として、中国や東南アジアはRMTに対する寛容度が高く、日本やアメリカでは否定的な意見が多い。韓国ではちょうど中道的なところ」(魏氏)
結論として魏氏は、RMTについてはユーザーによるルールの形成が重要であり、結果よりも過程を重視するというユーザーの“進化”により解決していく問題であると強調する。
「リネージュで一時、3つの強力なギルドが独占状態を作り、一般ユーザーを閉め出したという事件が起きた。しかし低レベルのユーザーが結束し、人海戦術で高レベルのユーザーを倒し、結果としてその独占状態に対しての“革命”を起こしたこともあった。このことからも試行錯誤のプロセスを排除するのではなく、ユーザーをトレーニングすることが大事であるとも言える」(魏氏)
また、韓国では定額制による運営が難しくなってきており、最近では、ゲームプレイは無料で、アイテム販売による収益を上げるといったビジネスモデルが広まってきているが、これはゲーム運営会社によるRMTである、と魏氏。このことからもRMTは、デジタル時代の新しいプラットフォームになる可能性がある、と述べた。
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