コーエー松原氏による特別講演「Japan発Onlineゲームを成功させる戦略」:アジア オンラインゲーム カンファレンス2005
オンラインゲームに関するカンファレンス「アジア オンラインゲーム カンファレンス2005」が、2月28日、3月1日に渡って、東京・工学院大学で開かれている。コーエー執行役員の松原健二氏は「Japan発Onlineゲームを成功させる戦略」と題した特別講演を行った。
いよいよグローバルタイトルが出てきたと切り出す松原氏。昨年11月23日に北米・オーストラリア・ニュージーランドで発売され、特に北米では80万本以上の売り上げを記録した「World of Warcraft」のことだ。
2005年1月18日には韓国でオープンβテストを開始し、同時接続25万人。2月11日には欧州で発売を開始し、28万本の売り上げ、今年中には中国でのサービスを予定している。ここまで世界を総なめにしているタイトルは今までになく、すべての地域をカバーしているが、日本だけはサービス開始のアナウンスすらない、と日本のMMOを取り巻く現状と、オンラインの難しさを簡単に説明した。
松原氏は、オンラインゲーム市場におけるアジア圏(中国・台湾)のウエイトを、スクウェア・エニックスの2004年11月中間決算資料で説明。資料によると2004年度通期のオンライン売上高約140億円のうち、日本や北米などに比べアジア圏はわずか6億2800万円と全体の3%程度。日本、北米、欧州で55万人の会員数を獲得している「FINAL FANTASY XI」や、中国と台湾で1600万人の会員数を集め、月1億円の売上を誇る「クロスゲート」が大きく展開していたとしても、それほどビジネス的には大きくないと指摘する。
松原氏は先週2月24日に発売した「真・三國無双4」の海賊版が、翌日には5元(75円)ですでに出回っていたという中国の実態を踏まえて、パッケージ7割オンライン3割の中国のゲーム市場(ただし、パッケージゲームのほとんどは海賊版)でも「オンラインゲームが果たした大きなステップというのは、ゲームのビジネスが成立するようになってきた」という持論を展開。本来あるべき姿“開発・運営・営業を行なう”という社会が育ちつつあるという。
そんな変わりつつあるアジア市場だが、先にも挙げたとおり日本のオンラインゲームの浸透はまだまだ低い。中国のオンラインゲーム人口は全人口の約18%、2億5400万人と多く、日本企業がアジア市場でビジネスが成立するためには次のことを理解する必要があるとした。
すなわち、「オンラインゲーム人口が多く、ユーザー数拡大を見込める」ということと、「ゲーム性やビジュアル面に富む競合が少なく、差別化が図りやすい」という長所と、「ユーザー単価が低い」ことと、「運営、プロモーションコストの割合が高い」という短所だ。
アジア圏ではプリペイドカードでの決済が主流だが、日本に比べて極めて流通コストが高いと強調。また、日本と違ってゲーム性やビジュアル面でゲームを選ぶのではなく、あくまでも多岐に渡るオフラインイベントやプロモーションなどを重視していることから、これらの販売管理にかける比重が大きいと報告した。
これらの長所と短所を踏まえたうえで、コーエーがアジア市場で展開するには次の2つの段階を経る必要があるとした。「低コスト流通チャネルの確立」や「効率の高いプロモーション手法」を「現地パートナーとの提携」で現地運営を学ぶという第1段階。そして、「子会社による運営、営業」や「子会社での新作タイトル開発」などの第2段階を目指すべきだとし、2月28日に中国に完全子会社を設立したスクウェア・エニックスを例に挙げ、我々も続くべきだとした(ちなみにコーエーはシンガポールに子会社を設立し、「三国志オンライン」の製作を進めている)。
「先に述べたとおり、アジアにおけるオンラインゲーム市場は世界規模でいうと、それほど大きくない。ゲーム開発のアドバンテージはやはり日・米・欧が持っており、ビジネスとしてもまだまだウエイトは低いとしながらも、政府のコンテンツ開発支援などで今後のアジア地域のキャッチアップは目を見張るものがある」と発言。アジア市場から学ぶべきこととして、オンラインゲームは規模の拡大が利益を生むということから日本だけ、アジアだけという1地域ではなく、「グローバルをターゲットにしたゲームデザインが鍵を握る」と今後のオンラインビジネスを成功するための持論を述べた。
後半は、ゲームとしてグローバル展開するためには3つの求められるモノがあるとし、「企業タイトルブランド」「ゲームデザイン」「パートナーシップ」と挙げ、新規ベンチャー企業参入の難しさを述べ、コーエーが進めるオンライン事業を紹介。「信長の野望 Online」、「大航海時代 Online」、「真・三國無双 BB」の3タイトルのオンラインゲームの特徴を説明した。
今回の「アジア オンラインゲーム カンファレンス 2005」の講演を前に松原氏には取材し、その内容を掲載している。そちらも読むとよりコーエーのアジア地域におけるオンライン事業が見えてくるだろう。
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