“優しい”「イースIII」をしながら、微妙なお年頃ゲーマーは「イースIV」を思う(1/2 ページ)
イースシリーズといえば、日本ファルコムを代表する作品の一つ。そのシリーズ3作目に当たるタイトルが、タイトーよりPS2向けとして移植・発売された。オリジナル版のイースI・II、そしてIIIに強烈な思い入れのある筆者がレビューする。
微妙な時代に発売された、オリジナル版3作目
1987年にシリーズ1作目が発売されてから18年が経つ現在でも、数多くのファンを虜にしてやまないタイトル。それが、日本ファルコムを代表するRPG「イース」シリーズだ。最新作の情報も公開され、発売日が待ち遠しくてしょうがない人もいるかもしれない。そんなタイミングでタイトーから発売されたのが、1989年にPC-8801mk2SRシリーズ用としてデビューしたオリジナル版を、PS2へと移植した「ワンダラーズ フロム イース」――「イースIII」だ。
ファルコムから発売される最新作も、イースIIIを16年ぶりにリメイクした作品と言うことで、ある意味タイムリーな時期にリリースされたともいえる。そんな本作のレビューに入る前に、オリジナル版が出たときの背景を簡単に振り返ってみよう。
1989年当時、アーケードマシンとパソコンのハード差は大きく、完全移植にはまだまだほど遠い時代だった。そんな折に発売されたPC-8801mk2SR版イースIIIは、5年前にアーケードでリリースされた「ドラゴンバスター」を彷彿させる作品として登場。当時のファルコムといえば、イースI、IIやソーサリアンの追加シナリオなどで、非常に盛り上がっていた時期。技術力も業界トップクラスで、優秀な人材を数多く抱えていた。
しかし、前年の12月に発売されたピラミッドソーサリアンや89年3月に登場したスタートレーダーなどの作品で、エンディングにスタッフクレジットがなかったことや重要なスタッフが抜けたこともあり、今後の行方を心配していた人が多かった時期でもあったことは確か。
そんな微妙な時期に発売されたためか、当時の貧弱なハードだったPC-88シリーズで「ドラゴンバスター」を再現したと言うことでほめた人、逆に“ドラゴンバスターをパクっただけのダメな作品”などと言ってけなした人など、数多くの意見が渦巻いた。それほどまでに、前2作の印象が大きかったともいえるだろう。
実は、イースの1作目が出てから2作目が発売されるまでには、ほぼ1年間の期間が存在した。そしてその時間こそが、イースI、IIを類い希なる名作として輝かせた理由の一因でもあるのだ。だからこそ、イースIIから約1年待たされて発売されたイースIIIには、過大ともいえる期待がかかってしまうのも致し方のないこと。それ故に、一部の人が厳しい評価をしたのも理解できることだった。しかし、多重スクロールを多用したり、ハードの限界を突き詰めて作られた滑らかに動くデカキャラなど、技術的に驚くべきものがあったことは間違いない。それでいて、当時リアルタイムでプレイしていた身としても、不満の少ないタイトルだったと言い切れる。
最初の山を乗り切るまでが勝負
今や、ハードのスペックは日々進化し続けているので、フル3Dゲームなどは当たり前の存在になっている。そんな現代にあって、本作はサイドビュー固定の2D横スクロールアクションという、発売された当時そのままのシステムを採用した。これはある意味、現在のゲームしか知らない人間には斬新であり、また異質に見えただろうことと想像に難くない。オリジナル版をプレイしたことがある人ならば、グラフィックが綺麗になった以外はほぼそのままの移植、となるだろう。しかし元を知らない人は、本作のシステムに慣れるまで一苦労するに違いない。
基本的な操作方法は、方向キーまたは左アナログスティックの左右で自キャラの移動。上下は、階段の上り下りに使用する。□ボタンで剣を振り、○ボタンを押しっぱなしにすると剣を5回降っての連続攻撃となる。×ボタンでジャンプし、落下中に方向キー下+○または□ボタンで下突きが出せる。また、方向キーを上に入力して○か□ボタンを押せば、斜め前方に攻撃を出せる。敵を倒すと、Goldと共にリングパワーが入手できる。冒険の途中で入手したリングを装備すると、Ringパワーを消費してその力を引き出す仕組みになっている。
こうしてみると、操作自体は非常に簡単なのだが、実は敵との距離感をつかむまでが難しい。そのため、慣れない最初はHPが少ないことも相まって、非常に死にやすいのだ。しかも、オリジナル版はスタート直後が丸裸だったのが、PS2版ではボロいなりにも一応の装備をしている。そのため、つい買い物もせずに戦いに出てしまうのも、すぐにやられる原因の一つだろう。
とはいえ、当時そのまま移植してあるのだから、最初は街へすぐに戻れる場所で地道に経験値を稼ぎ、キャラを成長させるのが当たり前なのだ。そして、それさえ乗り切ってしまえば、そこから先で行き詰まることはまずない。イースシリーズのコンセプトの一つに“優しさ”がある以上、頭を悩ます意地悪な謎は存在しないからだ。アクションRPG初心者にはピッタリの、優しいゲームと言える。あとは、怒濤のごとく展開するストーリーに引き込まれ、気づけばエンディングを迎えていた、となる、はず。
オリジナルを知るファンの視点から見て、本作の出来映えは?
ここからは、オリジナル版を知る筆者の視点から見たPS2版イースIII、という形で検証してみたい。
アクション要素が入っているため、本作はプレイ開始前に難易度が選択できる。これも当時そのままなのだが、実際の難しさはまったく異なっている。特に、ほとんどのボスがパワーリングを装備すれば力押しで倒せるため、緊張感を感じるまもなく戦いが終わってしまうのが残念。
また、下突きが弱体化したため、一撃で倒せない相手に下突きで攻撃すると、大ダメージを受けてしまうのにも困った。ただし敵を正面から攻撃すると動きが止まるため、連続攻撃可能な○ボタンを押して正面で戦えば楽勝。距離感さえつかめれば、通常戦闘も簡単になったといえる。登場人物たちのセリフは、すべてが音声付きとなっているため、ともて新鮮に感じた。
キャスティングについては人それぞれと思われるが、悪くない選択という印象。BGMはオリジナルにほぼ忠実で、それでいて適切なアレンジが加わっているため、思った以上に耳に心地よかった。しかも、サウンドテストではいつでも好きな曲が聴けるようになっているので、非常に好感が持てた。それでも、イースI・IIには及ばない訳だが……。
しかし、全体的に見ていくと、削られた部分の多さが目立つのも分かる。例えば、オリジナル版の目玉であった多重スクロールは簡易化され、エレナとガーランドが共に現れるシーンもなくなり、エンディングもオリジナル版より少ないグラフィック枚数となっている。オープニングムービーも、あれならオリジナル版を再現してくれたほうがよかった、との話も聞く。さらに、当時はあまり深く考えなかったシナリオだが、どうもイマイチ盛り上がりに欠けるような気がしてならない。マップも、グラフィックはキレイになったものの、ほとんどのシーンが1画面ごとに細切れになっているのも残念というのが正直な意見だ。
ライトなRPGユーザーが、まさに“手軽に”遊べる1本
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