Virtual PCでメモリを「ガバッ」と確保して「Harpoon II」を動かす:勝手に連載!「レトロ“PC”ゲームが好きじゃー」(3/4 ページ)
作戦指揮は「段取り」がすべてなのだ。
新しく導入されたユーザーインタフェースと追加された新機能などなど、初代にましてHarpoon IIは「複雑」なゲームと評されるようになった。「作戦でできることが増えた」ゲームの常として、増えた機能を全部説明するためにマニュアルが分厚くなるのは当然のことである。ゲームをせずにマニュアルを眺めただけでは「複雑怪奇」と思うのも当然かもしれない。
しかし、実際にゲームを進めると、初代Harpoonがそうであったように、Harpoon IIの操作体系も「ゲームのための操作」ではなく、実際の作戦指揮の決定過程に則して整理された、いたって直感的な分かりやすい構成であることに気がつく。「複雑怪奇」とはまったく逆の「単純明快」なゲームなのである。
ただし、リアルタイムシステムで、かつ多数のユニットが広範囲に展開する状況で、シミュレータゲームのように、個別の部隊へ速度や針路をリアルタイムに指定したり、ミサイルの発射をその都度命令するような戦いをすれば、部隊と戦況の把握は不可能になる。「何が起こっているか、さっぱり分からないうちに一斉攻撃を受けて全滅」というHarpoon初心者がよく陥る状況はこういうときに起こる。
複数の部隊を擁する作戦を指揮するとき、必要なのは「個別の部隊に場当たり的な命令をリアルタイムで下す」ことではなく、「作戦目標を達成する行動計画を立案して実行させる」ことにある。ヒゲをはやして威張っている将軍や提督(とその取り巻きの司令部幕僚)といってもやることは「段取り上手な宴会の幹事さん」とそれほど違わない。
作戦を成功させるための段取りというのは「艦隊陣形における兵力配置」だったり、「艦隊の進撃針路」であったり、「哨戒区域の策定」だったり、「攻撃兵力の編成と武装の選択」だったりする。
Harpoon IIではそのあたりの「段取り」を直感的な操作で設定できる。
艦隊陣形の兵力配置を指定したければ「Formation Editor」を起動して、ASW、ASuW、AAWそれぞれに兵力を割り当てて、マウスで配置場所と警戒担当エリアを設定する。Harpoon IIでは航空兵力、潜水艦、水上兵力それぞれに脅威軸(攻撃が予想される方向)をFormation Editorに指定して、脅威軸方位の変化に合わせて、ASW、ASuW、AAWに割り当てた艦船、航空機の配置を「自動で」変更する機能が盛り込まれている。
哨戒や攻撃を実行するなら、行動目標(攻撃任務なら攻撃目標を、哨戒任務なら索敵するエリア)をマウスで選択してからMission Editorを起動して、任務に赴く部隊の割り当て、武装の選択、行動中の速度、高度、センサーのモード、などをプロットする。
あとは、こうして立案した行動を粛々と実行していけばいい。きっと予期せぬ敵を発見したり、予期せぬ攻撃を受けたりするだろう。発見した敵にはMission Editorで攻撃任務を立案すればいいし、攻撃してきた敵には、そのユニットをクリックして表示される迎撃部隊を向かわせればいい。
このように、実際の作戦指導の過程で行われるであろう流れに沿って、Harpoon IIというウォーゲームの中でもユニットのコントロールが行われる。初代Harpoonの改善要求として「ミサイル1本単位の武装や1機1隻単位の移動、武器の発射など、ユニットをもっと細かく操作させて欲しい」という声があったのも事実だ。しかし、Harpoonは原則的に艦隊レベルの戦闘を再現する「作戦級」ウォーゲームであることを考えると、このゲームデザインにおける「詳細と省略のバランス」は非常によく取れていると思える。
実を言うと、この「直感的な命令体系」は初代Harpoonですでにある程度確立している。ユーザーインタフェースをはじめとして、Harpoon IIで追加された新機能はゲーマーの「省力化」がメインであったので、初代Harpoonでも運用次第でHarpoon IIと同じような「作戦指揮」は可能なのだ。このことが、初代HarpoonがHarpoon Classicとして今も存在する理由でもある。
ただ、Harpoon IIで採用された「通信システム」「補給」などの概念は、海軍作戦の可能性において重要なテーマを与えてくれる(とくに空中給油のサポートは、防空作戦におけるこの種の機体の有効性について興味深い考察を提供してくれるはずだ)し、それとは別に、日本人ゲーマーにとって大きな存在理由がHarpoon IIにはある。
それは「自衛隊」である。
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