総合芸術としての「超兄貴」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/3 ページ)
メンズビームが超気持ちいい
大銀河ボディービルコンテストで10連覇を果たした、ビルダー星帝王・ボ帝ビル。だが母星のプロテインが底をつきかけていた。プロテイン採掘プラント建設のため、ビルは近隣の惑星に無差別侵攻。天界の韋駄天(イダテン)と弁天(ベンテン)はこれに危機感を覚え、ビルダー軍の壊滅に乗り出した!
まあこのストーリーだけ見ても、“筋肉最高”な世界観がうかがい知れよう。
ゲームをスタートし、韋駄天と弁天のどちらかを選ぶ。両者の最も大きな違いは、特殊攻撃である。
「超兄貴」では、IIボタン押しっぱなしで通常弾が連射され、ボタンを離すと特殊攻撃が行なわれる。
韋駄天の特殊攻撃は、一直線に飛んでいく“メンズビーム”! 一方、弁天の特殊攻撃は、斜め方向を攻撃できる。
特殊攻撃は、使いやすいうえに威力が強く、回数制限もない(これとは別に、回数制限のあるボムもある)。多くの敵をまとめてなぎ倒せる気持ち良さが、このゲームの隠れた売りといえる。
BGMやグラフィックのインパクトだけではない。「超兄貴」は、ゲームそのものもよくできていた。
通常弾の方も、パワーアップさせることで、なかなか気持ちのいい威力になる。特定の敵を倒すと出てくる“プロテイン”を取れば、10段階にパワーアップできるのだ。
うれしいことに、自機(韋駄天・弁天)がやられても、パワーアップは1段階落ちるだけ。初期状態までは落ちない。これは、コンティニューした時も同様だ(もっとも、通常弾が弱くなっても、特殊攻撃があるからどうにかなるのだが)。
もうひとつ、このゲームで特筆すべきは“オプション”の存在だ。
オプションというのは、例えば「グラディウス」に出てくるような、“自機の近くにいて、一緒に攻撃をする物体”である。「超兄貴」ではこのオプションが、筋肉男の「サムソン」と「アドン」になっているのだ。
オプションは2体まで、はべらすことが可能。どのオプションもメンズビームを撃てる。特に弁天でプレイしている場合は、前方をカバーしてくれるので便利だ。
オプションもプロテインでパワーアップできる(5段階)。また、オプションは敵の弾を受けても、ある程度耐えられる。
IIボタンを押しながらIボタンを押すと、オプションが敵に特攻する。元に戻すこともできるが、その前にオプションの体力がなくなって、消えてしまうことも多い。
……とまあ、このゲームのシステムを冷静に書いてはみたけれど、この“オプション”というのが、サムソンだったりアドンだったりするわけで。
彼らが太いビームを頭から出したり、敵の弾をくらって耐えていたりするさまを、リアルに想像すると、やっぱり妙だ。
声が聞こえる、奇妙な声が
「超兄貴」で特に高い評価を得ているのが、そのBGMである。
キャラ選択が済んで、さあ1面スタートというときに、流れてくるのがこんな声。
「るぁ〜るぁるぁ〜るぁるぁるぁ〜るぁ〜るぁ〜るぁ〜るぁ〜……」
いきなりただものではない。
ほかのBGMも、「さん、はい、わっわわっわ……」、「ちょわわわわ〜ちょわわわわ〜……おーマッチョダンディー、昔から憧れてました」などなど、インパクトの塊。
ボスキャラに合わせたBGMもある。汽車タイプのボスが出たら「しゅっぽ、しゅっぽ、しゅっぽぽしゅっぽ」、筋肉男のシンクロナイズドスイマーズ(!)が出たら「セクシー、ダイナマイト」。
これらのBGMは、ゲームの枠を飛び出して話題となる。特にテレビ番組でよく使われていた。
例えば、当時の人気番組「ウゴウゴルーガ」でひんぱんに流れていたし、「ジャングルTV タモリの法則」では長期間、料理の作り方を説明する映像のBGMとして使われていた。
もちろん、「超兄貴」のBGMは音楽CD化された(「超兄貴−兄貴のすべて−」)。その際、作曲者・葉山宏治氏による新曲も収録されたが、それらがまたいい曲だった。ドイツドイツの拡大バージョン「世界の兄貴達」や、ニュースでよく使われる言葉をぐちゃぐちゃにつなげた「兄貴と私」など。
私も、大学の後輩と一緒に、カラオケで「世界の兄貴達」を歌ったことがある。
「超兄貴」ではBGM以外にも、声が効果的に使われている。
オプションの筋肉男(アドンorサムソン)を取ったときには、低い声でひとこと「はい」
韋駄天がプロテインを取ってパワーアップすると、「ビルドアーップ!」
アドンorサムソンの体力が尽きると、消え入るような声で「兄貴ぃ……」
これだけ多くの声が使えるのは、PCエンジンCDロムロム、しかもスーパーCDロムロムならではといえるが、ただ声を入れ込むだけではなくて、世界観の構築に、それを大いに役立てているのがすごい。
「超兄貴」は、シューティングゲームであると同時に、ひとつの世界観を表現するために、映像、絵画、音楽を組み合わせて、それにインタラクティブ性を加えた、“総合芸術”でもある。
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