“いやし”とは少し違う。「ぼくなつ」は世のオヤジたちへの励まし「ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!」レビュー(1/3 ページ)

昭和50年頃に小学生だった世代というと、いまは30代後半から40代前半くらい。会社ではそれなりに責任ある立場になり、あるいは家庭を持ち、以前ほど若くはなくなった体に鞭打ちながら日々奮闘しては、そしてちょっぴり疲れているいとおしい同世代の人々へ。僕は「ぼくなつポータブル」を強く勧めたいと思う。

» 2006年07月12日 00時00分 公開
[小泉公仁,ITmedia]

プレイステーション版「ぼくのなつやすみ」を6年ぶりにPSPでリメイク

 何か古いものに触れてしきりに懐かしがるような真似だけはしたくない、と常々思っていたはずなのに、この頃の僕ときたら“懐かしさ”がやけに心地いい。80年代に流行ったアイドル歌謡が無性に聴きたくなったり、コンビニでマルカワのフーセンガムを見つけて思わず買ってしまったり。去年のことだが、東京都内の某百貨店で開催された「タイムスリップ昭和展」なるイベントに足を運んだときには、猛烈に感動したね。その中に昔懐かしい給食を食べられるコーナーがあって、そのメニューというのが、鯨の竜田揚げ、揚げパン、ソフト麺とミートソースなどなど、自分の小学生時代を思い出させるものばかりで、それをアルマイト製の安っぽい食器と先割れスプーンで食べるのだ。このときばかりは、同行した友人と一緒になって「懐かしい、懐かしい」を連発してしまった。

 要するに、年を取ったってこと。そのことに抗ってみても仕方がないので、この際、懐かしさを感じてホッとしたり、穏やかな気分になるのを素直に楽しんでしまおうと思うようになった。こうしてまた1人、懐古趣味のオヤジ誕生。

画像 長らく音沙汰がなかった“ぼくなつ”シリーズに、待望の新作登場。1作目のリメイクではあるが、昆虫や登場人物が増えたほか、オリジナルのプレイステーション版で残された謎も明らかになる?

 で、今回のお題はPSPの「ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!」(以下、ぼくなつポータブル)なのだが、このゲームには少年時代の遠い記憶を呼び覚ますようなモチーフが多分に盛り込まれていて、プレイしているとそのノスタルジックな雰囲気にぐいぐいと引き込まれ、童心に返るような思いがしてくる。

 “ぼくなつ”シリーズは、2000年6月にプレイステーションで1作目の「ぼくのなつやすみ」が登場し、2年後の2002年7月には続編の「ぼくのなつやすみ2 海の冒険編」がプレイステーション 2でリリースされ、2作の累計出荷本数は100万本を超えるヒット作だ。また、1作目はCESAが主催する第5回日本ゲーム大賞(2000年)で、ニューウェイブ賞とパッケージデザイン賞をダブル受賞している。

 今回のPSP版ぼくなつポータブルは、1作目のプレイステーション版をリメイクしたものだが、昆虫採集で捕まえられる虫の種類が倍増していたり、新キャラも登場するなど、様々な新要素が加えられているらしい。とにかく懐かしがりたくて仕方がないいまの僕にはピッタリかもしれない。

 基本的なストーリーは、プレイステーション版のそれと変わっていない。時代設定は、いまから約30年前の昭和50年(1975年)。主人公(=プレーヤー)で小学3年生の“ボク”は、母親が臨月を迎えたため、夏休みの間、北関東の田舎に住む叔父の元へ預けられることになる。豊かな自然が残る田舎町で、都会では見られない珍しい昆虫を捕まえたり、魚釣りに興じたり、叔父の家族や地元の子供たちとも交流しながら8月の1カ月間を過ごしていく。

画像 父親に連れられて、親戚の空野家にやってきた“ボク”くんがこのゲームの主人公。空野家は2人の娘がいる4人家族で、陶芸を生業にしている。ちょっぴり人見知りしているボクくんがかわいい
画像 空野家に居候する1カ月間、ボクくんは2階の空き部屋を使わせてもらうことになる。どうやらこの部屋は、亡くなった長男の部屋だったらしいが……

 このゲームがすごいと思うのは、人物像や舞台設定などが説明過多にならず、プレーヤーの想像力をもりもりとかき立ててしまうところ。プロローグを見ている間にも、いろいろなことが想像される。ボクくんの母親は、たぶんお産のため実家に戻っているのだろう。もしかしたら向こうの病院で入院しているのかもしれない。父親も仕事があるから、小学3年生のボクくんを一人で家に残しておくわけにもいかないのだろう。そこで夏休みの間、妹夫婦の元に預けることにした。その空野家には、第2子で男の子がいたが、事故か何かで不幸にも亡くなってしまったようだ。そのためか、空野家の人々はボクくんにその子の面影をつい重ねてしまう。そもそも従兄弟にあたるのだから、顔立ちも少し似ているのかもしれない……。

 主人公にあえて名前を付けず、一人称も二人称も“ボク”で統一したことや、キャラクターデザインに上田三根子さんを起用したことも感情移入を促す一因だろうと思う。彼女の描くシンプルで誰もが好感を抱きやすいキャラクターは、自分の身近にいる誰かと重ね合わせやすく、ゲームという作られた世界でありながら、プレーヤー個々の現実ともリンクしてしまうから不思議だ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2403/26/news158.jpg 元横綱・貴乃花、再婚後の激変ぶりに驚きの声 ヒゲ生やした近影に「ショーケンみたい」「ワイルドー」
  2. /nl/articles/2403/27/news130.jpg 中山美穂、金髪&ミニ丈の大胆イメチェンに視聴者びっくり! “格付け”出演の最新ビジュアルに「誰だか分からなかった」
  3. /nl/articles/2403/26/news169.jpg 「『ちゅ〜る』の紅麹色素は大丈夫?」 小林製薬の「紅麹」報道で飼い主に不安広がる
  4. /nl/articles/2403/27/news126.jpg ミス筑波大モデル、25キロ減量したビフォーアフターに「ホント凄い」 整形疑う声も「元々は埋もれてたようですね」
  5. /nl/articles/2403/26/news161.jpg 【まとめ】小林製薬「紅麹」問題 味噌や酒など紅麹原料使用メーカーの自主回収相次ぐ 20社以上が発表
  6. /nl/articles/2403/27/news127.jpg 日本エレキテル連合・中野、ネタで酷使し容姿に異変→手術を決断 「ダメよ〜、ダメダメ」でブレイク、2022年にがん公表
  7. /nl/articles/2403/20/news067.jpg 「紫のトトロ買った」 “ジブリを1ミリも知らない”友だちから連絡→まさかの正体に爆笑 友だちはその後ジブリを見た?
  8. /nl/articles/2403/26/news016.jpg ドイツ人家族が日本のバウムクーヘンを実食、一番おいしいと絶賛したのは…… 満場一致の結果に「参考になります」「他の食べ比べもお願い」
  9. /nl/articles/2312/30/news041.jpg 「紫のトトロ買った」 “ジブリを1ミリも知らない”友人から連絡→まさかの正体に爆笑「それトトロやない」
  10. /nl/articles/2403/26/news145.jpg 「ご安心ください」 “紅麹ショック”でDHCとファンケルが声明…… サプリ販売は継続中 小林製薬では死亡患者がサプリ摂取
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」