“いやし”とは少し違う。「ぼくなつ」は世のオヤジたちへの励まし「ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!」レビュー(2/3 ページ)

» 2006年07月12日 00時00分 公開
[小泉公仁,ITmedia]

捕虫網を手に野山を駆け回るうち、心は小学3年生の自分に返る

 このゲームには、「これをしなければならない」といったノルマやクリア条件は特に設定されていない。とにかく夏休みの1カ月間を田舎で“過ごす”だけなのだが、そこにはたくさんの楽しみが待っている。たとえば、あたりを飛び交う様々な種類のチョウやトンボを虫取り網で捕まえて、叔父さんからもらった昆虫採集セットで昆虫標本を作るのも一つ。クヌギの木に砂糖水を塗り、カブトムシやクワガタを捕まえたなら、地元の子供たちと虫相撲で競い合うのも楽しい。小川や池の畔に行けば魚釣りができるし、高台に登れば凧揚げもできる。他にも、朝のラジオ体操、朝顔の水やり、縁側で線香花火と、子供の頃に体験したことがゲームの中にいくつも出てくる。

画像 空野家に来た翌る日、叔母さんから「お花好き?」と訊かれるが、「はい」と「いいえ」のどちらを答えても、有無を言わさず朝顔の水やり当番に任命されてしまう。小学生の頃、園芸係だった僕としては、喜んで引き受けたい
画像 “ぼくなつ”一番の醍醐味は、やはり昆虫採集。チョウにトンボ、蝉など、様々な種類の虫を捕まえて、それを虫かごで飼ったり、昆虫標本にして残すことができる。そういえば、モンシロチョウって昔は珍しくも何ともなかったのに、最近じゃ滅多に見られなくなったなぁ……

 プレイステーション版からの変更点としては、まず捕獲できる虫の種類が128種に倍増したことと、まだ一度も捕まえていない虫が近くを飛んでいると「NEW」のマークで示されるようになったことなどが挙げられる。また、虫の種類が増えたこともあって、通常の虫かごとは別に「ジャンボくん」という大きな虫かごも用意され、たくさんの虫を生きたままキープできるようになったほか、これまでは家に戻らないと作れなかった昆虫標本が、PSP版では外にいても作れるようになった。

画像 ボクくんの近くにまだ捕まえたことがない虫がいると、「NEW」のマークで示されるようになったのが便利。それでも128種の虫を1カ月の間にすべて捕まえようと思うと、かなり難儀するはず
画像画像 プレイステーション版では、虫かごがいっぱいになると1匹だけポケットに入れることができたが、それ以上は捕獲できなかった。今回のPSP版では「ジャンボくん」という虫かごも用意され、たくさんの虫をキープできる

 また、ハードがPSPになったことで、ゲーム映像もいっそう美しくなった。プレイステーション版も当時としては美しい画面だったが、キャラクターや昆虫などのモデリングが少し雑に思えたのに対し、PSP版の“ぼくなつポータブル”では使用できるポリゴン数や色数が増えて、特にチョウなどは羽の模様もまるで本物のようにキレイ。昆虫採集に対する意欲がますます高まる。

画像画像 プレイステーション版“ぼくなつ”(左)とPSP版“ぼくなつポータブル”(右)でアゲハチョウの標本を見比べてみると、輪郭のなめらかさや羽の模様の忠実さがこんなに違う

画像 前作でも大いにハマった虫相撲。甲虫らしい光沢感がPSPの高度なグラフィック性能で見事に表現されている
画像 今回から、捕まえた甲虫の中から3匹を「お気に入り」に選んで、2周目に引き継げるようになった。また、PSPの無線LAN機能(アドホックモード)を使って、「お気に入り」の甲虫を交換することも可能

 ちょっと残念だったのは、ゲーム映像がPSPのワイド画面にフル表示されないこと。持ち物などを見るサブ画面はワイドでフル表示されるが、移動中の風景などは左右が切れた状態になってしまう。この件はインタビューの中でも触れられているが、オリジナルの背景画がすべて手描きで作られていたために、新たに描き起こすことが難しかったようだ。また、PSPには振動機能がないのでやむなしだが、捕虫網で虫を捕まえたとき、コントローラーがブルブルッと震える演出もなくなっている。

 ぼくなつポータブルをプレイしていて気づくのは、単に子供のときの夏休みを懐かしさとともに思い出させるだけでなく、遊んでいるうちにいつしか心まで小学生に遡っている錯覚に陥ることだ。たとえば子供の頃には、虫を追うことに夢中になりすぎて、気がついたらずいぶん遠くまで来ていて、日暮れが迫っていたなんてことがよくあった。このゲームでも全く同じで、虫のことで頭がいっぱいになっていると、時間が過ぎるのをすっかり忘れてしまう。

 また、まだ生きている虫に防腐剤を注射し、展翅板に乗せて標本にするときは、子供心にも少し残酷さを覚えたものだが、“ぼくなつポータブル”でもそれと同じ感情がわき上がってきて、虫を標本にすることにどうも躊躇する。それが「ゲーム」と分かり切っているはずなのに、まるで子供のように感情を上手に整理できなくなる。このゲームには、そういった胸奥の心情にふっと触れるような場面が時折出てくる。

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