“波紋疾走”を何のためらいもなく「オーバードライブ」と読む人に捧げる、ハートがふるえるアクションゲーム「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」レビュー(1/2 ページ)

バンダイナムコゲームスから10月26日に発売された「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」は、人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」第1部の世界を忠実に描いた波紋疾走アクションゲームだ。波紋疾走アクションゲームとは何ぞや? 波紋が疾走するアクションゲームなのです(って何も説明してない……)。

» 2006年10月27日 21時20分 公開
[仗桐安,ITmedia]

おまえは今までにやったジョジョゲーの数を覚えているのか

 冒頭の見出しから、何やら高圧的な文体で申し訳ない。と言っても、この見出しを読んで純粋に「高圧的だな」と思った方は、おそらく生粋の「ジョジョの奇妙な冒険」ファンではないだろう。逆に「お、ディオのセリフ!」と思った方は熱心なファンなはずだ。

 このたびバンダイナムコゲームスから発売されたプレイステーション2用タイトル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」は同名のコミックをゲーム化したものだ。「週刊少年ジャンプ」で荒木飛呂彦先生が「ジョジョの奇妙な冒険」の連載をスタートさせたのが1987年のこと。現在は「ウルトラジャンプ」で連載が継続している息の長いシリーズで、コミックス累計販売部数が7000万部を越える人気コミックである。

 タイトル通りに“ジョジョ”が主人公(もしくは中心人物)の“奇妙な冒険”が一貫して描かれてはいるのだが、物語は何度も区切りを迎え、そのたびに違う“ジョジョ”による新しいストーリーが展開してきた。現在連載中の「スティール・ボール・ラン」というタイトルを持つ作品は、第7部に相当する。そして、今回ゲーム化された「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」は第1部にあたる、言わば“元祖ジョジョ”と言ってもいい作品だ。

 「ジョジョの奇妙な冒険」は連載開始当初から熱狂的なファンに支えられてきた。元々は第3部までの構想しかなかったところが、第4部以降も続くことになったという経緯も、ファンの熱い支持があってこそだろう。そんな「ジョジョの奇妙な冒険」は、今までもたびたびゲーム化されてきている。歴史をさかのぼるとスーパーファミコンにいきあたる(厳密に言えば「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラがゲームに登場したのはファミリーコンピュータの「ファミコンジャンプ 英雄列伝」が初めて。続編である「ファミコンジャンプII 最強の7人」にも何人かのキャラが登場している)。今までにリリースされた「ジョジョの奇妙な冒険」のゲームをここに挙げてみよう。

  • 「ジョジョの奇妙な冒険」:1993年にコブラチームから発売されたスーパーファミコン用タイトル。第3部の内容がまるごと収録されている。横スクロールを多用したアドベンチャー要素の強いRPGだった。
  • 「ジョジョの奇妙な冒険」:1998年に稼動開始したカプコンのアーケードゲーム。第3部の世界を舞台にしたカプコンお得意の2D格闘ゲームだ。第3部から登場した独自の概念“スタンド”をうまくゲームシステムに取り込んでおり、好評を博した。後にプレイステーションに移植された。
  • 「ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産」:1999年に稼動開始したカプコンのアーケードゲーム。前年にリリースされた格闘ゲームの続編で、キャラの追加やモードの追加などが盛り込まれた。同年にドリームキャストに移植された(前作「ジョジョの奇妙な冒険」とのカップリング収録)。
  • 「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風」:2002年にカプコンから発売されたプレイステーション2用タイトル。第5部のキャラクターたちを操作してストーリーを進めるアクションゲームだ。
ジョナサン・ジョースターとなって、ディオの野望を打ち砕け!

 このように何度となくゲーム化されてきている「ジョジョの奇妙な冒険」であるが、第1部がゲーム化されたのは今回が初めて。なぜ今、第1部である「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」なのかといえば、既報の通り「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド共同プロジェクト」なるものが展開しているためだ。荒木飛呂彦先生執筆25周年を記念したプロジェクトの一環として、そのほかに「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」の劇場用アニメ映画が来年の公開を控えている。この映画、ファンなら見逃す手はないだろう。そして、ファンならプレイしない手はないのが、本作「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」だ。

ストーリーとか、グラフィックとか、サウンドとか……そこにシビれる! あこがれるゥ!

奇妙な見出しが続くが、ジョジョファン向けのセリフパロディである。どうかご容赦いただきたい

 さて、本作を語るにあたって、まず触れておきたいのがその物語だ。ファンには説明するまでもないだろうが、本作の舞台は19世紀のイギリス。名門貴族であるジョースター家の1人息子、ジョナサン・ジョースター(主人公・ジョジョ)と、養子であるディオ・ブランドーの2人を軸に、前半はサスペンス色の強い物語が展開していく。中盤からは、謎多き石仮面によって超人的な能力を手に入れたディオと、波紋という不思議な呼吸法をツェペリ男爵から会得したジョジョの、死力を尽くした激しい戦いが繰り広げられる、という内容になっている。


2人の数奇な運命から、壮大なジョジョサーガが幕を開ける

 メインであるストーリーモードは、原作の流れをほぼ忠実に再現しきっており、細部までこだわって作っている感がひしひしと伝わってくる。まず感心するのは、やはりそのグラフィック。原作はマンガなのでもちろん2次元なのだが、荒木先生独特のタッチをくずすことなく、3次元描写を成功させている。アップのシーンで現時点でのプレイステーション2のポリゴンの限界を感じる面もあるにはあるが、ここまで原作の絵を3D化できていれば、上出来だと言っていいだろう。

途中のムービーシーンのキャラとプレイ中のキャラが同じくらいのクオリティで描かれているので「プレイとムービーで、何かちょっとキャラが違う……」という違和感は一切なく、スッと入り込めるはずだ

 グラフィックという点でいえば、見逃してはならないのが、数々の擬音の描写だ。「ジョジョの奇妙な冒険」(特に第1部、第2部あたり)の魅力のひとつに、その特徴的な擬音がある。ディオとエリナ(ジョジョと相思相愛の女性キャラ)がキスをしたときにズキュウウウンという擬音が表記されたり、ツェペリ男爵がカエルを殴ったときにメメタァという擬音があらわれたり、緊張感あるコマでゴゴゴゴゴゴ、ドドドドドド、衝撃的なコマでドッギャアアアン、執事がイジケるコマでイジケーなど、読者がビックリするような、それでいて“奇妙”でクセになる擬音が満載で、ファンの間ではよく話題にのぼる要素だ。この擬音の表記はゲーム内でもしっかり再現されており、しかも動きがついて登場する。さながら電子コミックでも読んでいるかのような新鮮さを感じることだろう。


やはり、第1部の擬音といえばメメタァ。カエルを殴ってなぜメメタァなのか、未だに謎だ

数々の名ゼリフも、ことごとく再現。「無駄無駄」、「貧弱貧弱ゥ」、「スピードワゴンはクールに去るぜ」、「ふるえるぞハート、燃えつきるほどヒート」など、ファンにはたまらないセリフを聴くことができる。ただ、あまりに有名なセリフの誤植「何をするだー」はさすがに「何をするんだー」になっていた

 また、ファンなら気になるであろうポイントが声優による声の演出だと思う。これは飽くまでも主観に過ぎないので、何とも言えないのだが、個人的にはほぼ違和感なく入り込めた。ロバート・E・O・スピードワゴンの声が想像していたよりも若干若いなとは思ったが、全体的には納得のいく範囲だった。

個人的に残念だったのはメインのナレーションで語尾につく「ッ」の勢いがうまく表現されていなかった点。筆者もファンなのでいろいろ気になってしまうのである

 こればっかりはそれぞれにイメージもあると思うので「○○ってこんな声なのか……」という意見はそれぞれにあるだろう。気になるファンは、ぜひプレイして確認してみてほしい。細かいな、と思ったのは、ジョジョとディオの声が、話が展開し7年の歳月が経った時にちゃんと変わっている点。当たり前と言えば当たり前だが、細かい演出の徹底がうれしかった。完全フルボイスというのも大いに評価したい。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/16/news082.jpg 「なんだろ」 大谷翔平の背中に“違和感”覚える人続出 → 明かされた“納得の正体”に「そういう事だったんか」
  2. /nl/articles/2503/16/news031.jpg 「楽園???」 サイゼリヤで大豪遊 → “会計1人2000円以下”で収まった食事内容に思わず仰天 「庶民の味方」「ほぼ無料」
  3. /nl/articles/2503/14/news019.jpg ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  4. /nl/articles/2503/16/news052.jpg 「もっと早く知りたかった」 ユニクロ“3990円パンツ”が売り切れ続出の大反響 「一生これで良い」「最高の着心地」
  5. /nl/articles/2503/16/news080.jpg 夫は箱根駅伝、妻は大学女子駅伝優勝の“最強ランナー夫婦” 引っ越しの手伝いをきっかけに急接近→現在は夫婦でランニングスクールを運営
  6. /nl/articles/2503/08/news018.jpg 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  7. /nl/articles/2503/11/news017.jpg 着古したマフラーとセーター、切らずに手縫いするだけで…… 春も大活躍のリメイクに「アイデアに脱帽」「素晴らしい」
  8. /nl/articles/2503/11/news009.jpg 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  9. /nl/articles/2503/15/news044.jpg コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  10. /nl/articles/2503/15/news057.jpg 「足の疲れ具合が全然違います」 ディズニー行くときおすすめの“神アイテム”が話題沸騰 「試してみたい」と2390万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  2. 愛猫が見つめる先にいるのは……? “まさかの来訪者”に思わず仰天 「うそっ?」「お庭に来るんですね!!」
  3. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  4. 壊れて捨てるしかないバケツをリメイクしたら…… 想像もつかない大変身が830万再生「想像力がすごい」【海外】
  5. そうはならんやろ ヤマト運輸公式とLINEで遊んでいたら…… 突然訪れた“予想外の展開”に28万いいね
  6. 「ウソやろ」 松屋の“530円丼”、衝撃的なビジュアルにネット騒然 「コレで良いんだよ丼」「開き直り感がすごい」
  7. ダイソーのセルフレジが「身に覚えのない商品」を認識→“まさかの正体”に大仰天 「そんなことあるんですね」
  8. 余ってるクリアファイル、半分折ってカットするだけで…… 目からウロコな便利グッズに「天才すぎる!」「素晴らしいアイデア」
  9. 「マジで天才」 無印良品から新発売の“350円文房具”に絶賛の声相次ぐ 「便利すぎる!」「これはいい」
  10. 「スト6」の公式世界大会で福島県のチームに所属する「翔」が優勝 賞金100万ドル獲得
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に