絵本をめくるように物語を楽しむRPG「Riviera〜約束の地リヴィエラ〜」レビュー(1/3 ページ)

過去にワンダースワンカラーとゲームボーイアドバンスで発売され、隠れた名作との呼び声も高い「Riviera」が、今度はPSPで登場。携帯ゲーム機でプレイすることを前提に考案された独自のシステムは、まるで絵本のページをめくって物語を読み進めるような感覚で楽しむことができ、他のRPGとはひと味違う。

» 2006年11月27日 12時00分 公開
[小泉公仁,ITmedia]

フルボイス化とイベントCGの増量で物語の深みが増した印象に

 PSPというと、プレイステーション 2などからの移植やリメイク作品が目立つせいか、「据置型ゲーム機のゲームがほぼそのままのクオリティで遊べる携帯ゲーム機」というイメージが強い。それだけ携帯ゲーム機の中でも性能が高いという証であるし、PSPにとって最大のアドバンテージでもあるが、一方で「携帯ゲーム機ならでは」と感じられる作品にやや乏しいような気がしていた。

 その点でいえば「Riviera〜約束の地リヴィエラ〜」(以下、Riviera)は逆で、過去に別の携帯ゲーム機で発売されていた作品をPSP向けにリメイクしたもの。元々は、2002年にワンダースワンカラー専用(スワンクリスタルにも対応)ソフトとして発売されたもので、当時こそあまり話題にならなかったが、できの良さから一部のゲームファンには注目されていたようだ(私も当時は全く知らなかった……)。転機となったのは、その2年後にキャラクタービジュアルなどを一新したゲームボーイアドバンス版が発売され、これが好評を博してファン層が広がった。そしてさらに2年を経て、今回のPSP版発売となった。

 この「Riviera」を開発したのは、スティングという会社。スティングの名を世に知らしめたのは、1998年にセガサターンで発売された「バロック」(後にプレイステーションにも移植)というRPGだろう。詳しくは割愛するが、あまりにも奇怪でディープな世界観に圧倒された一作で、今でも深く記憶に残っている。「Riviera」とは関連のない作品だが、現在でもPS用の廉価版が入手できるはずなので、興味を持たれた方はこちらもぜひ一度プレイされたし。

画像 GBA版をベースに、フルボイス化、イベントCGの大量追加などでパワーアップしたPSP版「Riviera」。初回版には、未発表のイラストを含むハードカバーの設定資料集が付く

 本題に戻って、今回のPSP版「Riviera」での変更点を挙げると、まずは豪華声優陣によるフルボイス化が大きい。UMDの大容量を活かして、戦闘中はもちろん、イベントシーンでのキャラクター同士の会話や、プロローグなどのナレーションに至るまで、テキストの全てに音声が充ててある。また、折々で挿入されるイベントCGが新たに50点ほど描き下ろされ、総数約90点と大幅に増量されたことにも注目。ストーリーそのものに大きな変更はないが、ボイスアクトとイベントCGの追加でより深みが出てきた印象を受ける。

 「Riviera」の中で描かれているのは、RPGの王道ともいえるファンタジックな世界。プロローグでは、まず「Riviera」本編に至るまでのバックストーリーが、幻想的なビジュアルとともに語られる。かいつまんで紹介すると、過去に神界と魔界との間で長く激しい戦いがあり、神々はかろうじて魔族の封印に成功するも、自らもまた滅んでゆく。その際、神々は力と叡智の全てを神界の果てにある「リヴィエラ」という島に遺し、精霊たちに託した。それから千年の時が過ぎて、リヴィエラで魔族復活の兆候が確認される。神々の亡き後、神界を統率してきた「ゴートの七賢」は、魔族の侵攻から神界を守るべく「神罰」の発動を決断し、魔族が巣くうリヴィエラを精霊もろとも破壊しようとする。その任を命ぜられた二人の“告死天使”レダとエクセル(主人公)は、神罰を発動するためリヴィエラへと向かう……。

画像 Rivieraのバックグラウンドにあるストーリーが、ナレーション入りで流れるプロローグ。物語は、千年前に起きた神魔戦争にさかのぼる
画像 神々亡き後、神界を統率し続けてきた「ゴートの七賢」は、リヴィエラで魔族復活の兆しを察知して、無情な決断を下す。それは、精霊たちの楽園であるリヴィエラを崩壊させることだった

フィールド上でキャラクターを歩き回らせないRPG

 ゲーム本編は章立てになっていて、各章は「1-1」といった枝番号で区分けされた複数のマップで構成されている。必ずしも枝番号の順にストーリーが進むわけではなく、時には番号が前後する形でマップを移動することがあったり、特定の要件を満たしていないと進めないマップもある。

 第1章では、主人公のエクセルと先輩格と思しきレダの二人がリヴィエラへ向かうまでを描いているが、これはチュートリアルも兼ねていて、折に触れて操作方法を解説してくれる。このおかげで、マニュアルに目を通さずゲームを始めても操作に迷うことはなく、好意的に受け止めるなら親切設計といえるが、個人的にはちょっと興がさめる。ゲームの登場人物に「SELECTボタンを押すと」などと説明されると、どうもゲームの世界観に浸るのを妨げられるように感じる。

画像 ゲームは全7章からなり、第1章「告死天使、降臨」では、神界から遣わされたレダとエクセル、それにエクセルの使い魔で猫のような姿をしたロゼの三人が登場する
画像 操作方法を解説してくれるのはありがたいのだけれど、ゲーム中のキャラクターにクドクドと語られると没入感が薄れるような気も……

 「Riviera」で特徴的なのは、キャラクターの移動や探索といった動作が方向ボタンを1つ押すだけと、極めて簡略化されていること。画面上に「GO」と書かれたマークと同じ方向のボタンを押せば次のマップへと移動し、「BACK」の方向と同じボタンを押すと元のマップへ戻るといった具合。まるで、絵本のページをめくるような感覚だ。マップ上で探索できる場所もあらかじめ決まっていて、○ボタンでQUESTモードに切り替えると、探索ポイントが方向ボタンのマークととも表示される。一般的なRPGのように、広大なフィールドをうろうろと歩き回ったり、アイテムを見つけるために茂みの中をやみくもに探したりする必要がない。

 このようなシステムを携帯ゲーム機のRPGに取り入れたことが、アイデアとして優れていると思う。実際にプレイしてみると、RPGというよりはアドベンチャーゲームに近い感覚で、移動のために方向ボタンをせわしく押すことがない分、携帯ゲーム機でもストレスを感じにくい。また、探索ポイントがあらかじめ決まっていることに、初めは「“冒険している”という感覚に乏しいのでは」という気もしたが、ここにもちょっとした工夫が見られる。探索ポイントは無条件に探索できるわけではなく、一部は「TP(トリガーポイント)」と呼ばれるポイントを消費するため、TPの残量がなくなると探索できない(TPは戦闘によって補充できる)。それに加えて、ある場所を探索したかどうか、あるいはどの順番で探索したかなどによって、その後の展開が変化するというのもおもしろい。

画像 移動の際は、「GO」と書かれた方向(右)のボタンを押すだけで次のマップに進む。携帯ゲーム機で手軽に遊べることを目指した簡易な操作システムで、その名も「イージートリガーシステム」と呼ぶ
画像 ○ボタンを押すと「QUEST(探索)モード」に切り替わり、探索できるポイントが表示される。この画面の場合、「真下」は方向ボタンの上を押すだけで調べられるが、「宝箱」を調べるにはTPを1ポイント消費する

 移動の途中や探索時に予期せぬハプニングが起こることもあって、気が抜けない。例えば、宝箱の一部にはトラップが仕掛けてあり、それを開けようとすると「アクショントリガー」が発動する。画面上に表示されたコマンドを制限時間内に正しく入力するものや、ボタンをひたすら連打するものなど、アクショントリガーにはさまざまなタイプがあり、成功すると危機を回避できる。失敗してもすぐさまゲームオーバーとはならないが、HPの最大値が一時的に数パーセント減少したり、アイテムを取り損ねたりと、何らかのペナルティが課せられてしまう。どこで出てくるかわからないアクショントリガーが緊迫感をもたらし、ゲームの流れを引き締めている。

画像 ある場所を調べていたら、大きな岩石が転がってきて大ピンチ!TIMEゲージがなくなる前に画面上のコマンドを入力すれば回避できる
画像 これは、バーの白い部分で▼マークを止めるというアクショントリガー。他にも、ボタンを連打するもの、音楽ゲームのように指定されたボタンをタイミング良く押すものなど、さまざまな種類がある
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた