ヴァーチャルプレスカンファレンスってなに?――「Preview of AOGC in Second Life」開催

ブロードバンド推進協議会は、本日講演会場となるデジタルハリウッド東京本校とインターネット上に設けたSecond Life内の仮想会場を結んだヴァーチャルプレスカンファレンスを開催した。

» 2007年02月02日 17時49分 公開
[加藤亘,ITmedia]
Second Life内での特設会場に様子

 今回のプレスカンファレンスの主旨は、2月22日(木)と23日(金)に開催される「アジア オンラインゲーム カンファレンス 2007 東京」(以下、AOGC 2007)の一環として行われるプレス向けのプレイベントとなる。イベントはブロードバンド推進協議会(以下、BBA)主催で、デジタルハリウッド東京本校の現実会場と、Second Life内に設けた仮想会場を結び、オンラインコミュニティの高い実用性の証明を2元的に体験できるよう行われた。

 「AOGC 2007」は、BBAが年1回開催し、2005年から行われる通算3回目となるオンラインゲームの国際カンファレンスとなる。今年は2月22日と23日の両日、東京・ベルサール神田にて執り行われる。オンラインゲームやオンラインコンテンツを代表する講演者が国内外の産業、官公庁、学術機関から一堂に会し、オンラインゲーム産業の現在とこれからについて、さまざまな観点から取り上げていくことを目的としている。

 今回、そのAOGC 2007に先駆けてヴァーチャルプレスカンファレンスと銘打った「Preview of AOGC in Second Life」が催された。参加者は駒澤大学GMS学部の山口浩助教授とシリアスゲームジャパン代表の藤本徹氏。山口氏は、仮想現実の現状と進化について予測経済学の観点から講演。またSecond Life内の仮想会場では、山口氏の3Dアバターによる講演とともに、アメリカ・ペンシルバニア州スカートカレッジからインターネットを通じて藤本氏が、シリアスゲームの観点から見たオンラインゲーム世界の可能性について講演を行った。

 「Second Life」は、米国リンデンラボが手がけるオンラインコミュニティサービス。全世界で250万IDを越え、日本からも1万4000人以上が登録している。ユーザーがSecond Lifeの世界でオブジェクトを創作することができ、その著作権がユーザーに帰属しており、そのオブジェクトをユーザー間で売買することが可能となっていることが特徴。現在、Second Life内ではさまざまな企業が参入し、仮想世界でのプロモーション活動に積極的に関わっており、個別に企業するユーザーも存在する。なお、収益源は土地の販売と維持費、有料会員(約5万人)の会費からとなっている。日本語版も春には登場する予定とか。

 冒頭挨拶に立ったBBA事務局、オンラインゲーム専門部会部会長 IGDA日本代表の新清士氏は、昨年のAOGCに比べて格段にセッションが増加しており、内容も不正やセキュリティなど社会問題に触れるものが多いことを挙げ、オンラインゲーム市場が変化していることに言及。インターネット全般にいえることだが、確かにビジネスモデルも日々変化している。新氏はコミュニティが重要視されている点に触れ、今後はSecond Lifeのようなゲームとしてどう扱っていいものかあやふやなものが増えていき、よりその分野の需要が増えていくと予言した。

「Virtual World」としてのオンラインゲーム

「仮想」という言葉にも日米では意味あいが違うと紹介する山口浩助教授。日本語では「実際に存在しない」というニュアンスだが、英語での仮想「virtual」には「事実上存在する」、「ネットワークの中身」というニュアンスがある

 肝心のヴァーチャルプレスカンファレンスでは、実際会場に駆けつけたプレスとは別に、Second Life内に設置された特設会場で講演を聞くプレスも多く見受けられた。思い思いのかっこうで会場に出現してくる中、山口氏は「コミュニティ」がテーマとなると、オンラインゲームに注目すべきだと切り出す。

 オンラインゲームと言われるものは2006年現在、106社、314タイトルが日本でサービスされており、総会員数2807万人(前年より49%増)、総売上820億円(前年より42%増)を記録している。ただし、会員数のうち約15%しか課金会員はなく、総売上もパッケージ販売で3割、運営で7割といった割合となっている。市場的には右肩上がりで拡大していることから、気の早い人にはブログ、SNSの次にはオンラインゲームだと言う人もいると紹介する。

 そもそも日本語の「仮想」と英語の仮想にあたる「virtual」では、意味合いが少し違うのだと山口氏。オンラインゲームの世界は仮想として“実際には存在しないもの”と捉えがちだが、実際はゲーム内での人々との交流や経済活動により“実際に存在しているもの”であり、すべてはコミュニティを鍵としている“現実”なのだと改めて考えてほしいと訴える。こうした関係性を重視して、娯楽を越えた人々の行動にインセンティブを与える機能やコミュニケーションを媒介する機能を付与したものとして「シリアスゲーム」という新しい考え方に結びつくのだと説明した。

シリアスゲームの観点から見たオンラインゲーム

 藤本徹氏はまずシリアスゲームの定義を解説する。シリアスゲームの基本的スタンスは、1つはエンタテインメント以外の用途にデジタルゲームが利用可能で、社会的な問題解決に有効であること。2つめは教育だけでなく、教育以外の用途にもゲームが利用できること。そして、ゲームソフトウェアの開発だけでなく、その利用方法の開発も同様に重要であることを挙げている。シリアスゲームは個人と公共政策や学校教育、軍事、健康など、普段の生活に関わるものへと結びつき、コミュニティの変化をもたらしている。

 それに伴い、プレーヤーの経験やプレーヤー間の相互交流など、ゲーム世界内でプレーヤーがどんな活動をしているのか把握するために、マルチプレイヤーオンラインゲーム(MMO)の研究も盛んであると紹介した。研究の中でも特に、学習的な要素に焦点を置いたものや、MMOを教育目的で利用したものを挙げ、現状プレーヤーが取り巻く環境は複雑に入り組んでいると説明する。

 単純に学習するということだけを切り取り、学校とMMOとのコミュニティの性質の違いにも藤本氏は言及し、学習環境、学習環境デザイン、学習スタイル、インストラクター、コミュニティ運営やファシリテーションと、どれをとっても一長一短はあれど、オンライン学習でのメリットは多大とのこと。シリアスゲームとしてMMOを利用していくことについて藤本氏は、Second Lifeのようなプラットフォーム的MMOにおける教育利用のための用途開発や、アトランティス、スタンフォード大学の緊急訓練MMOのような特定の教育目的のためのMMO開発が増加するだろうと、今後の見通しを語った。


 ゲームは「メディア」での展開にも影響を与えてきている。ウェブコンテンツやコラボなど、販促のためのゲームや、ゲーム内広告がひとつの潮流として存在している。昨今、グーグルがゲーム内広告の会社を買収したこともその流れのひとつだろう。ゲームは他の媒体に比べ、「ながら見」が少ないメディアとして広告効果が高いと注目されている。また、若年層男性への訴求力も期待されている。

 ゲームには「もうひとつの世界」という意味合いもある。そこで働き、交流し、自己現実する場所として、物理的、社会的状況から切り離された「自分の居場所」を幸せと思う人がいるのが現実である。そういう時代だからこそ、Second Lifeのように自由度が高く、創造性を生かす仕組みがある「プラットフォーム」としての居場所が脚光を浴びるのではないだろうか。Second Lifeにような多様性があり、可能性を秘めた場所に人は集まるのだから。山口氏もSecond Lifeのコミュニティとしての質の高さを例にとり、「対話」だけがコミュニケーションではなく、「戦闘」だけが自己現実ではないと、今後さまざまな仮想世界(ブログやSNS、ネット掲示板など)のひとつとして拡大していくだろうと、その可能性を示唆した。

 現実と仮想の中間領域の拡大してきている今、これからのオンラインゲームの新しいビジネスモデルの標準となりえると山口氏。そこで人々がどんな活動をしているのかに興味があると、カンファレンスを締めくくった。

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