「E3」これだけ読めば大丈夫?:E3を総括する 〜北米の北米における北米のためのExpo〜(1/4 ページ)
現地時間の7月10日〜12日の期間、北米カリフォルニア州サンタモニカで「E3」が行われたが、昨年までのものとは大きく様子が違っていた。今年のE3を紐解きながら、今後のゲーム市場動向を推測する。
いつもとはやはり状況は違っていた
現地時間の7月10日〜12日の期間、北米カリフォルニア州サンタモニカで「E3 Media and Business Summit」(以下、E3)が行われた。期間中、E3会場や周辺会場ではハードメーカーをはじめ、ソフトメーカーからさまざまな発表がなされた。
E3会場の様子は?
昨年までの大きなBGMや派手な演出とは程遠いものとなっていた。規模が縮小されているのはご存じの通りだが、サンタモニカの海岸から山に向かった、閑散とした空港裏通りの飛行機整備場が会場ということもあり、地味な印象を受ける。このメイン会場の他に、パブリッシャーがそれぞれ近隣のホテルの宴会場を貸切って個別の展示をしていたのも印象的だ。
メイン会場では、入場を極力制限していたということもあって、入場者はまばらで、活気が今ひとつ感じられないものになっている。各出展者のブースもこじんまりとしたもので、もっとも大きい小間と言われていたソニー・コンピュータエンタテインメントや任天堂、エレクトロニック・アーツも試遊台が数台置けるほどでおとなしい。各社とも商品説明のためにスタッフを数人配置しているのみで、大きなメーカーと小さなメーカーが同じような様相で展示されているのに若干の違和感を感じた。最終的に小売向けといわれていたE3だったが、フタを開けてみれば「メディア」向けの様相は否めないものであった。
昨年までの混みあったブース内での取材は、混乱を極めたものであったが、メディアにとっては静かな雰囲気で余裕のあるスケジュールの下、プレイアブルに触れて製品について質問をしたり、インタビューができるというのはとても有益だったかもしれない。しかし、入場するのに必要なバッジをもらう場所とメイン会場がとても離れていたり、各メーカーが展示を行っている各ホテルの宴会場やイベント会場も離れているため、そこを行き来するのに車が必要なこともあって、正直「まとめてやってほしい」との声があったのも事実である。
現地パブリッシャーはどう受け止めているのだろうか? 意外にも好意的な声も聞こえてくる。それというのも「大きなメディアに対する発表や商品紹介が一度にできる。そして何よりコストが安く済む」からだ。実際に日本や欧州からの来客は激減しており、北米のパブリッシャーが本来ターゲットにしたい北米メディアに対して対応することができるという意味では「とても効果的だ」と言うのだ。いずれにしても来年にどういう形で行われるのかは未定だ。
プレスカンファレンスは?
前述したとおり、周辺のホテルやイベント会場ではハードメーカーやソフトメーカーがプレスカンファレンスを行っている。メディアや関係者がこぞって集まったが、例年のE3よりは縮小したこともあり、混乱はまったく見られなかった。ここではハードメーカーのプレスカンファレンスを紹介する。
マイクロソフト
サンタモニカ高校にて、E3が開催される前日の7月10日(火)午後8時30分から「Microsoft E3 2007 Media Briefing」が行われた。開演されるとすぐにエレキバイオリンのバンドの演奏が始まった。マイクロソフト コーポレート バイスプレジデントのピーター・ムーア氏やマイクロソフト ゲームスタジオ バイスプレジデントのシェーン・キム氏が現在のXbox 360の実績や今後の展望に関して語った(詳細はこちら)。
Xbox 360の圧倒的優位な立ち位置を強調
ムーア氏はいくつかのスライドを使って、現在のゲーム市場におけるXbox 360の優位性を語った。要約すると下記のとおり。
- Xbox 360は、北米で現在まで560万台販売されていて、PS3/Wiiが発売された後もXbox 360関連売上高は24億ドル(約2800億円)に至り圧倒的であること
- 1810万本のソフト売上を達成して、過去売上トップ10に18本もエントリーしているということ(他の次世代機向けは0本)
Xbox 360の今後の戦略
1. ソフト戦略
2004年に年度売上の3分の1を占めたといわれる「Halo」、「Grand Theft Auto」(GTA)、「Madden NFL」のフランチャイズがすべてXbox 360で発売されることを強調。さらに先ごろ発売になった「Forza Motersports2」に引き続いて、「Project Gothom Racing」(PGR4)が9月に発売されるとの発表もあった。この「PGR4」、モーターバイクも選択できるとのこと。さらなるユーザーの拡大が期待される。
Xbox 360専用ソフトは下記のとおり。
- Halo 3(※「Halo3 スペシャルエディション Xbox 360」も発表された。後述)
- PGR4
- Naruto
- Ace Combat 6
- BioShock
- Mass Effect
- Blue Dragon
- Viva Pinata: Party Animals
その他、「アサシン クリード」 (ユービーアイソフト) や「ビューティフル塊魂」 ( バンダイナムコゲームス)、「Dance Dance Revolution UNIVERSE 2」、「Rock Band」、「Guitar Hero III」、「Simpsons」、「Call of Duty 4」などなど、Xbox 360専用ではないものの、魅力的なラインアップが並べられていたのも印象的であった。
2. ネット戦略 〜 XBOX Live Market Place 〜
- 「Xbox LIVE Arcade」
Live Arcadeにおいては、現在まですでに延べで4500万のゲームアプリケーションがダウンロードされているとのこと。ムーア氏によると、Xbox LIVE Market Placeでは音楽や映像よりも、やはりゲームが一番のキラーコンテンツであるとのこと。現在のラインアップに加え、セガの「Sonic」や「GoldenAxe」、ハドソンの「ボンバーマン」など、日本のコンテンツも含め、続々と今後投入される予定となっている(ラインアップについてこちらを参照)。
- 「Video on Demand」
Xbox LIVE Market Placeではすでに映像のダウンロードサービスを開始しており、ローンチから9カ月でプレミアムコンテンツが2350時間分、HDコンテンツが500時間分、トータルで1億2千5百万ドル(約150億円)ほどの規模でダウンロードされたとのこと。
既存のワーナーブラザーズ系などの映画コンテンツやCBSなどの28パートナーから提供されている映像コンテンツに加えて、このたびディズニーグループとの提携も発表された。クラシック画像からは「Bug's Life」などのアニメが、系列のタッチストーンやミラマックスなどの映画も続々とアップロードされる予定とのこと。発表された映像に関しては、発表即日から配信された。HD画質の映像コンテンツの選択肢がさらに広がったことを強調した。
3. ハード戦略
- 本体
日本ではXbox 360 エリートが10月11日に発売されるとすでに発表されているが、欧州で8月24日に発売されるとの発表があった。また、ソフトのところでも触れたが、「Halo3」の発売を記念して、「Halo3」スペシャル版Xbox 360が9月に発売されることになった。値段は未定。後日のリリースで明らかにされたが、ハードディスクは20GB、同色のコントローラ付で20万台限定とのことである。
- ペリフェラル(周辺機器)
「Scene it? Lights, Camera, Action」と名づけられたXbox 360向けクイズソフトに同梱されるという「Xbox 360 ビッグボタンパッドコントローラ」が出現。ムーア氏は「家族向けにデザインしました!」と語る。実際のところ多くは語られなかったが、今後このコントローラを使ったソフトが期待されるとのこと。
4.Games for Windows
マイクロソフトといえば Windows、ということもあり、Windows向けのタイトル発表も行われた。60本以上のパッケージのみならずGames for Windows - LIVE対応のソフトが下記の通り発表された。下記は一例である。
- Gears of War
- Bee Movie Game
- Flight Simulator
- Hellgate: London
- Age of Empires III
- BlackSite: Area 51
- Age of Conan
- Lost Planet
- Kane & Lynch
- Juiced 2
- Viva Pinata
Gears of Warに関しては、Xbox 360版に加え5つのシングルプレイヤーレベルを追加するとの発表があり、会場では大きな拍手がわきあがった。日本からはカプコンのXbox 360専用で大ヒットした「Lost Planet」がエントリーしていた。
総括
日本人と欧米人の温度差を感じるカンファレンスだったというのが率直な感想。しかし、ハード、ソフトの総合力の意味で3社中一番力強さを感じたカンファレンスであり、年末に向けて北米では間違いなく成功するハードであることは確信できた。
日本のXbox 360の不振がウソのようで、完全にコアファンの心をつかんだハードに成長したと感じた。単なるハードローンチの先行者利益に頼らず、そこに供給するソフトを切磋琢磨した結果がようやく2世代目のハードで実を結んだと言えよう。ハード売上はまだまだだが、ソフト装着率が1年半で3本を越えるというハードに対するユーザーのロイヤルティが物語っている。
年末に向けて大きなタイトルを控え、これらのソフトがどれだけ牽引してハードのインストールベースをするのかが鍵であると同時に、「Grand Theft Auto 5」や「アサシンクリード」などの他フォーマットとの競合も見ものである。SCEがプレイステーション 3の値段を下げたとはいえ、ハードスペックとその値段のバランスの意味、ソフトの供給量の意味でも、現段階ではXbox 360に軍配があがるといえる。従って、まだまだXbox 360の伸びは期待できる。日本での奮起が待たれる。
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