仮想の渋谷でサイキックバトル!――すばらしくやりこめるこのゲームをあなたに:「すばらしきこのせかい」レビュー(2/3 ページ)
高いクオリティで提供されるグラフィックとサウンド
RPGにおいてキモである物語部分がしっかりしているのも好印象だが、グラフィックやサウンドのクオリティの高さも評価したい。ネクをはじめ各キャラの絵はマンガ・アニメ的ではあるが、個人的な印象でいえば“あまりマニアックすぎずリアルすぎず、非常にとっつきやすい絵柄”でありつつ、現代の渋谷的な洗練されたポップな雰囲気も出ていて絶妙だ。ネクをはじめシキ、ヨシュア、ビイト、ライムなどの仲間の個性も魅力的ではあるが、ヤシロ、カリヤ、キタニジなどの死神キャラもグラフィック、セリフともにいい味を出しており、そのキャラ絵ややりとりを見ているだけでも十分に楽しい。
ゲーム内でかかる音楽も非常によく練られている。フィールドを移動するときは渋谷のストリートのイメージにあった曲が流れ、ノイズとの戦闘画面では戦闘を盛り上げるRPG的な曲が流れるなど、違うテイストのBGMが適材適所で配置されている。また、本作のテーマソングは、シンガーソングライターのJYONGRIの「Lullaby For You」。本作のために作詞・作曲がなされたこの曲も作品全体を盛り上げるのに一役買っている。
ムズい! そして面白い! 2画面同時バトルは大忙し
RPGにおける重要な要素である“物語”という部分で、奇抜でありつつも大いなる魅力を持つ本作。さて。もう1つのRPGの欠かせない要素“戦闘”はどうなっているだろうか。
本作の戦闘は「ストライドクロスバトル」と名付けられている。これはニンテンドーDSの2画面を徹底的に活かしたバトルシステムだ。上画面と下画面で2人のプレーヤーキャラがそれぞれ戦闘し、上画面のキャラはボタン操作、下画面のキャラはタッチ操作で動かすことができる。
本作での重要アイテムに“バッジ”というものがあるのだが、その中でも“サイキックバッジ”はネクの戦闘に欠かせないアイテムだ。ネクは物語の進行に伴ってさまざまなサイキックバッジを手に入れる。バッジにはそれぞれ名前や能力などのステータスがあり、たとえばアイスブロウなら「空間を下から上にスラッシュするとツララが出現し、当たった敵にダメージを与える」という能力がある、という具合に、いろんな能力を持ったバッジが存在するのだ。
サイキックバッジの能力は下画面で戦うネクのために用意されたもので、その操作方法からタッチ系(画面をつんつんとタッチする)、スラッシュ系(画面を斬るようにこする)、ドラッグ系(画面上をスライドしたり、円を描いたりする)、マイク系(マイクに息を吹きかけたり、声を出す)の4つに分けることができる。同じ系統の操作方法でも細かく効果や威力が分かれているので、実に多種多様な攻撃が可能だ。
上画面ではパートナー(シキ、ヨシュアなど)が敵と戦うことになる。こちらはボタン操作によるバトルだ。右利きであれば十字ボタンで、左利きであればA、B、X、Yボタンで同じ操作をすることが可能。基本設定として右利き左利き両対応というのはなかなかうれしい配慮だ。
ボタン操作による戦闘は、画面上に提示されたコンボに従ってボタンを押すのみ、というもの。パートナーは基本的に上画面中央にいて特に移動操作をする必要がない。敵が左にいれば左に、右にいれば右にボタン入力をすると、そこから始まるコンボが表示されるので、それに従ってカードにたどりつくようにボタンを押せば敵に効率よくダメージを与えることができる。カードへとたどりつく分岐があり3つの選択肢があるのだが、どのカードにたどりつく操作をするか、というのが非常に重要。各パートナーによって異なるが、そのときの状況に応じてカードを正しく選択していけば、★で表示されるポイントがより多くたまる。ある程度ポイントがたまると必殺技バッジが下画面に登場し、ネクと2人で繰り出す必殺技が出せるようになる、という流れだ。
ボタンとタッチで別々の操作をしなくてはならない、というのはかなり難しい印象を受けるかもしれない。しかし百聞は1プレイにしかず、実際にやってみると、最初のうちこそ慣れずに戸惑うこともあるが、慣れてくると左手右手と左脳右脳をフル回転しているような不思議な感覚で楽しむことができるはずだ。
それでも両手フル稼働が疲れてくるときもあるし、両画面同時戦闘がどうしても厳しいというプレーヤーもいるかもしれない。そんな場合は上画面の戦闘をオートにすることもできるので、ご安心あれ。
オートでの戦闘におけるパートナーはそこそこ強く健闘してくれる。また、本作で斬新だなと思ったのは、あえて自分のレベルを下げることで敵のドロップバッジ(倒したときに手に入るバッジ)を入手しやすくできるというシステム。レベルが下がればHPが減るなど自身は弱体化するが、雑魚相手に緊張感あるバトルが楽しめるうえにアイテムも手に入りやすくなるわけだ。またメニューでイージーにしたりハードにしたりと戦闘そのものの難易度をその都度変えられるので、アクションが苦手なプレーヤーでもきっと先に進めることだろう。
初心者には優しく、マニアの要求にも応える。複雑ではあるがハマればどっぷりと浸かれるバトルシステムは、物語部分同様に、秀逸だと言って差し支えないものに仕上がっている。
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