普段詩に書いていることとガンダムの世界は同じだから“すっ”と書けた――森口博子さんインタビュー

「SDガンダム Gジェネレーション スピリッツ」のOP/EDテーマ曲を歌う森口博子さん。非常に盛り上がった東京ゲームショウ2007のステージイベントを終了したあとに、今回の新曲について話を聞いてみた。

» 2007年09月23日 21時29分 公開
[今藤弘一,ITmedia]

 森口博子さんが「機動戦士Zガンダム」のオープニング「水の星に愛をこめて」を歌っていることを、ガンダムファンなら知らない人はいないだろう。「機動戦士ガンダムF91」主題歌「エターナル・ウィンド」に引き続き、3作目となるガンダム作品は、バンダイナムコゲームスから11月29日に発売される予定のプレイステーション 2ソフト「SDガンダム Gジェネレーション スピリッツ」のオープニング曲「もうひとつの未来〜starry spirits〜」と、エンディング曲「それでも、生きる」を歌うことになっている。東京ゲームショウ2007のバンダイナムコゲームス/バンプレストブースでのイベントを終えた森口さんと、本作の広野啓プロデューサー、後藤能孝プロデューサーに話を聞く機会を得たので、ここでご紹介しよう(イベントの模様は関連記事を参照してほしい)。


画像 左から広野啓プロデューサー、森口博子さん、後藤能孝プロデューサー

―― 今回のテーマ曲にかける意気込みを教えてください。

森口博子さん(以下、敬称略) わたしのオリジナル曲が150曲を超えてきまして、もちろんいままでの曲も歌い続けたいなと思っているのですが、そろそろ新しい曲にも巡り会いたいと思っていたときに、このお話をいただいて、すごくうれしかったですね。それに歴史ある“ガンダムの歌”を歌うということは、ボーカリストとして誇らしいことです。「ガンダムの歌を歌いたい」という人によく会うのですが、わたしは3度も歌わせていただいて、本当に幸せだなと思っています。

―― 今回作詞も担当されていますが、詩の中にはどのようなテーマ、気持ちを込められたのですか?

森口 エンディングテーマ曲タイトルの「それでも、生きる」にかぶるんですが、何があっても生き続けなきゃいけないです。人は。特にこういう殺伐とした時代ですし、突然何が起こるか分からないですよね。そばにあった愛がいきなりなくなっちゃったりとか。生きていれば誰でも、お別れしなければならないときは来ます。でも、そういう苦しみを順番に受け継いで生きていかなければいけない。

 テーマはもちろんいただいたんですが、普段自分が書いている詩と、ガンダムのテーマがすごくリンクしていて、伝えたいことが泉のようにわき出てきて。(ゲーム作品のように)テーマがあるときには、「ここをこうしてください」みたいに、プロデューサーの方といろいろなやりとりがあることが多いんですが、一度もダメ出しをされなくて(笑)、一発OKだったので。テーマがあるのにうれしいなと。

広野啓氏(以下、敬称略) 森口さんはガンダムの世界をとてもよくご存じですので、詩の中にもガンダムっぽい言葉がちりばめられているんですね。「魂が巡ってくる」とか、「地球」と書いて「ほし」と読ませるとか。

森口 「生命」と書いて「いのち」とか(笑)。

広野 「刻」と書いて「とき」と読ませるとか(笑)。そういう言葉がちりばめられていたので助かりました。

森口 ガンダムはもともと壮大なテーマを持っていますので。何十年も前からこのテーマは変わっていないんですが、いまになってよりいっそう、リアルに響いてきますね。メッセージ性が。昔だと、大きいテーマをみんなで理解して、そこに向かっていこう、というようなことがあるじゃないですか。いろいろなことが起こっているいまだからこそ、言い続けていたテーマが、自然に伝わりやすくなってきたと思いますね。

―― 詩の中でお気に入りのフレーズはありますか?

森口 どこのフレーズもいいんですよ(笑)。うーん。どこだろうなあ。……やっぱり最後の「さよならを受け止め、涙を力に変える」かな。どんなことがあってもやっぱり生きなきゃいけない、ということですね。

―― これまで歌われてきたガンダムの曲と、今回の主題歌では、歌われるときに決めているテーマが違うとか、気持ち的に変わったといったことはありますか?

森口 テーマは一貫して変わっていないですね。地球愛や宇宙愛がテーマにありますし。ただ楽曲が、熱い部分もあるんですけど、すごく冷静な曲調であったりする部分もあるので、そのバランスを考えることが、わたしにとっては新しい挑戦でした。オリジナルの150曲ある中では、新しいジャンルの曲ですね。熱くてどこか冷静。

 これまでは高音を生かした曲が多かったんですが、低音から入ってくあたりは、しっかり土地に足を付けて揺るがない魂、みたいな。

―― 好きなモビルスーツはありますか?

森口 えーと、かわいいなと思ったのはハロですね(笑)。エンディングの詩を書くときもそうですし、オープニングを歌う前もそうでしたが、今回のゲームの絵コンテをいただいたんですね。平面に描かれているはずの絵がすごく立体的で、色も鮮やかでして。その世界にすっと入っていけるようなリアルな絵でしたので感動しました。「ゲームの世界でこんなにリアルに、立体的に表現できるんだ」と。曲ができてからオープニングとエンディングのシーンを作ると言うことも聞きまして、世界観がよりいっそうふくらむな、とうれしかったです。

後藤能孝氏(以下、敬称略) ただ、まだできあがっておりません……(一同笑)。

広野 早めにくださいとお願いしちゃったりもしましたが……(苦笑)。

森口 ただ、曲にただ絵をを当て込むのではなくて、そうやって作ると世界観が相乗効果で広がりますよね。ボーカリストとしてはうれしいですね。

広野 開発の現場では口ずさみながら作っているそうです。

森口 うれしいですねー。それは。

―― 今回イベントで「水の星へ愛を込めて」を歌われたのを聴きましたが、デビュー当時の歌い方とは違って、歳月を経て音に厚みが加わったように思いました。

森口 昔の曲を聴くと声が若いなとは思いますが、その時々の自分の、正直なありのまますべてで歌えたらいいなと思いますね。それが生きてきた証しというか。ですのでそう言っていただけるのはうれしいです。ただ、昔の歌い方のものまねはできるんですよ(とものまね。一同爆笑)。

広野 そうなんですか!? 知らなかった(笑)。

後藤 森口さんの歌は、うちのスタッフも仕事をさぼって聴いていましたね。わたしは「ブース立てよ」とか思っていましたが(笑)。

広野 でもスタッフのみんなも、この会社入ってよかったと思ってますよ(笑)。

森口 ガンダムは本当に影響力のある作品ですよね。取材に来てくださっている皆さんもそうですし、現場で携わっている方もそうですが。TVやドラマ、コンサートに行くと「ガンダムファンです」という人に必ず会います。どの現場に行っても。そんな、社会現象にまでなった作品に参加させていただけるのはうれしいですね。わたしの人生を変えた作品なので、一生大切におつきあいしていきたいです。デビュー曲もそうですし……、ガンダムがなかったらいまわたしはここにいないですから。皆さんと一緒に歩んできたという気持ちはありますね。

―― オープニングテーマ曲をイベントで初披露された感想はいかがですか?

森口 サプライズでの登場でしたのですごくどきどきしていましたが、皆さんていねいに受け取ってくださっているのが分かって。大きく盛り上がるとかじゃなくて、じっくり受け取ってくださっている感じがしまして。レコーディングは終わったんですが、もっと自分の中で進化させて、成長させていきたいですね。

―― ライブなどで歌われる予定はあるんでしょうか。

森口 わたしの中では、今年のメインですね。12月にライブをやるんですが、タイトルとしていつも「Song for you」と付けているんですが、今回は「Vol.3 もう1つの未来」と入れました。今年の一番の核となるメッセージですね。

―― ライブなどで歌うときと違って、東京ゲームショウの会場はいろいろな音であふれていますが、大変ではないですか?

森口 来てくださっている方は思い入れが深いじゃないですか。どんなに違った音が鳴っていようと、どんなに違う時間が流れていようと、ここの時間は確固たるものがあるということを、現場に行ったら感じるんですね。なのでわたしは、どこで歌っていても変わらないです。

 それこそ昔はスーパーの入り口で歌っていたときもありましたが(笑)、わたしはどんなところでも歌えることがうれしくて、それを聴いてくださる方が1人でもいてくださるのは、「お互い生きてるね」という感じがする瞬間なんですね。それは作品作りの喜びとも違う、エネルギー交換の場でもあったりするので。ほかの音が鳴っていようと、雨が降っていようが、(歌うときに)普段着でいたとしても、魂は変わらないですね。生きている証しという感じがしますよね。

―― 開発の側から“熱い要望があった”とお聞きしたのですが、具体的にはどのような“熱いメッセージ“があったんでしょうか。

森口 わたしが普段伝えたいこととか考えていることとすごくリンクしていたので、難しいとか、困ったということが本当になくて。「いいのね? いいのね? 思いのたけを書いて!」という感じでした(笑)。たがが外れていいんですよね? という。

広野 よかったですほんとに。

後藤 ガンダムっぽいキーワードをとりあえず挙げてみようと書いたんです。

広野 「オープニングは壮大で勢いのある感じでがーっと」とか。

後藤 素人が素人のまんま言いたいことを言ったという。言うだけ言ってあとで怒られようと思った(笑)。

森口 いや、でも分かりやすかったですよ! オープニングはゲームを始めるときなんで、やる気になるというか、自分の中野ボルテージを上げるための分かりやすい曲で、エンディングは去っていくものへの賛辞だったり、レクイエムだったり。そこには愛とか信念、変わらない人間愛みたいなものを持っているということは日常的にもありますよね。

 生きていたら突然親が亡くなったりすることもあるし。人から人へのバトンタッチでわたしたちは生かされているということを素朴に感じて書けたので。いろいろな命が無条件になくなっていくいまという時代は、心が痛いですよね。それを止めるということもあるし、やむを得なく去っていく命には、絶対に何かメッセージがあると思うんですよ。その「さよなら」を無駄にしたくない。そのおかげで残っているわたしたちは生かされているということを感じながら、日々を生きたいと思います。

画像

―― 最後に、このテーマ曲を聴くファンへメッセージをお願いします。

森口 はい。ソフトを作ったスタッフの皆さんもそうですが、この楽曲を作るに当たっては、本当にいろいろな方が魂を1つにして作った作品なんですね。レコーディング現場にもプロデューサーの皆さんに来ていただいたり。わたしもレコーディングはもちろんですが、オケ録りからミックスからトラックダウンまで全部参加しまして。レコーディングなのにまるでライブであるかのようなスタジオでした。そういうみんなの思いが「一音入魂」でできあがりましたので、是非ゲームとともに、新しい曲をかわいがってください。クリアするとエンディングが聞けます!

 新曲は11月28日に発売されます(マキシシングル。税込1050円)。

後藤 (ぼそっと)70時間くらいかかるんですけどね……。

広野 仕様として、すぐにエンディングが聞けるようにするかもしれませんが、それは今後の話、ということで。

後藤 あとは「機動戦士ガンダムOO」でCMが流れる予定です。あとはゲームが11月29日に発売されますので。

森口 間に合い……ます(笑)。

後藤 と、力なく広野プロデューサーが語っていたということにしてください(笑)。

広野 いえいえいえいえ。魂を込めて語っています、と。

森口 でもスタッフの方は本当にガンダムを愛して作っていらっしゃるので。「お仕事だから(作る)」というものじゃないというのは、ファンの方にも伝わると思いますよ。集大成のソフトになっているので、一生かかっても楽しめるとおっしゃってました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/10/news085.jpg 夫に「ゴミ買ったの?」と言われたハギレを並べて縫っていくと…… とんでもない完成品に「ワクワクしかない」「かわいすぎる!」
  2. /nl/articles/2503/10/news122.jpg 【べらぼう】“最後”のシーンに「最終回かと」「神回」 27歳俳優が「あんなに演技上手かったんだ……」と話題
  3. /nl/articles/2503/10/news100.jpg 新山千春の娘・もあ、高校卒業後は海外へ「ダンサーの夢に向かって」 高校最後の弁当も公開
  4. /nl/articles/2503/09/news003.jpg 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  5. /nl/articles/2503/09/news010.jpg ダイソーのセルフレジが「身に覚えのない商品」を認識→“まさかの正体”に大仰天 「そんなことあるんですね」
  6. /nl/articles/2503/08/news043.jpg グッズを高額転売された人気VTuber→「強すぎる」まさかの対処法が「天才か?」「めっちゃいい案」と560万表示
  7. /nl/articles/2503/10/news107.jpg 「お前はーーーッ!!」 マクドナルド、謎のキャラクターを“ドアップ”でネタバラシ→分かる人には分かる“顔”に「おかえりなさい!」
  8. /nl/articles/2503/10/news098.jpg 『ちいかわ』にミスド登場!? エンゼルクリーム売上好調か 「かなり売れてた」「みんな買っている」
  9. /nl/articles/2503/03/news065.jpg 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  10. /nl/articles/2503/10/news034.jpg ウサギの帽子をかぶった赤ちゃんが5年後…… 同じ帽子で撮影した“現在の姿”に反響「成長って凄いですね!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 40代女性、デートに行くため“本気でメイク”したら…… 別人級の仕上がりに「すごいな」「めっちゃ乙女感出てる」
  3. 30年以上前の製品がかっこいい ソニーの小型ラジオのデザインが「すごい好き」「いまでも通用しそう」
  4. 幼くてかわいらしい兄妹が4年後…… 同じポーズで撮影した“現在の姿”に「これはあかん」「よすぎて声出ました」
  5. 「早く買えば良かった」 無印の1490円“本格せいろ”が690万表示の反響 「ほぼ毎日使ってる」「まっっじでいい」と感動の声
  6. ごはん炊き忘れた父「いいこと閃いた!」→完成した弁当に爆笑「アンタすげぇよ!」 息子「意味ねぇことすんなよ」
  7. 使わなくなった折りたたみ傘→切って縫うだけで…… 驚きのアイテムに変身「こうすればよかったのか!」「見事」【海外】
  8. 高3女子「進学を機にイメチェンしたい」→美容師に依頼すると…… 仕上がりが「すげえええ」「鳥肌立ちました」と1000万再生
  9. とんでもない量の糸をくれた先輩→ママがお返しに作ったのは…… 完成した“かわいいアイテム”に「絶対喜ばれるやつ!」
  10. 「洗濯機が壊れた!」→修理を頼む前によくよく調べてみると…… 「えぇ〜」“まさかの原因”が200万表示「何度もやりました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に