カードをかざせばモンスターが現れる――次世代トレーディングカードゲーム始動:「THE EYE OF JUDGMENT BIOLITH REBELLION 〜機神の叛乱〜 SET.1」レビュー(1/2 ページ)
カードのモンスターが画面の中で浮かび上がり、生き生きと動き出す――そんなゲームファンの夢をかなえた次世代トレーディングカードゲーム「THE EYE OF JUDGMENT」がついに始動。誰もが驚いたインタフェースもさることながら、単純ながら奥の深いゲーム性にトレーディングカードゲームの未来が垣間見える。
ファンの夢を叶えたヴァーチャルカードゲーム
E3 2006で発表されて以来、各方面で話題になった次世代トレーディングカードゲーム「THE EYE OF JUDGMENT」が2007年10月25日、ついに発売された。同梱されているプレイステーション 3専用USBカメラ「PLAYSTATION Eye」を用いた初タイトルでもある同作は、なにはおいても“カメラで撮影したカードの上に、フィギュアのようなクリーチャーがリアルタイムで表示される”というところに大きな特徴がある。
カードのクリーチャーが立体化する――アイデアは昔からあったものの、それがとうとう実現したのだ。
それだけでもエポックメイキング的なゲームといえるが、やはりゲームである以上、ユーザーが気になるのは“ゲームとして面白いか?”という部分だろう。そこで今回は、特徴的なインタフェースを確かめるとともに、ゲームとしての「THE EYE OF JUDGMENT」の魅力を検証してみた。
ヴァーチャルな感覚が味わえるインタフェース
「THE EYE OF JUDGMENT」は「PLAYSTATION Eye」でリアルタイムで撮影しているプレイマット上のカードを認識していくことでゲームを進めていく。この“カードの認識”にはソニー独自の2次元バーコード技術「サイバーコード」が使われているのだが、これがなかなかいい感じだ。
カード上のサイバーコードは、情報量の多い部分を古代文字っぽいデザインにしている。ゲームの世界観がファンタジー的なだけに、こうした演出はユーザー的にもうれしいところだ。
また、認識の精度と速度は、思わず「おーっ」と声をあげてしまうほどすばらしい。ゲームではカードを置く場所やカードの方向などに厳密さが要求されるため体感しにくいところだが、デッキを登録する時の認識の的確さといったら、意味もなく何度もやってしまいそうなほどにストレスがないのだ。
さらに目玉である“クリーチャーの立体化”にもストレスがない。それなりに限界もあるが、カードの向きや傾きに応じてクリーチャーもリアルタイムで動いてくれるのは、実際にやってみるとかなり楽しい。さらにカードをカメラに近づければ拡大されるため、じっくりと造形を鑑賞することもできるところは実に面白い。
余談ながら、メインメニューから選べる「カードプロフィール」でクリーチャーを召喚している場合、カード上のクリーチャーに触れるような感じで指を動かすと、前方から触れられた場合は被ダメージのアクションを、後方から触れられた場合は攻撃時のアクションを、左右から触れられた場合はそれ以外のアクションを見せてくれる。プレイ時には、ぜひ試してもらいたい。
シンプルながら奥の深い陣取りゲーム
そろそろ本題のゲーム性について見ていこう。
ゲームの基本は1対1で、3×3のフィールドのうち、先に5マスを支配したプレーヤーが勝ちになるという、極めて簡単なものだ。これだけを聞くとシンプルすぎるように思えるだろうが、さまざまな要素が複雑に絡んでくるため、最初のうちはコンピュータ相手でもなかなか勝ちを拾えないほど奥の深いものに仕上がっている。ここでは細かいルールではなく、ゲーム性を左右する重要な要素のみを抜粋的に紹介しておく。
体力の少なさ
体力が0以下になると、そのクリーチャーはトラッシュ(墓地行き)され、そのマスの支配権を失ってしまう。ほとんどのクリーチャーの体力が1であるため、考えなしに配置していくと、不幸なクリーチャーの殺し合いが続くだけになってしまう。
フィールド属性による体力の増減
クリーチャーは5つある属性(火、水、土、木、機巧)のうちのどれかに分類されており、フィールドもまた5つの属性(火、水、土、木、機巧)を持っている。火、水、土、木のクリーチャーは、自分と同じ属性を持つフィールドに召喚されると体力が+2、対立する属性(火×水、土×木)のフィールドに召喚されると体力が−2されるため、ゲーム序盤では極めて大きな意味を持つ。
またフィールドには「ウラ側の属性」というものがあり、スペルなどの効果で反転した場合、その「ウラ側の属性」がフィールドの属性になってしまう。仮に表が“火”、裏が“水”のフィールドに火属性のクリーチャーがいた場合、裏返るだけで合計4点のダメージを受けたのと同じこと(体力+2のボーナスを失い、体力−2のペナルティを受けるため)になってしまう。強力なクリーチャーでさえ、状況次第では瞬殺される可能性があるのだ。
召喚場所を制限するロックとアンロック
属性と絡んで重要になってくるのが序盤の「召喚制限」および「キャスト制限」と呼ばれるルールだ。最初の1体はどの場所にでも召喚できるが、フィールド上のクリーチャーが敵味方あわせて4体以下の場合、2体目以降のクリーチャーを召喚できる場所が制限されてしまう。
通常、場に味方のクリーチャーが1体も居ない場合は、フィールド上の好きな場所に召喚できるのは前述したとおり。しかし、場に味方のクリーチャーが1体以上居る場合は、いずれかのクリーチャーに隣接するフィールドにしか召喚できない。さらに召喚制限がかけられているクリーチャーは、上記のルールに加えて、さらに場に4体以上のクリーチャーが居ない場合は、召喚するクリーチャーと同属性のフィールド上にしか召喚できない。場に4対以上のクリーチャーが居る場合は、上記ルールのみ適用される。
これによりスタートダッシュに一定の制限がくわわることになり、慣れないうちは、このことそのものが致命傷になる場合すらある。
クリーチャーの向きと攻撃方向&防御方向
クリーチャーの「向き」も重要だ。ほとんどのクリーチャーが、正面の1体にのみ攻撃が可能であり、正面から攻撃を受けた時のみ反撃できる設定になっている。また、たいていは背後からの攻撃(ゲーム内ではB方向と呼ばれるもので背面にあるとは限らない)を受けるとさらにダメージが+1されてしまうため、属性ボーナスで+2されていても、時には一撃でクリーチャーが死んでしまう場合が出てくる。
さらに攻撃方向、防御方向はクリーチャーによって異なっている。前方のみを攻撃・防御できるものがほとんどだが、前後左右にできるものや斜め前後を含めて攻撃できるものなど、様々なタイプが用意されている。これがさらにゲームの戦術性を深めている。
マナの少なさ、トラッシュの恐さ
以上に加えて、さらにゲーム性を深めているのが、マナの扱いにあると断言していいだろう。なにしろこのゲームでは、何をするにしてもマナを消費するのだ。具体的にはクリーチャーの召喚、召喚後のクリーチャーの攻撃、召喚後のクリーチャーの向き変更、スペルカードの使用時に、それぞれマナを必要とするのだが、マナそのものは、自分のターンが始まった時に2点、自分のクリーチャーがトラッシュ(墓地行き)になった時に1点ずつ手に入るというルールになっている。
このうち墓地行きによる1点が、ゲームを大きく左右することが多い。勝つためには相手のクリーチャーを倒し、妨害しなければならないのだが、倒すとマナを与え、より強いクリーチャーを呼ばれてしまいかねない。逆に、強いクリーチャーを早く使役したいというなら、自分の弱いクリーチャーを犠牲にして、支配したフィールドを手放すのが一番の近道になる。それを踏まえてどう判断するかが、「THE EYE OF JUDGMENT」の肝といえる部分だろう。
「チェック」をいかに外すか、いかに仕掛けるか
最終的に5マスを支配した側がゲームの勝者になる。そのため4マスを支配し、次ターンで勝利できる状態になったことを「THE EYE OF JUDGMENT」では「チェック」と呼んでいる。この時、チェックされた側のプレーヤーは、1体でもいいからクリーチャーを倒さなければ敗北してしまうため必死になるしかない。
ここで重要になるのが、先ほどのトラッシュによるマナ供給との関係だ。“いつでも倒せるクリーチャー1体”を残しておくことには、相手のマナをしぼるという意味にとどまらず、チェック対策という意味も持ち合わせてくるのである。だが逆をいえば、“チェック時に倒されるであろうクリーチャー”を想定し、それによるマナ供給すら考慮した作戦というものも考えられる。このように、どうチェックを仕掛け、相手のチェックを外し、チェックメイトの状態まで持っていくか。そのあたりの駆け引きは、最初に感じたシンプルさからは想像ができないほど奥深いものになっているのだ。
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