「サクラ大戦」シリーズすべてのヒロインを全員登場させた密度の濃い作品「ドラマチックダンジョン サクラ大戦 〜君あるがため〜」インタビュー(2/2 ページ)

» 2008年03月19日 11時53分 公開
[聞き手:今藤弘一,ITmedia]
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西野 今回の作品で一番やりたかったのは、三華撃団がいっぺんに登場する、ということなんです。「サクラ大戦4」では帝都と巴里の二華撃団は一緒になりましたけど、全部そろったのは、いままでのシリーズにはないわけです。三華撃団が一緒になる状況を、我々も見たかったということもあります。みんながごっちゃになるとどうなるんだろう、とか、帝都と紐育が一緒になるとどうなる?その時新次郎はどうするんだろうとか。ですので、三華撃団が集まるのは必須でした。先ほども述べたように、キャラクターが多いですから、どこかの華撃団に集中して作ることはあり得なかった。やるなら全部が集まらなければならなかったんです。「全員出すぞ!」と。

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 それに、華撃団には花組や星組だけではなく、三人娘やメル、シーといったサブキャラクターたちもいて、それらのキャラクターも使えるようにしました。かえでさんや加山まで。そういうところまで全員だそう、というテーマもありましたね。片っ端から全部のキャラクターにかかわらせたい、その構成をゲームで表現したいと思っていましたので。

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――薔薇組を連れて行って戦いたかったですね。

西野 薔薇組は地下倉庫で登場しますから、我慢してください(笑)。薔薇組がそこにいるのも、昔、彼らが劇場の地下に住み着いていたということからです。いままでの「サクラ大戦」を知っていれば知っているほど、「あ、ここはこれだ」と思うような仕掛けをたくさん入れていますので。キャラクターの能力や設定1つとっても、「なるほどこう来たか」と思っていただけるとうれしいですね。

――実はわたし、エリカに後ろから撃たれたときはちょっとうれしかったです(笑)。

西野 これこそエリカ、という感じですよね。わたしもゲームをプレイしていて、エリカに再会できた気分になりました(笑)。

 シリーズが始まって10年以上ですし、“懐かしい”という気分になりますね、プレイしていると。“またここに帰ってきた、またこのキャラクターに会えた”という気になれるので。そういう感覚を味わえるのはおもしろいですよね。

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中村圭介氏(以下、敬称略) 先ほども西野が話しましたが、わたしとしても“キャラクターを見せたい”というのが一番にあって、普通のヒロインだけで18人、それに隊長が2人、さらにサブキャラもいますから、30人近くの能力や性格を生かしたものを作らなければいけませんでした。わたし自身も「サクラ大戦2」からシリーズにかかわっているんですが、いろいろなキャラクターのイベントやネタを把握した上で、それらを本作でどのように表現していくのか。そこに苦労しました。

 このキャラクターならこういうネタがある、というのはもちろんですが、それ以外にも昔からのファンの方に喜んでいただけるようなネタをちりばめています。リカは賞金稼ぎなので、敵を倒すとお金になりやすい、とか。

西野 わたしが驚いたのは花火なんです。普通、キャラクターが育っていくと「側面支援」というスキルを覚えるんです。主人公の後ろではなく、真横に並んで歩いたり戦ってくれる、という。ただし花火は覚えないんですよ。三歩下がって男の後ろに付いていくんです(笑)。相当高いレベルにならないと横に出てこない。これはすごいわ、と思いました(笑)。そういう細かいところにまでキャラが生きているんです。

――ほかにもこだわった設定ってあるんですか?

中村 かなりいっぱいあるので……(笑)。取り立ててどれ、というのは難しいですが、やっぱり個人的にはエリカにはいろいろなネタを仕込みましたね。

西野 サジータも、知識系のスキルははじめから覚えているんですよ。壁の中の敵は攻撃できないとか、そういう常識的なことは全部知っているんです。弁護士ですから(笑)。あと、すみれは攻撃されると、一定の確率で「無礼者っ!」としばき返す(爆笑)。

中村 ボスキャラ戦をすみれと一緒に戦うと、この反撃ビンタでボスを倒してしまったりして、おもしろいです。

西野 「すみれ様、すみませんでした!」ってな具合ですよ(笑)。

中村 こういう、これまでのシリーズをプレイしているほど吹き出せるというか、笑えるネタを仕込んでいます。

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――ダンジョンでのワナでLIPSが表示されますが、あれはどこから出てきたんですか?

中村 作っている中で自然に、ここでLIPSを出したらおもしろいんじゃないかという話があって。このワナだったら「ぐっと踏み込む」が正解とか、そこから肉付けされていきました。

西野 LIPSはシリーズのキモの1つなので、ダンジョンの中でも登場させたいな、というのはもちろんありましたが、思った以上にはまりましたね。

中村 「踏まなかったと思いこむ」とかは、ハズレと分かっているんだけど選びたくなる“ワナ選択肢”です(笑)。

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西野 ワナ自体も変なものが多いですよ。タライが降ってきたり、スポットライトが当たって踊り出すとか。その代わりすっきりして体力が回復したり。ワナでも楽しんでほしいですね。普通ワナというのはいやなものなんですが、「こんなワナ来たか!」というおもしろさもあると思いますよ。

中村 バナナのワナという、踏むと一直線に進んでしまうワナがあるんですが、私がテストプレイしている時に、エリカがこれを踏んでモンスターハウスの中に一直線に突っ込んでいって……(笑)。

西野 「エリカーっ!」という(笑)。本当にマンガみたいな光景が展開されます。エリカだからしょうがないか、みたいなことも思ってしまったり。

中村 その時はエリカを助けに行って、何とかモンスターハウスを一掃したんですけど、終わったと思ったらエリカが「ハウスのワナ」というのを踏んで、またモンスターハウスになってしまったりして「おい!」という(笑)。画面にツッコミを入れてしまいました。

西野 システム的な出来事もキャラクターがかぶさることで、自然に見えるんですよ。そこまで意図はしていないんですけどね。たまたまそうなっているだけで。自分がワナを踏んだ後に織姫が同じワナを踏んだり。まあ、織姫ならやりかねないか、それでいてすっとぼけそうだなーとか。マリアだったら絶対踏まないだろう、ということを思っちゃうんですよ。

――リカはご飯を探してきてくれますしね。

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西野 ロベリアが盗むのもアツいですよ。ダンジョンの中にお店があるんですけど、そこで盗むんですよ(笑)。

中村 普通のキャラクターは、お店にある「値札が付いているアイテム」は絶対に拾わないんですが、ロベリアだけは拾うんです。拾ったことに気がつかないで主人公がお店を出ると、後ろから「ドロボー!」と(笑)。

西野 キャラクターごとに、ゲーム内容にうまく当てはまる個性があるんですよね。ゲームシステムのここにこのキャラクターをはめたらばっちりじゃないか、という。そういうのが結構あって楽しかったですよ。

 本作では対戦プレイもできますので、こういう苦労をしながら育てた“My華撃団”で戦ってほしいですね。Wi-Fi対戦もできますから、全国のプレイヤーと戦えます。どんな3人を連れてくるのか、その人の個性が出ますよね。

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――今回のストーリーでは、帝都、紐育、巴里の順番で華撃団が登場しますが、これは最初から決まっていたんでしょうか。

西野 そうです。ジャンヌ・ダルクが登場しますので、最後はやはり巴里かなと。それに、最初に帝都で大神を出して、その次は紐育で大河を出したかったんです。帝都、巴里、紐育の順番では、主人公の1人である大河の出番が少なくなってしまいますし。

――今回ジャンヌ・ダルクが敵として登場する理由はなんでしょうか。

西野 敵の設定については広井王子さんともかなり打ち合わせをしました。まず「サクラ大戦」はこれまで、実在の人物を敵として登場させています。中でも、世の中に対して何らかの怨念がありながら死んでいった人の思いがよみがえってくる、という形です。もともと「降魔」というのは怨念が実体化したものですし。そこで、今回も敵としてはより強い怨念、執着を持っているものということで、歴史上の人物を使いたいというのがありました。これが1つ。

 それに、ジャンヌ・ダルクというのは、実は華撃団の人たちと同じような存在なんですよ。女性であり、異能を持った人、故に世の中につまはじきにされた人なんですね。華撃団の人も、世が世ならそうであるわけです。両方とも異能者であって、敵と味方はあまり変わらない。悪の方に行ってしまったか、正義の方に行ってしまったかで偶然分かれているだけなんです。いまの華撃団にいる人は幸せな人たちで、対比としての、悲しい女性の異能者、ということでジャンヌ・ダルクを描きたかったんです。ジャンヌとさくらたちは同じなんだ、というのが裏テーマとしてあります。“君あるがため”という言葉に何が込められているのか、ということを、そのあたりで感じてもらえればと思います。

――西野さんから見た「サクラ大戦」の魅力についてお話しいただけますか。

西野 うーん。ひとことでは語り尽くせませんが……。わたしはすべてのキャラの中から好きなキャラを挙げるとすると、米田なんですよ。自分が本当は戦えればいいのに、戦う力がないので、自分の娘くらいの女の子たちを前線に送り出さなければならない。それゆえの苦悩があるし、酔っぱらってそれを隠しているという。世界観についても、米田というキャラクターがすべてを物語ることができると思っています。

 わたしは「花組対戦コラムス」からシリーズにかかわってきましたが、ここまで長く続けられるタイトルになるとは思っていませんでした。これはどこかに“神の采配”がないと絶対にできないでしょう。ヒットしたてのころは臆病になると思うんです。どこまでやっていいのか、どこまで変えたらいいのか、とか。それは関係者一同みんなあるわけです。それが、時がたつとほぐれていくというか、コンテンツの自由度が上がって、いろいろなものに広がることができるようになるんですよね。その1つの形が本作だと思います。“ゲームジャンルまで変わったけれども、やっぱり「サクラ大戦」”ですから。

――最後にメッセージをお願いできますでしょうか。

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中村 ダンジョンの中で何が起こるのかを、皆さん自身の目で見ていただきたいです。キャラクター同士の組み合わせの妙というか、このキャラとこのキャラを連れて行くと、設定的におもしろいというだけでなく、ゲーム的に想像のつかないことが起こったりします。エリカが転んで落としたアイテムをロベリアが燃やす、とか(笑)。そういった決まったパターンのおもしろさでない、何が起こるか分からないという、ダンジョンならではの“ランダムの妙”を味わってください。

西野 本作は「サクラ大戦」のエッセンス、魂が強く受け継がれています。ただしゲームスタイルが変わったこともあって、いままで「サクラ大戦」を知らなかった皆さんでも遊びやすい作りになっています。ゲーム的にも盛りだくさんで、長く遊べるソフトになっていますので、末永くかわいがってください。

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