炎のコマはここから生まれた「ギャラクシーウォーズ」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)

» 2008年04月21日 15時50分 公開
[ゲイムマン,ITmedia]
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スコア重視かクリア重視か

 このゲームには1つ、特徴的な演出がある。ステージクリアごとに出てくるメッセージだ。3面クリアで「GOOD!」と表示されるのを皮切りに、特定のステージをクリアすることで、「VERY GOOD!」「FANTASTIC」などの文字が表示される。そして33面をクリアすると、ついにUFOが根負けし、「GIVE UP!」と表示されるのだ。

 後の「パックマン」(ナムコ)における、コーヒーブレイクの原型のようなものだが、これにより、「メッセージを見るために、できるだけ多くのステージをクリアする」という楽しみが出てきたのだ。

 後年、ゲームの主目的は「スコアを多く稼ぐこと」から「ステージをクリアしてエンディングを目指すこと」へと変化していった。そのきっかけとなったのが、このゲームだったのかもしれない。

 ステージクリアを目的とするか、高得点を狙うかで戦術が変わってくる。より安全に先のステージへ進むためには、UFOであまり高得点を狙わない方が良い。前述のとおり、UFOの真ん中近くを狙おうとすると、UFOの弾に当たる危険性が高まる。

 極端な話、スコアさえ気にしなければ、ミサイルの側面にUFOを突っ込ませるのが、いちばん確実に破壊できる方法だ。

画像 7面をクリアすると「VERY GOOD!」の文字が。しかし「GIVE UP!」までの道のりは遠い
画像 UFOは数が減ると速くなる。UFOの進路にミサイルを置いて、UFOを突っ込ませた方が安全にクリアできる
画像 高得点を狙ってUFOの真下へ入り、突然の迎撃でミサイルが破壊されるとこうなる。一瞬何が起こったのか分からなくなる

 さて、「スペースインベーダー」と同様、このゲームでも当時は、「ゲームセンターあらし」が攻略本のような役割を果たしていた。

 UFOの得点や、ボーナスUFOの存在はもちろん、UFOの弾は同時に3発までしか出ない(※本当は4発まで)という情報や、隕石地帯ではミサイルのスピード調節が重要とか、UFOは後ろから追いかけずに先回りして待つ方がいいとかといった攻略法まで。マンガだから当然だが、絵入りで非常にわかりやすかった。

“炎のコマ”の誕生

 「ゲームセンターあらし」では、「スペースインベーダー」に代わるゲームとして登場した「ギャラクシーウォーズ」だが、メインのゲームとしてこのマンガに登場したのは、わずか2回。その後は、ほぼ同時期に発売された「ギャラクシアン」(ナムコ)に取って代わられた。

 このことが「ギャラクシーウォーズ」の立場を象徴している。「スペースインベーダー」と「ギャラクシアン」の間に挟まれて、あまり知名度が高くない。1988年にセガが出した、水平方向にぐるぐる回る体感筺体で話題となった「ギャラクシーフォース」と間違われやすい。

画像 先のステージへ進むと、隕石が増えてスピードも上がる。左から右へ移動する隕石が特に速い
画像 スーパーファミコン版では白黒モードも選べる。より1970年代のゲームっぽくなる

 ただ、「ゲームセンターあらし」への2回めの登場で、あの必殺技“炎のコマ”が誕生した。元旦、初詣に行った神社の境内で、あらしと、友人の一平太は仮設のゲームセンターを見つける。「ギャラクシーウォーズ」で1万点出したら自転車がもらえるということで、あらしは奮起するが、このゲームは改造されて難度が上げられ、しかも2面めからはミサイルの行く手を必ず隕石が塞ぐようになっていた。

 あらしは何としても1万点を出すべく、コンピューターの処理速度より速く手を動かそうと、コマを使って特訓を重ねる。そしてついに、1秒間に200万回もレバーを往復させることに成功。コマの軸と台が摩擦で燃えて火を吹いた。

 あらしが再び「ギャラクシーウォーズ」をプレイすると、鍛えた手の速さがコンピューターの処理速度を上回り、ミサイルが消えて隕石の海をくぐり抜けた。レバーとの摩擦で、あらしの手から炎が上がる。こうして完成した“炎のコマ”は、その後もあらしの必殺技として多用されることになる。

 炎のコマといえば、格闘家の桜庭和志選手が使った、相手の足を持って回る技も、“炎のコマ”と名づけられている。相手の背中に摩擦熱を起こすからだが、「ゲームセンターあらし」の炎のコマも意識したネーミングらしい。太田出版から復刻された「ゲームセンターあらし」の第3巻では、桜庭選手が巻末コメントを寄せている。

君にもできる“炎のコマ”

 1995年に発売されたスーパーファミコン版「ギャラクシーウォーズ」には、アーケード版を再現したカラーモード、白黒モードに加えて、リメイクを施した「ネオモード」が収録されている。

 ルールは元のアーケード版と同じだが、いくつかの特徴が加わっている。まず、UFOの中に色違いのものが1機いて、枯れ葉のようにひらひらと舞い落ちる爆弾を落としてくる。これは避けにくい。

 一方で、ミサイルの方もパワーアップした。隕石にちょうど真下からぶつかると、その隕石を串刺しにすることが可能。隕石はUFOの弾を防いでくれるから、ミサイルの頭にバリアがついたような状態になる。

 そしてそのままUFOに突撃すると、UFOと隕石が相撃ちになってミサイル本体は残るので、続けて別のUFOを攻撃できる。つまり1発のミサイルで、2機のUFOを破壊できるということだ。

 ただしミサイルと隕石が少しでも斜めに当たると、ミサイルが破壊されて1ミスとなる。そういうリスクはあるが、慣れれば割と楽に串刺しできるので、試してみる価値はある。

画像 緑色のUFOが枯れ葉爆弾を落とす。枯れ葉はまず左に動くので、右から近づいた方がいい
画像 隕石は、ミサイルに突き刺された状態でも、UFOの弾を防いでくれる。便利
画像 ときおり巨大な隕石が出てくるが、これも串刺し可能。巨大隕石はUFOに当たっても破壊されない

 さらにすごいのは、十字キーの左右を交互に連打することで、“炎のコマ”が再現できることだ。さすがにコントローラーが火を吹くことはないけれど、ミサイルが点滅して、UFOの弾や隕石をすり抜けるようになる。コントロールが効きにくいので、役に立つ技とは言い難いが、マンガに描かれたのと同じ現象が再現できるのがうれしかった。

画像 炎のコマ実行中。写真にするとわかりづらいけど、ミサイルがUFOの弾をすり抜けている

 ちなみにスーパーファミコン版のパッケージイラストは、すがやみつるさんが描いている。しかし当時の版権の関係か、描かれていたのは「ゲームセンターあらし」ではなく、あらしによく似た別のキャラクターだった。

 ユニバーサルは、「ギャラクシーウォーズ」の後にも「スペースパニック」や「Mr.DO!」などのゲームを世に送り出したが、当時のゲームメーカーとしては珍しいことに、ファミコンには参入せず、また独自のゲーム機も出さなかった。そのため「ギャラクシーウォーズ」は、登場から16年後、スーパーファミコン版が発売されるまで、家庭用ゲーム機に移植されなかった。

 ユニバーサルは後に社名がアルゼとなってから、RPG「シャドウハーツ」でプレイステーション2に参入した。だが結局「ギャラクシーウォーズ」は、それ以降もゲーム機に移植されていない。「スペースインベーダー」や「ギャラクシアン」と比べて、今なおマイナーなポジションにとどまっているのは、それも原因の1つかもしれない。

 さすがに今、単体のゲームとしてリリースするには内容が薄いかと思われるが、かといって埋もれさせておくのももったいない。「スペースパニック」や「Mr.DO!」シリーズと組み合わせて発売するとか、携帯電話のアプリにするとか、PCかゲーム機用にダウンロード販売するとか、復刻する手段はいくらでもあるように思えるのだが……。

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