インタビュー
» 2009年01月08日 19時42分 公開

大学からゲームメーカーへ――AI研究で広がるステキなゲームの世界とは?(前編)ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ(第2回)(2/3 ページ)

[松井悠,ITmedia]

 一つ、注意すべき点がありまして、人工知能の学術的研究では「ゲームAI」と言えば、ほとんどの場合、将棋やチェス、囲碁などボードゲーム上のAIをゲームAIを指します。ところが、「デジタルゲームのAI」はそういった「ゲームAI」とも異なる点を持ちます。

 やや詳細になって申し訳ないのですが、学術的な「ゲームAI」においては、「ゲームのルールが固定されていて、AIがプレイヤーの代わりである」ことが前提になっています。これは、「ゲームを打つ人間の代理」であって、学術的な人工知能の系譜の一つでもあります。しかし、「デジタルゲームのAI」は、2つの点で、そういった「ゲームAI」とは異なります。

 まず一点は「仮想空間の中の知性である」という点、もう一点は「AIがゲームの一部である」という点です。後者は何を言っているかと言うと、皆さんもゲームをすれば敵が出て来てやっつけるという体験をしたことがあるかと思いますが、ああ言った敵AIというのは、プレイヤーの代わりのAIではなくて、ゲーム世界の中にゲームデザインの要求に沿って配置されている「ゲームの一部としてのAI」なわけです。

 AIは囲碁や将棋などの「現実のプレイヤーの代理の知性」として存在するのではなく、敵忍者の動きであったり、巨大砲台が動作するためのアルゴリズムであったり、ゲームの仕組みそのものの一部として「デジタルゲームAI」が存在するわけです。格闘ゲームやスポーツゲームでコンピュータとの対戦AIがありますが、それはプレイヤーと同等の条件でなく、もっとゲームに溶け込んだ存在として人間を楽しませるために動作しています。デジタルゲーム製作では、ほとんどの場合、ゲーム製作の進行と並列して、そういった「デジタルゲームAI」をデザイン、実装していきます。

 このように、デジタルゲームのAIは、学術的な人工知能の系譜においても独立した分野であるとともに、また、これまで研究された来た学術としての「ゲームAI」からも独立した分野でもあります。この点については、人工知能分野の中でもきっちりと認識されていないので、、丁寧に時間をかけて、デジタルゲームAIが独立した分野であることを、はっきりと示して行く必要があります。

チェスや将棋、囲碁などは限定された条件下だが、昨今のデジタルゲームの場合は無数の状態が存在する

三宅 アプローチがそもそも異なっていることを理解する必要があります。学術の世界で「ゲームAI」という場合は、「ルールが確定したゲームを解く」ことが問題になります。そういった問題を解決するためのAIです。これは、ゲームを外側から見ているAIですね。しかし、デジタルゲームのAIは、ゲームそのものに含まれてしまっています。もちろん、ある格闘ゲームや戦略ゲームなどでは、プレイヤーに対する対戦者のAIを作ることもありますが、それも対戦としてのAIよりは、プレイヤーを楽しませるためのゲームの一部として作る場合が多いです。

 将棋や囲碁などのAIは長い時間をかけて学術的にも認められた分野になって来た歴史を持ちます。そういった分野は、現実という複雑過ぎる問題を解くには、まだあまりにも未熟なAIの試す場として、大きな役割を持っているのです。「デジタルゲームAI」というのは、まだ始まったばかりの分野とも言えます。研究分野として確立しているとは言い難い状況にあり、研究をしている研究室も数えるほどしかありません。そのため、デジタルゲームのAIの知識を大学で学ぶ機会は限られたものであります。

 これは日本の現状なんですが、アメリカでは少し違っています。この8年のことですが、バーチャル・リアリティーを研究していたMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボのエージェント(仮想世界内の動物)の研究が端緒となって、キャラクターAIの一つの流れを形成して来ました。特に、この研究室がGDC2000(米のゲーム開発者会議)で発表した「C4 アーキテクチャ」という「エージェント・アーキテクチャ」(AIを作る枠組み)は、現在のFPSのキャラクターAIを基礎付ける重要な仕事でした。実は、そのラボ出身のゲーム開発者たちがXboxの人気FPSシリーズ「Halo」のAI、同じくFPS「F.E.A.R」のAIを作り上げて来ました。実はこれが今、最先端のデジタルゲームAIとなっています。そして、FPS分野に限らず、仮想空間内でリアルな知性を作ろうとする開発者には、「エージェント・アーキテクチャ」は必須の枠組みとなっているのです。これは、何も産学連携をしよう、と大きな試みがあったのではなくて、自然に、個人的な人材の移動によって学から産業へ技術がすっと入って来た例です。

 やはりアメリカでは「学術+産業」といった形でデジタルゲームAI技術が加速しつつある。デジタルゲームAIという分野が形成されつつあります。研究分野として認知され始めていますし、学会での講演や発表論文も幾つかあります。しかし、その流れが日本へは全く来ていません。それは、日本の作るゲームAIがそういった高度なAIを要求して来なかったからか、或いは、そういたったゲームAIの技術を単に知らないから、ゲームデザインが変化しなかったのか、どちらかを決めることはできませんが、何れにしろ、日米のゲームAIで、大きな差を作ってしまいました。

 また、日本のゲーム産業は基礎研究体制がなく、ゲームタイトルのための実働のスタッフを採用する傾向にありますから、うまく研究と結び付くことができなかったからかもしれません。

―― アメリカのエレクトロニックアーツが南カリフォルニア大学と協力してゲーム開発者を育て始めています。

三宅 そうですね。アメリカでも数年前までは大学で、それほどゲームコースがあったわけではありませんでしたが、情報系の新しい人気を集める学科として、さまざまな大学に徐々に設置され始め、今ではゲーム開発を学べるたくさんの大学のコースがあります。そういった学科をインターネットで探せば、たくさんの講義資料を見つけることができますし、ゲームAIの授業も見つけることが出来ます。驚くほど充実したゲームAIの過程もあります。また、そういった学科が出来ると同時に、アメリカではゲーム開発というのは、きちんと研究するに値するだけの広がりを持っていると認知され始めています。CG分野はかなり昔からそうでしたが、AI分野でもその兆しがあります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/06/news020.jpg 柴犬「友達〜!!!」 お母さんの寝坊で散歩が遅れた柴犬、ワン友に会えず……→怒りMAXの拒否柴発動に母「スマン……」
  2. /nl/articles/2311/06/news041.jpg 素潜りでイソマグロを突いたら海に引きずり込まれ…… 水深25メートルの激闘が100万再生「怖い」「磯のダンプカー」
  3. /nl/articles/2311/05/news045.jpg カナダ留学中の光浦靖子、得意の手芸でまたしても力作を生み出す 「クオリティ高すぎ」「もープロですね」
  4. /nl/articles/2308/06/news018.jpg 柴犬がプールからあがろうとした瞬間……! 「何回見ても爆笑」「好きすぎる」コントのようなずっこけハプニングが発生
  5. /nl/articles/2311/06/news047.jpg 隣家にいった飼い主、ふと視線を感じると柴犬たちが……? じーっと監視するワンコきょうだいの圧に爆笑
  6. /nl/articles/2311/06/news117.jpg 「スト6」フランス大会決勝、モニターにペンキで中断 環境団体乱入で
  7. /nl/articles/2311/06/news068.jpg 村重杏奈の“最強遺伝子”な弟、7歳バースデーお祝いに黄色い声 姉とうり二つな姿に「幼さが抜けて更にイケメン」「可愛いしカッコイイ」
  8. /nl/articles/2311/04/news008.jpg 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. /nl/articles/2311/04/news016.jpg 突然現れた痩せて汚れた野良猫、「ごはんくだちゃい」と訴えてきて…… 距離が縮まっていく姿に「涙が出ます」と100万再生
  10. /nl/articles/2311/05/news052.jpg 「ここはあんたが座る席じゃないよ」 末期すい臓がんの叶井俊太郎、優先席に座るも高齢者から非難 妻・倉田真由美が明かす
先週の総合アクセスTOP10
  1. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  2. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  3. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!
  4. 「BreakingDown」出場の元プロボクサー、5人から一方的に暴行される 顔面数針縫うも「私は1発も攻撃してません」
  5. 「頭が大きい」「普通ではない」 パリス・ヒルトン、9カ月長男の受診勧めるコメントにぴしゃり「世の中には病んでる人がいるみたい」
  6. 「最期の最期まで闘って」 元「妄想キャリブレーション」水城夢子さん、27歳で病死 2年前には“しばらく療養が必要な病状”で休止
  7. 3児の母・杏、異次元スタイルのパンツスーツ姿が衝撃的 目を疑う脚の長さに「身長の半分股下」「えっ! 本当!? っと思っちゃうくらい」
  8. 志穂美悦子、68歳バースデーに鍛えられた筋肉バキバキの肉体美披露 「いろいろやりたいことがある」「まだ見ぬ自分へ」
  9. 柴犬と父のやりとりに「20分これ見て爆笑してます」「気持ちよすぎるいい返事」 お笑いコンビを超える関係性が100万再生
  10. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 病名不明で入院の渡邊渚、3カ月ぶりSNS更新で「表情に違和感」「そこまで酷い状況とは」 ベッド上で「人生をやり直すこともできません」
  2. 動かないイモムシを助けて1年後のある日、窓の外がありえない光景に 感動サプライズが「アゲハ蝶の恩返し」と話題
  3. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
  4. 「千鳥」大悟、大物美人俳優にバッグハグされた表情に注目集まる 「マジ照れのお顔ですね」「でれでれやん」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 神田愛花アナ、拡散された女子中学生時代ショットにスタジオ騒然「ヤバい」→“アネゴ感”でSNSもざわつく
  7. 「生きててよかった」 熊谷真実、美麗な初“袋とじ”グラビアで63歳の色気全開 真っ赤なドレス着こなす姿に「すごいプロポーション」
  8. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  9. 双子モデル・吉川ちえ、美容整形後のひたいが“コブダイ”状態へ 多額の費用要した修正手術で後悔も「傷がこんなに残りました…」
  10. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!